メルセデス・ベンツの新型ピュアEV「EQC」海外試乗|自動車製造のパイオニアが作るとEVはこうなる!(2/3)

  • 筆者: 今井 優杏
  • カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
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内臓がその場に置いて行かれるほどの強烈な加速性能

しかし、ライバル勢を一気に突き放すのが最大トルクだ。765Nmと圧倒的な数字を誇り、走行モードを別段スポーツなんかに選択しなくとも、アクセルペダルを強く踏み込めば、内臓がそのままその場に置いて行かれるんじゃないか、もしくはこのまま離陸しちゃうんじゃないか、と思うほどの強烈な加速を見せる。

実に0-100km/hで5,1秒。今回はクローズドコース(その場もまさに飛行場の滑走路であったのだけど)でそれを試せたが、ちょっとキモチワルくなってしまったくらいだ。

総合出力が300kWという2つの電気モーターを前後に持つ四輪駆動システムは、NEDC値で航続距離450km以上となり、それは2018年から導入された、より実走行に近い新燃費値WLTPに換算すると約400kmあたりということになる。だが、“EVあるある”で「強烈なトルクが楽しくついアクセルを踏んでしまう」という心理をそれに加味すると、我々の実際の試乗では満充電状態から約350kmくらい、と考えたほうが良さそうだ。

質感の高さはこれぞメルセデス・ベンツ

そう、このEQC、乱暴に表現すれば“ものすごく楽しい”んである。

内燃機関に慣れてしまった我々にとって、これはすべてのEVに言えるんだけど、とにかくなにもかもが鮮烈。

ズバッと瞬発的に生まれるラグのない加速。

バッテリーセルを守るべくボディー下部はガチガチに固められ、剛性&低重心に優れたシャシーは高いロードホールディング性を生み出す。

モーターだからこそ繊細にマネジメント出来る制御のきめ細やかさ…枚挙にいとまがないが、とにかくモビリティとしてのユニークネスに溢れている。特に新型EQCに関して言えるのは「EVになってもメルセデス!」という走行品質の高さだ。

新型EQCは、GLCやCクラスシリーズなどと同じブレーメン工場で他の内燃エンジン量産車と同じラインで生産される。既存のラインで熟練された技術・メンバーが生み出すことから、その質感の高さがもたらされるというわけだ。

高級セダン並みに静かでフラットな乗り心地

ノルウェーの街自体は非常にクリーンで美しい。湖が随所に点在し、フィヨルドを巡る風光明媚な景観がどこまでも続くうえ、路肩にはゴミひとつ落ちていない。しかし、5月の今でも日陰には残雪があるなど雪国であることは間違いなく、路面自体は決してフラットではない。

整備しきれていないアスファルトの剥がれなどの凹凸も多く、試乗にはタフなコースであることは疑いようもない事実だった。

そんな中で特に感激したのはサスペンションの滑らかさ。重量級のEVはともすれば段差や路面の荒れなどに対し、ドスンと底付きするような印象を持ちかねない。

しかし、新型EQCのフィールはすでにSクラスレベルにある、と感じた。つまり圧倒的に静かでフラット、そして“高級車”・・・いやこう言ってもいい、“高級セダン並”の趣を隅々まで湛えている。

驚くべきことにフロントサスペンションは通常の機械式で、エアサスはリアのみの採用だというのだからひっくり返る。150年の長きに渡って自動車製造のパイオニアとして君臨してきたメルセデス・ベンツが電気自動車を作るとこうなる・・・なんというか、もう感激するしかなかった。

さらに言うなら、今回、国際試乗会で最初に我々が乗り込んだのが21インチ(!)の大径タイヤを装備したAMGライン。EVのため静粛性が高いこともあり、速度が上がればそれなりにコー、ゴーとパターンノイズがキャビンに侵入するものの、これほどの大径でありながらアタリ自体は非常にソフトでジェントル。さらに通常ラインナップとなる20インチを選択すれば、むろんもっともっとソフトでコンフォートだった。

ピーキーさを抑えながらワクワク感にあふれたドライブフィール

やはり運転支援系などの電子制御モノは、どうしたってEVと相性が良い。アクセルに関してもブレーキに関しても、そしてステアリングにしても、操作の抜けというかアソビというか、タイムラグというラグがまったくなく、ドライバーの操作をくまなく受け止めてくれ、伝達に活かせている。

だからといってピーキーで過敏かというと、それは真逆にある。この絶妙なバランスこそが、さすがメルセデス、とドライバーを唸らせる大きな要因になっているのだろう。

単純にドライブが楽しい、そしてこんなに重いのに挙動自体は軽やかでクイック。クルマ好きを納得させるワクワク感に溢れている。

ワンペダルドライブでは回生の度合いを選択可能

そして、BMW i3や日産 リーフにもあるような「ワンペダルドライブ」、つまりアクセルペダルひとつで加減速が出来るモードも用意されていた。

EQCにはパドルシフトが備えられているが、左手のシフトダウン側を一度引っ張れば「D−」、2回引っ張れば「D− −」となり、回生パーセンテージが上がる。

一般道で乗るには「D−」で充分で、この回生のさせかたも同乗者に気づかれないくらいに紳士的だ。「D− −」になればさらに過激になり、アクセルペダルをオフにしただけで、乗員の頭がぐっと前に出てしまうくらいの減速Gを発生させる。

通常では「D」になっており、これはごく普通のクルマと同じ。さらに右手側のシフトアップ側を引っ張ると「D+」となり、いわゆるコースティングモードでクルマを前に走らせる。

日本未導入の“Dオートモード”

試乗車には、まだ日本には導入されないさらに面白いモードが備えられていた。

「Dオート」というモードを選択し、走行モードを「スポーツ」や「エコ」「コンフォート」に合わせるのと同じ操作で「ダイナミックレンジ」を選択すると、ナビゲーション情報を読み取りってアクセルペダルに電気的な反力が加わる。そして、目的地まで最適な踏み込み量を知らせてくれるアクセルポイントが自動的に設定される、というもの。

むろん速度標識などとも連動していて、70km規制道路であれば、手応え(というか踏み応え)のあるポイントまで踏めば自動的に速度も遵守出来るのだ。つまりドライバーの免許にも電費にも有効というわけ。アップデートも迅速だろうから、きっと近い将来、日本導入モデルにも対応していくことを期待したい。

>>最新のシステムでドライバーをサポート[次ページへ続く]

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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