アストンマーチン ヴァンテージ 試乗レポート(2/3)
- 筆者: 日下部 保雄
- カメラマン:原田淳
どこから見ても、その潔さに改めて惚れ直した。
V8ヴァンテージは一連のアストンマーチンのデザインプロファイルを踏襲して、兄貴分のヴァンキッシュやDB9と共通のモチーフを取っているが、ギュとしまった凛とした美しさはV8ヴァンテージ独特なものだ。小股の切れ上がった・・・とはこのクルマを表現するにはぴったりだろう。
前述のようにV8ヴァンテージのボディはアルミだが、Cピラーの辺りは絞込みがきつく、アルミでは表現できないためにスチールとのハイブリットとしている。それ以外はすべてアルミで、至るところに思わずニヤリとさせる造詣、造りこみがされている。例えばボンネットを開けてみると、思い切り後方に置かれたドライサンプのV8エンジンとトラスをめぐらしたエンジンルームがあり、そこには担当クラフトマンの名前が刻印されたネームプレートが添付してある。それがこれ見よがしでなく、細部に至るまで丁寧に作られた責任の所在を明確にしようと言う強い意志が伝わってくる。
サイズは実にコンパクトだ。全長は僅か4,382mm、全高は1,255㎜に過ぎず、全幅だけが1,866㎜と大きい。スーパースポーツカーの中でも異例とも言えるギュとしまったデザインの存在感は際立っており、1,630kgと言う軽量さから来る運動性能も予感させる。
インテリアは2名の乗員のためにデザインされている。いかにも出来のよい手作りのインストルメントパネル、そこに整然と並んだ空調、オーディオなどのスイッチ類、ダイアルスイッチは室内オーディオのようなアルミ削りだしで、量産車では絶対にない材質の使い方だ。
メータークラスターには8000回転までのタコメーターと330キロまでのスピードメーター、それに水温と燃料系がある。面白いのは右側にあるタコメーターで、通常と異なり左回転することだ。意図は分からないが白色のLEDに照らされたメーターはクールで機能的だった。
2つのフロントシートの後方には容積のあるスペースがあり、とかく荷物置き場がなく困るスポーツカーとしては大型バッグなどの手回り品が放り込めて便利だ。もちろんハードトノーカバーを持ったトランクも小旅行なら十分におつりの来るスペースがあり、この点でもミッドシップのスポーツカーにはないアドバンテージを持つ。トランクの奥にアストン専用の傘が収納されていたのも、英国製スポーツカーらしくてウィットが効いている。スペアタイヤは持たず、その代わりパンク修理材を積んでいる。
アストンマーチンはどこから見てもダンディだが、決してドライバーにおもねらない。その潔さに改めて惚れ直してしまった。
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