三菱 ランサーエボリューションIX 試乗レポート

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究極のモデルを表わすMR=ミツビシレーシング

三菱がランサーをベースにしたスポーツモデル「エボリューション=通称エボ」をはじめて発表したのは1992年10月のことだった。エンジンは2Lターボ、駆動方式は4WD。その目的は世界ラリー選手権で勝つことだった。三菱といえば、1960年代からサファリラリーやサザンクロスラリーといった過酷なラリーにワークスチームを送りこみ、優秀な成績をあげていたメーカー。そのメーカーが技術の総力を結集してスポーツモデルを開発したのだ。しかもベースが 4ドアセダンというところが、ラリーマニアの心をくすぐった。ランエボは限定生産という形式をとったが、たちまち売り切れるほどのヒット車になった。

ランエボは第一世代(92年からエボIII)、第2世代(96年エボIVらエボVIに大きく分けられる。そして、エボⅨは現行シリーズ最後のモデルになるのだ。最終型は究極のモデルを表わすMR=ミツビシレーシングの名称を与えられての登場になった。

走りの性能にお金をかけた

究極のランエボIXは、エクステリアの変更は最小限にとどめられた。それよりも走りの性能にお金をかけたのだ。それでも注意深くスタイリングをチェックすると、フロントバンパー左右下部のエアダムがわずかに下方に延長されていることに気付く。エアダム左右両側面の凹形状もすべて空気の流れを意識しての変更だ。「MR」のエムブレムはトランクリッドに赤文字で入れられた。

グレードはセダンはGTRとRS、ワゴンはGTとGT-Aになる。セダンRSは競技専用車両として用意されているので、アクセサリー類は省略される。

インテリアはレカロ社製のフロントバケットシートを装着。アルカンターラと本革を組み合わせたシートには赤いステッチが入る。さらにセンターパネルなどにはRSを除き、ピアノブラックの光沢のあるパネルが採用された。

要求されるのは、アクセルに対しての自制心

試乗したのはGSR。エンジンは280ps、40.8kg-mだが、ターボはチタンアルミ合金のタービンを採用し、コンプレッサーホイール入口径を縮小させることで、より素早いレスポンスを可能にしている。ミッションは6速MTだ。クラッチペダルは重く、踏みこんだときの反発力も強い。シフトレバーもやや重めだ。

低めのポジションのレカロシートに身を沈め、スタートする。乗り心地は当然かたい。ハネ気味で走る。高速走行では短かい上下動で常にボディが動く。エンジン音も1000回転あたりからかなりのボリュームだ。

加速は4000回転から上は、それこそ頭の血がうしろに引くような強烈な走りだ。一般のドライバーはこの加速に目がついていかないかもしれない。ハンドリングはクイックでしかも、思いどおりにコーナーを抜けることができる。4WDシステムのスーパーAYCが一般公道上での大抵の動きは制御してくれるのだ。このクルマに乗ったら、要求されるのは、アクセルに対しての自制心だ。

マニアでも後悔しない究極のエボ

実はボクはランエボは3台乗り継いでいる。エボII、III、Vだった。それ以降は、あまりにも電子制御が良くなってしまい、ドライバーのウデを上回る制御をクルマが行なってくれるような気がして、離れてしまったのだ。もちろん、仕事としては歴代のエボには乗ってきた。

そして、ついに究極のランエボが登場した。この次のエボは、ボディもひと回り大きくなり、エンジンもまったく新しいエンジンになる予定なのだ。だから14 年間に培ってきたシャーシとエンジンの技術は、ここで一旦、ストップすることになる。未知数のランエボも興味はあるが、安定感はこのMRだろう。

セダンのほかにワゴンもあるが、こちらにはGT-Aという5速AT車もラインナップしている。

次期ランサーのデビューは早くても1年半後といわれている。マニアなら究極のエボにぜひ乗っておきたい。後悔はしないはずだ。

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石川 真禧照
筆者石川 真禧照

1947年東京都生まれ。1970年日刊自動車新聞社入社。翌年同社退社後、フリーの自動車評論家となる。1982年「I.W.OFFICE」を設立し、自動車を中心としたメディア活動を開始。「自動車生活探検家」として、『GORO』『DIME』(小学館)、『HOT DOG PRESS』(講談社)、『カーセンサー』(リクルート)など多数のメディアで活躍、現在に至る。日本モータースポーツ記者会会員。日本自動車ジャーナリスト協会副会長。記事一覧を見る

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