情熱の男“豊田 章男”がどうしてもつくりたかったラリーカー「GRヤリス」とはいったいどんなクルマなのか【新型車解説】(3/3)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:小林 岳夫・TOYOTA
空力に最大限配慮した専用3ドアハッチバックボディ
最後はパッケージングとシャシーだ。
前述した通りGRヤリスは、ノーマル・ヤリスでもまだラインナップされていない3ドアボディを、先だって採用した。
そしてこの英断は、ドア開口部の少ないボディで高い剛性を得るだけでなく、現代のラリーを戦う上で大きな武器となる、空力性能に大きく貢献している。
トミ・マキネン・レーシング(TMR)の風洞実験でルーフ高が決まった
GRヤリスの風洞実験を行ったのは、トミ・マキネン・レーシング(TMR)だ。そしてここから得られたデータを元にTGR(TOYOTA GAZOO Racing)は、そのルーフをリアハッチ後端部分で95mmも低めた。これはWRC出場時に装着される巨大な2段式リアウイングへ、きれいな空気の流れを導くため。このエアフローによって、高いダウンフォースを得るためである。
また車体後半の清流効果を得るために、リア・クォーター部分に空力的な造形を施した。このために3ドアボディは、とても有効だったとTGR開発陣は語っている。
軽量化に配慮したボディパネル
こうして形づけられたボディには、大幅な軽量化も施された。
エンジンフード、ドアパネル、トランクリッドはアルミパネル化され、そのルーフはカーボン製に。とはいえコストが高く手作業が必要となるドライカーボンではなく、フォージドカーボンを採用しているのもトヨタらしい配慮である。
その結果GRヤリスは、3995mmの短い全長に対し1805mmもの全幅を持ち、1280kgのボディを272PS/370Nmのパワー&トルクで走らせるリトル・モンスターとなった。
“本物のラリーカー”なのに、実戦投入がされない!?
ただ残念なことに、こうして渾身のホモロゲーションモデルとして作られたGRヤリスを、トヨタは2021年シーンに投入しないと発表している。その理由は明かされていないが、コロナ禍が生産に影響しているのは確かだろう。
そしてそもそものWRCが、2022年からレギュレーションを大きく変更、緩和してしまうという話が出ている。それはトヨタのような体力を持たないメーカーを救済し、自らもWRCを消滅させないための策だろう。
となると……。まさにGRヤリスは、ここまでやる必要がなかった、幻のホモロゲーションマシンとなってしまうのだろうか?
いや、それも違う。
今後の規則はわからない。ホモロゲーションの台数が緩和されるのか、そもそもの作りが変わってしまうのか(パイプフレームになるという噂もある)。
しかし少なくともGRヤリスを手にしたユーザーは、本物のラリーカーを手にできる。ラリーやダートトライアルといったモータースポーツに参戦するにしろ、クラブレーサーとしてサーキット走行を楽しむにしろ、本物の性能が得られるのである。
GRヤリスは、言ってみれば「俺達のWRカー」なのだ。
そしてこれこそが、トヨタの目指したクルマ造りの根本なのだと思う。
[筆者:山田 弘樹/撮影:小林 岳夫・TOYOTA]
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トヨタ GRヤリス RZ “High performance” 主要スペック
全長×全幅×全高:3995mm×1805mm×1455mm/ホイールベース:2560mm/車両重量:1500kg/最小回転半径:5.3m/乗車定員:4名/エンジン型式:G16E-GTS型/エンジン種類:直列3気筒 インタークーラーターボ/総排気量:1618cc/最高出力:272ps(200kW)/6500rpm/最大トルク:37.7kgf-m(370Nm)/3000-4600rpm/使用燃料:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)/トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション/サスペンション形式:(前)ストラット式コイルスプリング/(後)ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング/駆動方式:スポーツ4WD「GR-FOUR」(4輪駆動)/燃料消費率:13.6km/L[WLTCモード燃費]/メーカー希望小売価格:4,560,000円(消費税込)
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