トヨタ 新型ヤリス 公道試乗|大幅進化したトヨタのグローバルコンパクトカー

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トヨタのコンパクトカー、ヴィッツがフルモデルチェンジした。4代目は欧州同様に「ヤリス」に変更され、プラットフォームやパワートレインなど全て一新。デザインもスポーティなイメージが与えられている。自動車ジャーナリストの今井優杏がニッポンの新しい小型車ヤリスを厳しい目で徹底評価する!

目次[開く][閉じる]
  1. サーキットだけでなく公道でもヤリスはマジ良かった
  2. “らしくない”のが高評価!? 早くもユーザーから支持を集めるグローバルデザイン
  3. 室内空間を求め過ぎなくなったことで得られた、小型車ならではの正義
  4. 新型ヤリス注目のポイントは、新時代にふさわしい“走り”の良さ
  5. しなやかさ、軽快さがイイ! 1.5リッターガソリンモデル
  6. キリッとした爽快さ! ハイブリッドモデル
  7. ガソリン、ハイブリッド共に“ヤリスの味”が見事に統一されていた

サーキットだけでなく公道でもヤリスはマジ良かった

本当に正直に言えば、この日を楽しみにしていた気持ち半分、恐れていた気持ち半分。

新型ヤリスを一般道で試乗することが叶った今日のことだ。

ほんの少し前、報道陣に許されたのはサーキットでのプロトタイプ試乗だった。ここでのヤリスの感触はもう、掛け値なしに本気ですこぶる良かった。ピットレーンからコースインした瞬間にすでに「わあ、好き! キュン!」となる私の表情がリアルだったのか、運営している私のYouTube内でも、ヤリスのシリーズはそれぞれにハネた。

だからこそ、だ。一般道での試乗は怖かった。不安は2点。

サーキットのような平滑な路面から、変化に富んだ一般路面での試乗にステージが変わることによって、もしかしたらクルマの欠点が露呈するかも知れない、という動的質感の部分。また、プロトタイプから市販車になるときに、微妙な変更によって仕上がりが台無しになることが、実はなくはないと知っているという商品的な部分だ。

しかし結論から先に言っておく。

新型ヤリスすごい。マジ良かった。これほんとに、よく出来たクルマですよ!

一般道での試乗が叶ったのは、1.5リッターガソリンエンジンの「Z」グレードと、ハイブリッドの「HYBRID G」。順に観てみよう。

“らしくない”のが高評価!? 早くもユーザーから支持を集めるグローバルデザイン

まずはデザインだ。

実は私、関西地方にネットするFM大阪にてラジオのレギュラー番組を持っている。『Radio Test Drive』といい、毎週土曜の19:30〜放送しているものだ(冒頭のYoutubeも然り、チョイチョイ私的な番宣挟んで申し訳ないとは思っている。しかしこれは情報の根拠のために引用しているのであって、名のあるメディアを使って自分の名を上げたいとかそういうヨコシマな気持ちはほんのちょっとしかないから許してほしい、ごめりんこ)。

この番組では、トヨタの販売店を回ってドライブしながら販売の方にお話しを聞いているのだが、やはり今、新型ヤリスは好調なのだという。営業の皆さんに聞いてみると、顧客の背中を大きく押しているのがずばり、デザインとのこと。

「ちょっと日本車らしくない、グローバルなデザインをお客様に支持していただいています。『こんなのヤリスじゃない!』と大変に喜ばれて(笑)。弊社では特に、カラフルでポップな色からオーダーが入りました。2トーンカラーも大人気です」というのだ。

ホンダ フィットがガチのライバルではなくなったと感じる理由

そう、ご存知の通り、時期をほぼ同じくしてホンダの新型フィットも発売される。

実はこの新型フィット、新型ヤリスと真反対のキャラクターと考え方を持ち、これまでガッチガチに競合してきた2台ながら、新型はその潮流を分けるというか、なんだか双方独自路線を歩み始めちゃったなあ、という感じなのだ。

だから正直、私見としてはガチ競合ではなくなったとすら感じている。

しかし、この2モデルに共通する部分がひとつだけあって、それは「室内空間を求めすぎなくなった」ということ。

ホンダ/フィット
ホンダ フィットカタログを見る
新車価格:
172万円284.7万円
中古価格:
12万円300万円

室内空間を求め過ぎなくなったことで得られた、小型車ならではの正義

これまで、国産コンパクトのクルマづくりでは、小さなディメンションの中で1ミリでも室内空間を拡げ、0,5リッターでも荷室容量を上げる、ということを追求してきた。しかし、新型はヤリスもフィットも、それをぱったり辞めてしまった。そういう数値上の見栄じゃなく、本当にコンパクトカーを選ぶユーザーのために寄り添うべき方向を定め直した、という感じだと私は受け取っている。

新型ヤリスはズバリ、空力や軽量を求め、結果洗練されたデザインをも得て走りを追求した。

新型フィットはふわふわシートやコンソールの使いやすさを見直して心地よさを追求した。

その結果、走りも使い勝手もイマイチぴりっとしないレンタカー向け車、という過去の汚名を完全に払しょくし、『コンパクトだからこそ乗りたいクルマ』に劇的に生まれ変わったのだ。

とはいえさすがトヨタのクルマ。

攻めてる感アリアリの外装だけど、実は後席の居住性もかなり考え尽くされている。身長162センチのわたしはともかく、180センチ超えのT編集長ですら「悪くない、なんか落ち着く」と言わしめる始末。ドア側の内張りをしっかりとえぐり、肩周りの窮屈さを感じさせないようにしているし、シート自体の座りもかなりイイ。

いい意味での“トヨタ品質”は犠牲にされていないのだ。

新型ヤリス注目のポイントは、新時代にふさわしい“走り”の良さ

TOYOTA GAZOO Racing の知見が生む新次元の走りとは

そして、新型ヤリスといえばやはり注目なのが、走りの部分だ。

強調しておきたいのは、走り=硬いとか、走り=過敏とか、走り=しんどいとか、そういうことではない、ということだ。だけど世の中こんなにSNSが発達して情報の瞬発力が増しているにも関わらず、まだそう思っている人がと〜っても多い気がする。いや、これは一概に間違いではなくて、走りを先述のような要素でカミソリの歯みたいに削ぎ澄ませているメーカーもあるにはあるのだ。しかし、走りの意味にも多様性があるということを知ってほしい。少なくとも、トヨタの言う「走り」は今、そうではない。

なぜならば、トヨタには今、いや、新型ヤリスには今、TOYOTA GAZOO Racingとして参戦している世界ラリー選手権WRCや、長年参戦してきたニュルブルクリンク24時間レースから得た知見があるからだ。

3方向からのGを車体に受けるラリー競技では、ガッチガチに固めたアシや過敏に反応するステアリング、ピーキーなエンジンは逆に、完走率を引き下げる。完走、いや過酷なレースやラリーを“勝つ”ためにはあくまでもドライバーを疲れさせない、ドライバーの体力を変に消耗させないクルマが求められる。

つまり、『走る曲がる止まる』がしっかりとドライバーの意思にリンクする、というシンプルなことを愚直に追求していこうという方向性だ。

しなやかさ、軽快さがイイ! 1.5リッターガソリンモデル

前置き(!)が長くなったけれど、今回の新型ヤリスに関しては、ガソリン、ハイブリッドともにそれらが非常に高次元で実現されている。

まず1.5リッターガソリンエンジンは、本当にしなやかでかつ、軽快だ。こう言うと月並みだけど、まるで欧州コンパクトのような質感の高さを叶えている。

じゃあなにかよう、おまえ、欧州車はそんなに良いのかよう、ということなのだが、うん、良い。走行シーンの設定がまず、日本と全然に違うから。

まず、ドイツ勢は速度域を速度無制限区間のあるアウトバーンでもきっちり走行できるかどうかを必ず想定しているし、さらに郊外路も日本の比ではなく荒れている上に、下手したら速度制限が90km/hだったりもする。そんな中で作られてきているから、やはり走りは洗練される。

そんな中、価格に引っ張られがちなヴィッツはやはり、そこまでの走行性能を持ち合わせていなかったというのが事実だ。

それがまあ、なんということでしょう。新型ヤリスはまるでWRCの水で洗われたかのように、その欧州の洗練を身に着けて凱旋帰国したのだ。これこそグローバルの場、しかも最前線で戦ってきた戦利品と言えるとおもう。

アクセルを踏んだときの反応がとても素直。ダルさもラグもなく、すっとなめらかにフラットに走り出す。ブレーキのタッチも丁度いい。小型車にありがちなフロア振動もほぼ気にならないレベルで、これはもう、新設計の小型車用プラットフォームが抜群にいい仕事をしていることに疑いの余地はない。

ステアリングも中立がしっかりありながら、舵角がとてもリニアなのだ。ふにゃふにゃしすぎず、重すぎず。長く緩いカーブでも、一回舵角を決めたらそのままに修正打をさほど必要とせずに涼しい顔でするりと駆け抜ける。

サスペンションも程よく柔らかく、カーブでの傾きは抑えられているものの突っ張り感はなく、きちんと接地しているのを実感出来る。

つまり、シャキっとみずみずしく、歯ざわりの良いフレッシュな生野菜のよう!

キリッとした爽快さ! ハイブリッドモデル

そしてハイブリッドだが、こちらも心配していたシステムの重さをネガティブとしない、キリっとした爽快さだった。

広報車は他のメディア諸兄が走りに走ったおかげもあるのか、ブレーキもなめらかで、ハイブリッドならではのカックン感も角が取れてクリアになっている。ただ、走行距離が1000キロに満たないディーラーでのテストカー試乗ではややブレーキにはクセを感じたから、ハイブリッドを購入された方はしっかり積極的にブレーキを使って慣らしてあげれば、印象は熟成されるにつれ変わってくるだろうということも感じたのでここに追記しておく。

ハイブリッドでもサスペンションの程よいロールは健在で、ドスドスするような突き上げも、また底づきもなく、これまた上質。ガソリンエンジンモデルにはない、ハイブリッド特有の電気的なトルクも手伝って、こちらもスポーティーな手応えある、シャキっとした走りを堪能出来て思わず笑顔がこぼれた。

ガソリン、ハイブリッド共に“ヤリスの味”が見事に統一されていた

改めて一般道で試乗して感じたのは、パワートレーンを問わず、モデルを通じてきちんと「ヤリス味」が統一されているということだ。

たとえば新型フィットは、ガソリンとハイブリッドで味付けやキャラがかなり異なる。しかし新型ヤリスは、どれに乗ってもちゃ〜んとヤリス。ガソリンとハイブリッドで得手不得手は異なるものの、基本的にはしっかりと骨太の性格があって、それにしたがって上質に肉付けをされている。

これら基本性格にコンパクトカーとは思えない先進安全系や進化型のボイスコマンド「エージェント」も採用され、本当に優れた仕上がりに唸ってしまった。これでコレなら安いわ! と。

しかも感動ポイントがさらに。ウインカーにオートリバースが付いた。軽くウインカーレバーを押すと、通常5回で勝手に戻ってくれるヤツ。これは今後のトヨタモデルにも拡大しそうで嬉しい。

さあ、あなたならどのヤリス? この大幅進化を是非体験してほしい!

[筆者:今井 優杏/撮影:和田 清志]

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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