世界初、歩行者を守るエアバッグを搭載した「ボルボ V40」の仕組みを公開
ボルボは5月23日、新型ボルボV40に採用される世界初の「歩行者用エアバッグ」の仕組みについて公開した。
世界初導入となる「歩行者用エアバッグ」技術の主な要素は、7つのセンサー、高度なテクノロジー、フロントガラスに向けて瞬時に展開するエアバッグ。これらは、来春に日本発売予定の新型ボルボV40に搭載される。
仕組みは、車の正面に埋め込まれた7つのセンサーがコントロールユニットに信号を送信。車体が何らかの物体との接触を感知すると、信号が変化、コントロールユニットがその信号を評価し、感知した物体が人間の脚として認知された場合、歩行者用エアバッグが展開するというもの。
交通事故死亡者数全体のうち、歩行者事故の割合はヨーロッパで14%、アメリカで12%、中国で25%を占める。負傷者の数では更に増加。車と歩行者の事故による最も深刻な頭部外傷は、ボンネットの下にある硬いエンジンなどの部品と、フロントガラスの下縁部やAピラーへの衝突によって引き起こされる。
ボルボはそれらの点を考慮に入れて開発を進め、今年3月に行われたジュネーブモーターショーにて、「歩行者用エアバッグ」を搭載する新型ボルボV40が発表している。
ボンネットを10センチ上昇させる
ボンネットのヒンジ部分には、システム起動時にピンを引き出しボンネットパネルの背面を開放する機能が備えられている。その起動と同時にエアバッグが作動し、ガスの充填を開始。エアバッグが膨張する際にボンネットを10センチ持ち上げ、その位置を保持。
ボンネットとエンジンコンパートメント内の硬い部品の間に隙間を作ることで、ボンネットを変形させ衝撃を吸収するスペースを与え、歩行者と衝突した際に衝撃を和らげる効果を生み出す。
エアバッグは、膨らんだ状態で、ワイパー全体の収納部とフロントガラスの約3分の1、並びにAピラーの下部をカバーする。全ての連動したシステムが起動してから完全に膨らむまで、200~300分の1秒で作動。
人間の脚を模したダミーレッグでの実験
このシステムは、時速20キロから時速50キロでの走行で作動するとされている。これは歩行者が関係する事故のうち、75%が時速40キロ以下での走行時に発生しているからとのこと。エアバッグ自体は、バッグとガス発生装置によって構成される。起動時には、2000~3000分の1秒という速さでガスがバッグに充填される仕組み。
2年前の2010年、ボルボは「歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム」を発表した。適切なタイミングでのドライバーの回避行動がない場合、歩行者との速度差が時速35キロ以下であれば車両との衝突を自動で回避することができるシステム。速度差が時速35キロ以上の場合は、衝突スピードを可能な限り減速して衝突ダメージを軽減するとしている。
ボルボのシニア安全技術アドバイザーのトーマス・ブロバーグ氏は、「歩行者用エアバッグを搭載した車をお客様に提供できる事を非常に嬉しく思います。この歩行者用エアバッグの目的は、歩行者がボンネットやフロントガラス、Aピラー部分に頭を打ち付けて致命傷を負う可能性を防ぐことにあります。エアバッグには2つの機能があり、1つ目はボンネットを持ち上げスペースを生みだすこと。2つ目にフロントガラス付近の強固な部分に衝突した際の衝撃を吸収する機能です。我々は、コンピュータによるシミュレーションと人間を模した脚と頭部の模型を使いこのシステムを開発しました。多種多様な状況を想定し実験を行いました」と、述べている。
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