高級ミニバン アルファード&ヴェルファイアの良いとこ・悪いとこを教えて!|自動車評論家に聞いてみた

アルファード&ヴェルファイアの良いところと悪いところ

景気の良くない時代が続いていることもあり、今は軽自動車やコンパクトカーの人気が高い。新車として売られるクルマの40%近くが軽自動車で、5ナンバーサイズのコンパクトカーも20~30%に達する。

そのために販売ランキングの上位にもコンパクトな車種が並ぶが、唯一例外とされるのは、トヨタ アルファード&ヴェルファイアの姉妹車だ。

2019年1~6月の登録台数を1か月平均で見ると、トヨペット店の扱うアルファードが5876台、ネッツトヨタ店のヴェルファイアは3460台で、合計すると9336台に達した。

ちなみに小型/普通車の販売ランキングで3位に入るコンパクトハイブリッドのトヨタ アクアは、1か月平均で約1万台だ。これに迫るアルファード&ヴェルファイアの売れ筋価格帯は370~500万円で、200万円前後のアクアに比べると約2倍に達するから、相当な人気車といえるだろう。

>>先代顔でも良かった!? 新旧アルヴェルの顔つきを画像で見比べる(31枚)

良いところはズバリ、豪華な内外装!

派手な顔立ちで売れ行きアップ

これほどまでアルファード&ヴェルファイアが好調に売れる理由(つまりこのクルマのメリット)は、まず外観が派手なことだ。全幅1850mm、全高1935mmに達する大柄なボディのフロントマスクには、メッキパーツを豊富に装着して迫力のある顔立ちに仕上げた。

このクルマにとって顔が大切なことを裏付けるのが、両車の販売推移だろう。先代型はヴェルファイアがアルファードよりも多く売れていたが、現行型は逆になった。姉妹車だから価格を含めて基本部分は共通だが、フロントマスクの形状は個性化され、特にアルファードは現行型で仮面のような派手な表情を演出している。部分的なフロントマスクの違いだけで、売れ行きの優劣が逆転した。

販売店の店舗数からもそれが伺える。東京地区がトヨタモビリティ東京に統合される前の時点で、トヨペット店が全国に1000箇所、ネッツトヨタ店は1600箇所。店舗数の少ないトヨペット店が、顔立ちの変化によってアルファードの売れ行きを大きく伸ばしたのだ。

エグゼクティブシートから見下ろす優越感

内装が上質なことも特徴だ。インパネにはメッキパーツや光沢のある木目調パネルが豊富に使われ、随所をキラキラと光らせている。

また天井の高いLサイズミニバンだから車内も広く、3列の各シートの頭上と足元にはタップリした空間がある。

特に2列目シートに固定式アームレストを備えたエグゼクティブラウンジシート、あるいはエグゼクティブパワーシートになると、旅客機のビジネスクラスのような雰囲気だ。車内の広いミニバンだから、リクライニングさせてオットマンを持ち上げることもできる。頭上と足元も広く、レクサスLSの後席よりも快適で豪華に感じるほどだ。

エグゼクティブラウンジシート装着車の価格は700万円を超えるが、レクサスLSは1000~1300万円が売れ筋だ。アルファード&ヴェルファイアは広さと豪華さを分かりやすくストレートに表現しており、700万円でも割安という見方も成り立つ。視線の位置も高く、乗員は周囲を見下ろしながら走ることができる。

悪いところは、乗ってみないと分からない部分にアリ!

視線の高さを優先し、乗降性は切り捨て

まず大柄なボディは、混雑した街中や駐車場での取りまわし性が悪い。最小回転半径も5.6~5.8mに達する。周囲を見降ろす高い視線は、遠方を見る時には都合が良いが、ボディ左側面の死角を拡大させてしまう。

現行アルファード&ヴェルファイアは、プラットフォームを刷新したから低床設計にすることも可能だったが、乗員の視線を高める目的で、敢えて床はあまり下げていない。そのために低床設計のヴォクシー、ノア、エスクァイアなどに比べて乗降性が悪い。

見た目は豪華なシートだが、座り心地は…

また床が高いこともあり、3列目のシートは床と座面の間隔が不足気味だ。左右に跳ね上げる構造上、座面の角度が水平に近いから、足を前方に投げ出す座り方になる。頭上と足元の空間は3列目も広いが、座り心地が快適とはいえない。

2列目のエグゼクティブラウンジシートと、エグゼクティブパワーシートにも欠点がある。リクライニングさせてオットマンも持ち上げると、乗員の体がほぼ水平になる。移動中にこのような姿勢を取ると、衝突時にシートベルトが機能しにくい。従って本来はこのような姿勢を取らせるべきではないが、寝かせた姿勢にできるから、腰を安定させる必要が生じた。電動オットマンの採用もあり、シートとして普通に使う時には、座面の前側が大きく持ち上がる。そのために腰が落ち込み、膝の持ち上がる着座姿勢を強いられやすい。

旧態依然の運転感覚

車両重量はベーシックな直列4気筒2.5Lエンジン搭載車でも1900kgを上まわり、ハイブリッドは後輪をモーターで駆動する4WDを備えるから、2100~2200kgに達する。全高は2m近く、床が高いこともあって、カーブを曲がる時は重心の高さを意識させる。安定性を確保するために操舵感も鈍めだ。ミニバンだからスポーティに走らせる必要はまったくないが、それにしても旧態依然とした運転感覚ではある。

燃料消費量も多く、JC08モード燃費はハイブリッドが18~19km/L。2.5Lのノーマルエンジンは10~12km/L。V型6気筒3.5Lは10~11km/Lだ。

まとめ

このようにアルファード&ヴェルファイアは、外観と内装が豪華で、視線は高く、乗り心地と静粛性も優れている。快適で優越感の伴うクルマに仕上げたことがメリットだ。しかし、このすべての要素が、見方を変えると欠点として裏目にも出てしまっている。

機能と価格のバランスを考えると、買い得なグレードは、アルファードであれば2.5Lノーマルエンジンを搭載してエアロパーツなどを装着したS(375万7320円/7人乗り)といえる。ハイブリッドも同様にS(463万2120円/7人乗り)が良い。ただしハイブリッドは後輪をモーターで駆動する4WD仕様のみになり価格も88万円ほど高くなるため、今は2.5Lのノーマルタイプが売れ筋のパワーユニットだ。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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