日本で売らないインフィニティ車を日産が横浜で発表した理由

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2020年9月25日、日産の高級車ブランド「インフィニティ」のコンセプトカー「QX60 Monograph(モノグラフ)」が、横浜の日産グローバル本社で発表された。日本では売られていないインフィニティのニューモデルをあえて横浜で発表した理由とは。日産を取り巻く昨今の事情とあわせて考察する。

日本では売らない!? インフィニティの最新モデルを写真でもっと見てみる

異例尽くし! 横浜で発表されたインフィニティのニューモデル

2020年9月25日、インフィニティのコンセプトカー「QX60 Monograph(モノグラフ)」が日産グローバル本社のある横浜で発表された。2021年にフルモデルチェンジ予定の新型SUV「QX60」を予告するとともに、今後のインフィニティ車が目指すデザインの方向性を示唆するという。

改めて説明すると、インフィニティは日産の高級車ブランド。トヨタで言うところのレクサスだ。一時期レッドブルのF1チームにもその名を冠していたことで知っている方もいるだろう。

しかし日本では展開されていない高級車ブランドのコンセプトカーを、あえて横浜で発表するというのは、少し前の日産では考えられないことだった。

行き過ぎた日産のグローバル化で古くからのファンは落胆

日産はグローバル企業だから、世界各国の特性に合わせ様々な車種を展開している。日本には軽自動車やミニバン、北米向けに大型SUV、欧州で生産する専用の小型車、中東向けの四輪駆動車など、その数は実に多彩。新型車が出れば、それぞれメインの市場で発表するのは当然のことだろう。これはトヨタやホンダでも同様だ。

ただ日産の場合特にそれがはっきりし過ぎていた。しかも、日本国内向けの車種を大幅に削減し何年も新型車が登場しなかったから、なおさら海外だけに注力しているように映った。

例えば、日本でも好評を博した小型SUV「ジューク」が2019年9月にフルモデルチェンジした際も、日本国内への案内はあっさりしたもの。欧州で先行発表されたあと、日本ではしばらく経ってから欧州向けプレスリリースの翻訳文が国内向けに掲載された。

Webで世界中の情報がつながる時代だから、そんな状況は瞬時に伝わる。「どうやらこの2代目ジュークが日本では販売予定がない」と気付いた古くからの日産ファンは大いに落胆。「日産はもはや海外メーカーだから」だと揶揄する声さえ聞こえたのだった。

インフィニティをあえて日本で披露した2つの理由

北米、中国と並び日本を主力市場と見据えた「NISSAN NEXT」

世界で行き過ぎた拡大志向を続けた日産も、2023年度までの4か年に渡る事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を発表。“選択と集中”によるスリム化を図りながらも、コアマーケット(主要市場)として米国・中国と並んで日本を掲げた。欧州やラテンアメリカ、ASEANについては、それぞれを得意とするアライアンス先のルノーや三菱を主体とする戦略だ。

つい先日の9月16日、新型フェアレディZのプロトタイプが横浜で世界デビューを果たしたのは、そうした構造改革が早くも具体化された第一歩だろう。以前ならきっと主戦場のアメリカだけで華々しくデビューし、日本のファンを嘆かせていたに違いない。

今回新型フェアレディZ プロトタイプの実車公開は日本だけ。10月4日までは、一般の来場者向けにも披露している。正式な発売は2021年となる模様だから、非常に貴重な機会が国内の日産ファンだけに与えられた。今までの不義理(?)を詫びつつ、日産は決して海外メーカーではなく「日本で生まれた世界の企業である」と改めて宣言してくれた格好だ。

インフィニティの本社も香港から横浜へ移転

冒頭のインフィニティのハナシに戻る。

インフィニティブランドは1989年、アメリカから展開を開始。2019年にはブランド30周年を迎えた。その間、何度か日本導入の計画もあったようだが、結局は実現していない。北米・中南米、欧州、アジア、中東・アフリカと世界へと展開を拡げた。欧州からは2020年3月に撤退するなど、必ずしも順風満帆というワケではなさそうだが、北米や中国を主戦場と定め、現在はSUVモデル中心のラインナップ展開を図っている。

そんなインフィニティは日産との独立性を重んじ、2012年5月に香港へ本社を移している。拡大を続けていた中国や東南アジア市場への対策という意味もあったはずだ。

しかし2019年5月、急務となるインフィニティ車の電動化対応に向け、横浜への移転を発表している。日産の研究開発やデザイン拠点、EVの生産現場なども同じ神奈川県内にあり、密な連携を図ることを狙った。その際のリリースには「2020年半ば」との記載があったが、実は2020年4月には移転を果たしている。コロナ禍の中で特に大きく発表はしておらず、このことはまだあまり知られていない。

日本の繊細な美をデザインに反映したというQX60 Monograph。日本での発売は不明ながら、ジャパンオリジナルの高級SUVというだけで、俄然興味が湧いてくるかもしれない。同車は世界に先駆け横浜の日産グローバル本社ギャラリーで展示されている。Zと併せて、一見の価値ありだ。

[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)]

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筆者トクダ トオル(MOTA)

昭和44年生まれ。週末は愛車に乗って(時に鉄道に乗って)家族とともにドライブやキャンプを楽しむ1児のパパ。自動車メディアに携わるようになってから15年余りが経過。乗り換えに悩むユーザーの目線に立った平易なコンテンツ作りを常に意識し続けている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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