情熱の男“豊田 章男”がどうしてもつくりたかったラリーカー「GRヤリス」とはいったいどんなクルマなのか【新型車解説】(2/3)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:小林 岳夫・TOYOTA
ショートストロークの専用1.6リッター 直3ターボ搭載
ということでここからは、その細部を見て行こう。
主役となる4WDモデルのGRヤリスは、前述の通りモータースポーツベース車輌を「RC」、レギュラーモデルを「RZ」、上級モデルを「RZ“High Performance”」とした3グレード構成となる。
搭載されるエンジンは、現行WRカーと同じ排気量を持つ1.6リッター・ターボ。直列3気筒を選んだのはヤリスベースだからというわけではなく、オーバーハング重量の軽さと性能のバランスを取った結果だ。
専用設計となる「G16EーGTS」型ユニットは、ボア×ピッチが85.7×89.7mmと、ヤリスに搭載されるダイナミックフォースエンジンよりもショートストローク。もちろん排気量が違うので直接比較はできないが、この数値もやはり、ラリーでのパフォーマンスを最優先に導き出された。
1シリンダー辺り539ccの排気量で分厚い低中速トルクを確保し、ハイレスポンスなボールベアリング・ターボで高回転まで回しきる特性は、GRヤリスのキャラを表す大事な柱である。ちなみにその最高出力は272PS/6500rpm、最大トルクは370Nm/3000~4000rpmと発表された。
燃料噴射は直噴式に加え、ポート噴射を併用。吸排気双方にVVT(可変バルブ機構)を備えるカムシャフトは、従来の鋳造一体型から圧入・組み立て式に。さらに強化タイプのクランクシャフトやピストンは、組み付け精度の高い量産工場で生産される。これはトヨタでも初の試みであり、GRヤリスがその最初の一台となる。
前後トルク配分が変更可能なスポーツ4WD「GR-FOUR」
こうして得られた高出力を路面に伝えるべく、トヨタは20年ぶりにスポーツ4WD「GR-FOUR」の開発に着手した。その最大のトピックは、前後トルク配分をドライバーの好みに応じて変更できるシステムを持たせたことだ。
ノーマルモードの前後トルク配分は60:40。これを「スポーツモード」に入れると30:70とより多くのトルクが後輪に配分され、「トラックモード」では前後均等の50:50となる。
こうした可変は6MTシフトノブ奥のダイヤルを回すことで操作できる。機構的にはリアデフ直前に搭載された電子制御多板クラッチが、駆動の制御を行う。
シンプルな造りは実戦でも有効
GR-FOURの機構をシンプルな構造としたのは、ラリーでの耐久性や作業性、運動性能に直結する軽さ、そしてコストを重視したからだろう。加えて言えばトランスミッションを流行りのデュアルクラッチや、ロックアップ機構付きスポーツATとせず、コンベンショナルな6速MTとしたのも同じ理由だ。
ちなみに理論的には、電子制御のマッピングを変更することで、その駆動配分をさらに細かく設定することが可能であり、そうしたチューニングも今後の視野に入っているという。
さらにこのGR-FOURを搭載するために、リアサスペンションはダブルウィッシュボーン化されている。
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