【ahead×オートックワン】-ahead 5月号- 名車になる条件(1/2)
- 筆者:
名車は、あなたが決めるもの
ふと思い立ってiPhoneに放り込んである『大辞林』で〝名車〟という言葉を引いてみたら、「すぐれた自動車。有名な自動車」と書かれていた。結構使える辞書アプリなのだけど、なるほど、まぁこんなもんなんだろうな、と思った。他の辞書も手繰ってみようかと考えていたのだけど、ヤメにした。辞書は常にある程度の一般常識を教えてくれはするけれど、本当に知りたいことや本当に大切なことは、そこには何ひとつ書かれてないのだから。
正直なところ、クルマのことを格別に好きというわけでもない人達の認識では「すぐれた自動車。有名な自動車」っていう辺りがちょうどいいところなのだろう、と思わないわけでもない。そこに「歴史的な自動車」なんていうのが加われば、なおさら都合がいいのかも知れない。
でもさ…とヒネクレ者の僕は考える。それって結局誰かがつくった単純な枠組みなのであって、必ずしも〝自分〟自身が反映されたモノじゃないんだよな、と。
例えばトヨタ2000GTやランボルギーニ・カウンタック、メルセデス300SLにジャガーEタイプといったあたりは、車体にエンブレムとして〝名車〟と刻まれていたっておかしくないくらいの、誰もが認める〝名車〟といえるだろう。もちろん僕にも異論なんてあるはずがない
ならば、日本の〝軽〟はどうだろうか。街を見渡せば必ず視界のどこかに入ってくるごくありふれた軽自動車達。趣味の対象として見られることも多くなく、耐久消費財以外のナニモノでもないと捉えられがちで、ときにはシロモノ家電並の扱いを受けたりもする。多くの人はそれらを〝名車〟と認めたりはしないだろう。けれど日本の軽自動車は、実は押し並べて物凄く優秀なのだ。
エンジンの排気量や車体のサイズをはじめ厳格なレギュレーションが存在し、また主たる購買層を考えれば売価を極力低くしなければならないから開発にコストをかけることも特別な飛び道具のようなものを投入することもできない、といった前提条件の中で、要求の高さでは世界トップクラスといえる日本のユーザーを満足させなければならない。そしてできあがったクルマはどうかといえば、今や走らせてじれったさがあるわけでもなし、燃費はハイブリッドカー並み、乗り心地も操縦安定性もしっかりしたレベルにあり、限られたスペースをそれ以上に広く便利に使えるアイデアに満ち溢れ、おまけに一般的な快適装備はほぼ過不足なく、しかもデイリーユースにおける使い勝手に向けた細やかな配慮の数々は高級車ですら及ばない。それは日本の自動車エンジニアリングの集大成であり、日本人ならではの細やかな感性やもてなしの心の具現でもある。
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