豊橋から伊良湖岬に向かって国道259号線を車を走らせると、自然豊かな景色が一面に広がる。煌めく波の反射を感じながら、三河湾を横目にまっすぐ伸びた直線を走る。ドライブには絶好のロケーションだ。昔ながらの細い道をくぐりぬけて行くと、趣あふれる「和味の宿 角上楼(なごみのやど・かくじょうろう)」が見える。ここでは囲碁の名人戦が2度実施され、1989年には「釣りバカ日誌」の撮影にも使われた。一度訪れると、毎年訪れる客が後を絶たない「お忍び宿」だ。
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料理日本一の天然とらふぐに、希少価値の高い白子も堪能
「当館の売りは、何といっても天然とらふぐ。この味を求めて、毎年全国各地からお客さまが足を運んでくださいます」。そう語るのは、会長の上村さんだ。角上楼では、天然とらふぐ漁獲量日本一の伊良湖岬で毎朝仕入れを行う。新鮮で雑味や臭みもなく、歯応えもたまらない。天然とらふぐからとれる白子は希少価値が高く、時期によっては1kg約10万円で取引されることもあるという。
「ふぐだけではありません。春は桜鯛、夏は岩牡蠣や鱧(はも)、秋は伊勢海老、冬はクエにヒラメ…。その時期に上がる天然地魚を、お客様に堪能していただいています」と上村会長。どのシーズンに訪れても、身も心も満足できそうだ。毎年作られる大女将のお手製梅酒も、ぜひ一緒にいただきたい。
部屋一室として同じものはない、落ち着きと上質さを感じる客室
“角上楼の客室で驚くべきは、一部屋ひと部屋が異なるテイスト・デザインになっていることだ。一般的な和室ではなく、4棟全15室が全て特徴ある趣深い部屋になっている。過度なきらびやかさのない、上質感あふれる客室は、まさに大人が訪れる「お忍び宿」にぴったり。宿泊するたび、”今回はどんなお部屋だろう?”と楽しみになりそうだ。メゾネットタイプの客室もあり、2家族や3世代といったグループでも一緒に宿泊可能。いつもと違った場所で、団らんをゆっくりと楽しめるだろう。
「このあたりは特別な観光地がないので、お部屋でゆったり、のんびり過ごしていただきたいですね。お風呂が外にあるお部屋は、風がとても心地いいですよ」と、優しく微笑みながら女将が教えてくれた。部屋付きの浴槽に至るまで、個性あるデザインが施された広々とした空間。部屋で寛ぐひと時は、角上楼を楽しむポイントになるだろう。”
部屋からの眺め懐かしさを感じる、ノスタルジックな景色に浸る
「田原の街はかつて、海運交通の要衝でした。あの港が船着場で、当館は旅人や商人、地元の若旦那衆に愛されていました。船を直接宿につけていたのですよ」。女将が窓の外を指差して話してくれた。窓の外には、渥美半島のありのままの自然が広がる。特別な景勝地が見えるわけではない。しかしなぜだろう、日当たりの良い窓際で、腰を据えてじっくりと外を眺めてしまう。
「夜は電照菊の温室がとても綺麗ですよ。『中庭は実家に帰ったような懐かしさを感じる』とお客様に喜んでいただいています。雪が積もると、より趣を感じられると思います」と女将。”おばあちゃんの家”を思い出す、なんとも言えない安らぎがたまらない。15:00~17:30に楽しめる本館「ミューズサロン」でのフリードリンクサービスを利用して、ビールを片手にぼーっとしたい。まるで、そっと何かに包まれているかのような心地よさと、温もりを感じてほしい。
人気の秘密4棟それぞれの意匠と、心づくしのおもてなしも大きな魅力
1000坪を数える角上楼の敷地には、4つの棟がある。1925年に建てられた「本館角上楼」に加え、全室露天風呂付きの「別邸翠上楼」「新館雲上楼」、そして築200年の旅籠をリノベーションした「別館井筒楼」。それぞれ、お部屋以外の部分にも優れた意匠が施されている。「お客様が過ごしやすく、居心地の良い空間づくりにこだわっているんです」と上村会長も胸を張る。2020年にはミシュランガイドに掲載。2021年には「本館角上楼」「別館井筒楼」の建物が指定文化財に登録される予定だ。
客室や料理を楽しみにしている全国のファンも多いが、もう一つの魅力は女将をはじめとしたスタッフのおもてなしだろう。「当館は、『お客様の立場になること』を大切にしています。極力、お部屋にお邪魔しないこともその一つです」と女将。接客マニュアルによらない、優しさにあふれた接客が、心に残る滞在を約束してくれるはずだ。
風呂地下から汲み上げた天然水のお風呂で愉しむ 極上のひと時
「渥美半島にはいまのところ温泉がありません(2022年利用開始予定)。当館のお風呂も温泉ではありませんが、とてもやわらかいお湯なんですよ」と女将。角上楼の風呂には、地下150mから汲み上げた天然水を使ったお湯が注がれる。豊かに湛えられた透き通るお湯に、思わず手を伸ばす。なんと心地よいのだろう。なめらかさや、まろやかさを感じる不思議なお湯だ。「温泉旅館ではありませんが、このお風呂を楽しみにいらっしゃるお客様も少なくありません(女将)」。
大浴場の露天風呂では、渥美半島の風を感じながら、ゆっくりと湯に浸かれる。どこか落ち着く特別な空間に、静かな時が流れ、心身ともに癒されるはずだ。
会長の口癖は「美味く、明るく、元気よく」。美味しいものを食べて、元気に帰っていただく。心が軽くなって、どこかほっとする居心地のよさを感じるのも納得だ。女将も、「必勝じゃない、必ず笑うと書いて『必笑』なんです。お客様が笑顔で帰れるように、そして私たちも笑うことを大切にしています」と話してくれた。懐かしさを感じるのは、立地や設えだけでなく、母のようなぬくもりを感じる、女将の存在があるからなのかもしれない。
宿からのメッセージ

三方を海に囲まれた愛知渥美半島。その中程に「和味の宿 角上楼」はあります。昭和の初めより花街として栄えたこの町も、時代の波に押され、当時の見る影もありません。ただ「角上楼・本館」は、昭和元年創業当時の趣を今日に留めております。今の時代が失ってしまった、あの懐かしい記憶の名残が…
田舎家に漂うのんびりとした空気、何もしないでぼ~っとする縁側の片隅、久しぶりに帰った故郷の笑顔溢れる出迎え、日だまりに寝そべる猫…当館は、大自然に囲まれたり、絶景が望めたり、温泉があったりというような環境にはありません。華美なおもてなしや施設、娯楽などもありません。また、これといった観光地でもありません。
ただ、その懐かしい記憶に身をゆだね、美味しい肴と酒を味わい何もしない、何も急き立てられない時を忘れ、時を楽しむ宿です。心の片隅にあるノスタルジックに出逢う。 館内各所に長年の時の流れを感じつつゆっくり、のんびり、「昔ながらの日本」をお楽しみください。
キーパーソン
千葉県出身。卒業後は資生堂で活躍し、のちの3代目と結婚し角上楼へ。「お部屋のアメニティは、みんなが知って、わかっているものにこだわっています。」と話してくれた女将。化粧品会社出身ならではの、女性目線が生かされている角上楼では、地酒はもちろん、女将のふるさと・千葉県のお酒も取り入れているそうだ。江戸時代から変わらない製法で作られる、天然発酵のビールもぜひ堪能していただきたい。
女将から感じたのは、「美味く、明るく、元気よく」という宿のモットーにふさわしい、人柄の良さ。「掃除はぞうきんで磨きます。大変だけど、その方が汚れが取れてツヤもでるんですよ」。お客様が心地よく過ごせるようなおもてなしを大切にするのはもちろん、旅館への愛着を感じる話しぶりも印象的だった。思いやりと愛情あふれる人柄に惹かれる人も多いだろう。そんな女将との会話も楽しんでいただきたい。
お知らせ
- 衛生管理(新型コロナウイルス感染予防対策)について
- 当館では、お客様に安心安全にご滞在いただけますよう、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防および拡散の防止のため、以下の取り組みを実施中です。
1.全客室をアルコール消毒するなど、入念な清掃を実施しております。
また、空気清浄機・加湿器を設置しております。
2.館内各所(玄関・お食事処など)にアルコール消毒液、空間除菌噴霧機を設置しております。
3.健康な状態でお客様に対応するため、スタッフの健康管理には細心の注意を払っております。
全社員の手洗い・うがい・検温の徹底を実施しております。
4.全スタッフがマスクを着用しお客さまに対応しております。
当館では、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針(令和2年2月25日決定)」に基づくとともに、
今後の様々な要請により、今後の新型コロナウイルスの感染拡大の状況次第で各種対応の変更・追加を行う場合がございます。
以上、ご理解ご協力いただけますようお願いいたします。 - 更新日:2021年01月15日