日産 新型ノート、全車e-POWER化で価格帯アップでも大健闘した理由は「多品種ラインナップによる高付加価値化」にあり

  • 筆者: 鈴木 ケンイチ
  • カメラマン:茂呂 幸正・島村 栄二・日本カーオブザイヤー実行委員会・NISSAN
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2021年も終わりが近い。11月までに発表された新車販売ランキングをまとめると、今年の売れ行きも大筋が見えてきた。ベストセラーカーの座は、11月までの時点で約19万6000台を売ったトヨタ ヤリスが勝ち取ることになりそうだ。それに続くのが約12万5000台のルーミー、そして約9万9000台のカローラ、約9万台のアルファードだ。すべてがトヨタとなる。

そして、そうしたトヨタ勢の次にくる他メーカー一番手は、11月までで約8万3000台を販売している日産 ノートとなりそうだ。2020年末に発表されてからおよそ1年。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した新型ノートが売れた理由について、モータージャーナリストの鈴木 ケンイチが改めて検証する。

目次[開く][閉じる]
  1. ハイブリッド専売化で苦戦すら予感させた新型ノートだが、期待以上の反響を得た
  2. ラインナップ展開で多様な価値観を提示し、新たな客層にもアプローチした日産 新型ノートの新しさ
  3. 低価格に頼った薄利多売の時代は終わり! 高付加価値化による新時代のコンパクトカー像を提示し、広く評価された日産 新型ノート

ハイブリッド専売化で苦戦すら予感させた新型ノートだが、期待以上の反響を得た

個人的には、日産 新型ノートの販売は予想以上の健闘だと思う。なぜなら、ノートは昨年(2021年11月)のフルモデルチェンジでハイブリッド専用車となり、エンジン車のグレード設定をやめている。その結果、最も安いグレードでも200万円以上するようになった。つまり、数多く売れるグレードがなくなってしまったのだ。

ノートのようなコンパクトカーで100万円台の安価なグレードがなくなるのは、大きな痛手となる。下手をすると、販売台数が半減してもおかしくないからだ。

e-POWER専売化はかなりのチャレンジだった

なんといってもノートは、現在の日産の国内市場のエース車種である。先代モデルは、年間販売ランキングで、2017年は2位、2018年は1位、2019年は2位と売れに売れていた。そんなベストセラーカーを、販売台数を落とす可能性も高いハイブリッド専用車にしてしまったのだ。日産にとっては、大きな挑戦だっただろう。

しかし、そんな新世代のノートの挑戦は、どうやら成功したように見える。2021年の販売ランキングでは5位を確保できそうな様子。モデル末期の昨年の2020年が年間販売約7万2000台、販売ランキング9位であったことを考えれば、十分以上の成績。安価なグレードを切り捨てつつも、販売低下を最低限に抑えたと言えるだろう。

ラインナップ展開で多様な価値観を提示し、新たな客層にもアプローチした日産 新型ノートの新しさ

では、なぜ、今回の日産 新型ノートは販売低下を最小限度に抑えることができたのだろうか? それにはいくつもの理由が挙げられる。

他社の居ぬ間に…!? 発売タイミングが絶妙だった新型ノート

まず、非常に効果が大きかったと思えるのは発表・発売のタイミングだ。

今回のノートのフルモデルチェンジは、2020年暮れに行われた。つまり、2021年は1年を通じて、新型モデルを販売することができたのだ。それに対して、どういう訳か、今年の他メーカーの新型車投入は夏から秋に集中した。トヨタの今年の新型車投入は、7月のアクアからスタートし、8月のランドクルーザー、レクサスES、9月のカローラクロス、10月のレクサスNX、GR86と続く。つまり7月から10月に集中していたのだ。

ホンダは4月にヴェゼル、8月にシビック。スバルは7月にBRZ、10月にレガシィアウトバック、11月にWRX S4と夏以降に新車を投入しているのだ。

嗜好に合わせた付加価値を与えた派生モデルがあっという間に増殖

また新型ノートには、ユーザーの嗜好に合わせた数多くの派生モデルが用意されたのも支持された理由のひとつだろう。

時系列で並べれば、11月のフルモデルチェンジの直後となる12月に4WDモデルを追加し、カスタムモデルの「ノート AUTECH(オーテック)」も設定した。2021年6月に上級グレードとなる「ノートオーラ」を発表。8月の発売時には「ノートオーラNISMO(ニスモ)」を追加している。さらに10月には「ノート AUTECH CROSSOVER(オーテック クロスオーバー)」を追加している。

ベーシックなノートを中心に、上質さを売るノートオーラ、スポーティなノートオーラNISMO、SUVテイストのノート AUTECH CROSSOVERと、幅広いラインナップを用意したのだ。

安価なグレードを求める層は諦めたが、その上の価格帯で、新しく幅広い層を獲得したというのが、新世代のノートであったわけだ。

低価格に頼った薄利多売の時代は終わり! 高付加価値化による新時代のコンパクトカー像を提示し、広く評価された日産 新型ノート

多彩なラインナップを展開し売れ行きを伸ばしたのも、基本がしっかり造られていたからこそ

もちろん、こうした成功のベースにあるのは、新型ノートのクルマとしての基本の出来の良さだろう。

日産独自のハイブリッド「e-POWER」は先代のモノよりも、明らかに進化・洗練されており、EVのようなスムーズで痛快な走りを演出する。大きな平面モニターを使ったインパネの雰囲気も先進感を抱くことができる。先進運転支援システム「プロパイロット」の進化・熟成も新世代ノートの魅力のひとつ。コンパクトカーとしての使い勝手の良さは先代ゆずり。それに、気持ちの良い走り、先進感、安全・安心の最新の運転支援システムが加わるのだ。クルマとしての出来は、相当に優秀だ。だからこそ、ジャーナリストが選ぶ、「2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー」と「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」の2冠を獲得できたのだろう。

高収益化による着実さで手堅い成長を目指す日産

昨年(2020年)に発表された事業構造改革計画「日産NEXT」にも「過度な販売台数の拡大を狙わずに収益を確保しながら着実な成長を果たすこと」が狙いと言われている。言ってみれば、数を追わずに価格帯を高めた新世代のノートは、「日産NEXT」の計画通りの内容だったのだ。ノートの成功は、構造改革を進める日産にとっても、何よりもの朗報であったに違いない。

[筆者:鈴木 ケンイチ/撮影:茂呂 幸正・島村 栄二・日本カーオブザイヤー実行委員会・NISSAN]

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日産/ノート
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鈴木 ケンイチ
筆者鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。最近は新技術や環境関係に注目。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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