ハイブリッド技術の進化をけん引する“モータースポーツ”に注目せよ!(1/2)
- 筆者: 清水 和夫
モータースポーツと自動車の関わりを改めて考えてみる
連続猛暑日を記録した夏から一転、今年は秋の訪れが早い。今回はスポーツの秋にふさわしく、モータースポーツと自動車の関わりを考えてみたい。
少し前の話になるが、今年のル・マン24時間レースは格別に面白かった。スティーブ・マックイーン主演の映画『栄光のル・マン』を観ながら、「いつかル・マンを走りたい」と夢見た40年以上前の感動が蘇ってきたほどだ。
昨年のFIA世界耐久選手権はハイブリッドカークラスでトヨタがシリーズチャンピオンになったが、伝統的なル・マン24時間レースではアウディが優勝した。勝つためにはマシンの性能信頼性と人間のチームワーク、そして勝利の女神の微笑みが必要不可欠だ。
ル・マンはとりわけレース環境がハードである。市街地を使った超高速コースはマシンにもドライバーにも厳しく、さらに天候が変わりやすいという過酷さが加わる。だからこそ、ル・マンを走ったドライバーやチームには共通の達成感がある。
もちろん勝利が最高のご褒美だが、仮に下位に甘んじても24時間を走りきった達成感はナニモノにも代えがたいのだ。
「ル・マンに挑戦する」事自体に大きな意味を持つ
私は2005年にホンダ NSXでGTクラスを走ったことがある。ホンダにとってもNSXにとっても初めての挑戦だったので、マシンもドライバーもチームも満身創痍ながら何とか完走した。
レース終盤にはクラッチが切れなくなるトラブルに見舞われた。走行中はエンジン回転を合わせてクラッチを使わずにシフト。ダウンはともかく、シフトアップは難しかった。さらに困ったのはピットだ。規則でエンジンを止めなければならないが、クラッチが切れないからエンジンを始動できない。
チームは考えた。ピットエリアを水で濡らし、ジャッキアップした状態で、インギアでエンジンをかける。リヤタイヤが空転したところでジャッキをおろして発進する。
このときに感じたのは、ル・マンはチェッカーを受けることが重要だということ。同時にスピードを追い求めるという勇気も忘れてはいけない。
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