トヨタ・ホンダが救急ヘリ病院ネットワークと共同し、交通事故発生時の早期の救命・救助活動を可能とするシステムの運用を開始
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“救える命を救いたい”
認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net、ヘムネット)は11月30日(月)、交通事故発生時に自動車から事故状況を自動通報し、ドクターヘリ出動の規準システムとなる「救急自動通報システム(D-Call Net)」の試験運用をトヨタ自動車、本田技研工業、日本緊急通報サービスと共同で開始した。
国内ではこれまで、日本緊急通報サービスが提供している緊急通報システム「ヘルプネット」が2000年より運用されていた。エアバッグが展開するような事故が発生した際、車載機から現在位置及び走行軌跡データがオペレーションセンターに自動配信され、「ヘルプネット」のオペレーターが通報者との会話・要請により警察・消防等の救助機関に接続することで、早期の救命・救助活動を可能としてきた。
今回試験運用が開始される「D-Call Net」は、これをさらに発展させたもので、自動車に搭載されている交通事故通報システムを拡張し、交通事故の通報と同時に事故発生時に自動車に記録された情報(衝突の方向・衝突の厳しさ・シートベルトの有無など)を自動で送信するというもの。
交通事故発生から平均1分、最大で3分程度で自動車に記録された事故状況データが自動で送信され、「死亡・重症率」を表示する。今回、注目点は一定以上の「死亡・重症率」が表示された場合、ドクターヘリ出動までの時間を短縮できるという点。
救急隊が駆けつける時間の短縮、治療開始までの大幅な時間短縮の方法として「ドクターヘリ」が確立されたわけだが、一方でこれまでのシステムでは、オペレーターによる会話での事故現場の情報収集、状況把握が中心であった為、ドクターヘリ出動の決定までに10分程の時間を要していた。
このD-Call Netでは、オペレーションセンターに設置されたタブレットに事故の情報が表示され、ドクターヘリが出動するか否か的確な判断が短時間で可能となる。出動の基準となる「死亡・重症率」は、過去10年分の事故データをベースに開発された専用のアルゴリズムによって算出される。
これまでのシステムからD-Call Netの導入により、治療開始平均時間は38分から21分まで短縮される見込みで、試算では、すべてのドクターヘリに配備された場合、年間で282名の救命が可能になるとのこと。
D-Call Netは、自動車メーカーからはトヨタ、ホンダが、そのほか、医療機関、国土交通省、警察庁などが開発に参画しており、システム開発ではKDDIが参加している。
今後は、ドクターヘリを保有する9つの基地病院で順次、実証実験や通報実働訓練を行う。自動車側は現在のところ、トヨタ(レクサス)の上位車種と、ホンダの2013年「アコード」以降の純正ナビ搭載車種でのみ利用できるが、順次拡大していく構え。そのほか、効果の検証やアルゴリズムの改善、ドクターヘリの出動を決定するための最適な基準値の決定などを試験し、2018年本格運用開始を目指す。
HEM-Netの益子邦洋理事は会見で、「今後とも多くの車種への普及をお願いしていくとともに、さらに多くの自動車メーカーへの参加を働きかけていきたい」とコメントした。
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