マツダの「ディーゼル」、独自路線で業界の非常識を常識に変えた(2/2)
- 筆者: 清水 和夫
ディーゼル不正問題は、人為的問題でディーゼルが悪いのではない
今回の騒動は違法なソフトウェアを使った人為的な問題であり、ディーゼルが悪いのではない。むしろディーゼルにはガソリンエンジンにはない、ディーゼルならではの魅力がある。
今回のディーゼル問題を機に技術進化を止めてしまうと、将来のガソリンエンジンも怪しくなる。ガソリンエンジンには三元触媒という強い味方が存在するが、この触媒が機能するのは理論空燃比(1対14.7)までだ。それ以上薄くなるとNOxは処理できなくなる。このようにディーゼルのクリーン化技術は未来のガソリンエンジンに役立つのだ。
ところで、マツダのスカイアクティブはエンジンだけでなく、トランスミッションやシャシー、パッケージデザインなどの技術にも貫かれるコンセプトだ。
初めにスカイアクティブが導入されたのはデミオだが、エンジンだけの採用で、いうなれば“セミスカイ”だった。スカイアクティブのすべてを盛り込んだ“フルスカイ”はSUV「CX-5」が第一号だ。
CX-5のような車格のディーゼルモデルは四駆を組み合わせてこそ真価を発揮する。特にアウトドア好きにはオススメだ。
車を買い替えただけでライフスタイルが一変
鎌倉に住んでいる妻の友人は4WDのミニバンを所有し、愛犬2頭とともに家族4人で箱根あたりまでドライブを楽しんでいた。遠出は苦手で、行動範囲は100kmくらいだった。
ところがCX-5のディーゼル4WDに出合い、長距離ドライブの楽しさに目覚めてしまった。広島までドライブしたり、東北の被災地を訪問したり、行動範囲が一気に広がったのである。
ディーゼルなら長距離運転も疲れないし、燃料代も安い。車を買い替えただけで、そのご家族のライフスタイルは一変したのである。
もちろん、ディーゼルが不向きな例もある。ご主人がディーゼル車購入を決断したのだが、普段は奥さんが近所に買い物に行く程度。
ディーゼルの強みを発揮できる使い方がなかなかできなかったためにPM(粒子状物質)がたまり、車内に異臭がするようになった。ときどき高速道路でパージすれば解消できるのだが、街乗り中心の奥さんのライフスタイルには合わなかった。
結局、そのご家族はディーゼルを手放したそうだ。
値引きや装備だけで車を決めるのではなく、自分のライフスタイルを見つめ直し、どんなパワートレーンや駆動方式が適しているのか、じっくりと考えて選んでほしい。
[Text:清水和夫]
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