アストンマーティン「DB11」で新時代へ!サーキット試乗でみえた傑作「DB9」を超えた実力とは(2/4)
- 筆者: 嶋田 智之
パフォーマンスは従来モデルより1段階以上も上へ
世代がカチンと音を立てて切り替わった、といえばいいのだろうか。全面的に刷新されたハードウェアは、DB11のパフォーマンスを、従来のモデル達より一段階、いや、それ以上高いところへあっさりと押し上げていた。
まず、車体の固さが違う。大袈裟でも何でもなく、走り出して最初のコーナーで縁石にタイヤを乗せた瞬間に、「あれ?」と感じたほどだ。それは車体の構造が進化したことによるもの。独自の接着アルミニウム構造という点は従来と同じといえるが、三次元のプレス成形を採り入れるなど考え方をグッと推し進めた製法がとられている。
そこに取り付けられるサスペンションも、当然ながら新開発だ。フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクで、ビルシュタイン製アダプテイブ・ダンピング機構が備わっている。ガシッと固い骨格に、しなやかに伸び縮みする脚。それがもたらしたのは、メルセデスのSクラスを連想したほどの乗り心地の良さだ。
サーキットの路面は一般道より滑らかだから、パドックの少し凸凹がある箇所に行って試してみたりもしたが、何事もないかのように穏やか。走行モードを最もハードな“スポーツプラス”にして、コースの縁石に引っ掛けたり乗り上げたりもしてみたが、柔軟に吸収する感覚を伝えてきて、不快感を感じさせたりはしない。
ダイナミック性能が犠牲にならず過去最高の快適さ
DBシリーズは1950年代の終わり頃から、代々グランツーリスモ色の強いモデルとして発展してきた歴史を持つが、DB11は過去最高の快適さ。ロングドライブに出てみたい気持ちが沸々と湧いてくる。そうしたクルマは得てしてダイナミック性能が犠牲にされていることが少なくないのだが、DB11は違った。
ペースを上げてコーナーに侵入してみると、嬉しい驚き。長いノーズはこれまでのどのV12搭載アストンよりも鋭くインを刺し、堂々とした車体がそれに負けず劣らずの勢いで追従してくる。
不自然なところがないから気づかないが、トランスアクスルに備わる機械式LSDに新たにトルクベクタリング機構が統合されていて、それがいい働きをしてるのかも知れない。
コーナリング時にスロットル操作を適切に行っている限り、DB11はかなりの領域まで見事なスタビリティを発揮しながらスムーズに旋回し、微少なアンダーステアを伴いながら惚れ惚れするような勢いで脱出していく。4つのタイヤへの荷重のかけ方やアクセルペダルの踏み込み具合で意図的に後輪をスライドさせることもそれほど難しいことではなく、そのときの動きはステアリングやシートを通じて解りやすく伝わってくるし、その先のコントロールにもかなり自在感がある。ウデさえあれば全てのコーナーを斜めだとか横になって抜けていくことだってできそう。
逆に今ひとつ自分のウデに懐疑的なときには、電子制御を入れたままでも、その後のことをそれほど心配することなく、後輪が遊泳する感覚の入り口付近を楽しむことができる。よほど物理の力を無視したドライビングでもしない限り、スルッと滑って次の瞬間には自然に軌道を戻してくれるからだ。そこにドライビングをする楽しみをスポイルするような動きは感じられない。
硬派な楽しみ方をしたい気分になったときにも存分に応えてくれるだけの資質をしっかり持っている、というわけだ。
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