マツダのクルマ造りは高齢ドライバーの事故防止にも有効!?(1/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
マツダが考える安全で楽しいクルマ社会
最近は高齢のドライバーによる交通事故が頻繁に報道されているが、警察庁がまとめた交通事故統計によると、65歳以上の高齢者を含めて交通事故の死者数は減少傾向にある。1970年の1万6765人をピークに減少を続け、2016年は3904人であった。今は1970年の23%で、大幅に減っている。
ただし65~69歳の高齢ドライバーの死者数に限ると、2014年から増加傾向だ。高齢者が当事者になった事故が増えているのは、過剰に扱われているためではない。しかも今後は、高齢ドライバーの事故がさらに増える可能性が高い。
そうなる理由は、第一次ベビーブームで1947年~1949年頃に誕生した「団塊の世代」にある。人口が多く、なおかつ運転免許の保有率も高い。この世代は日本の乗用車の保有台数が時期に急増した1968年前後に成人になったからだ。
1966年にはトヨタ カローラと日産 サニーの初代モデルが発売され、1968年にはトヨタ コロナマークIIや日産 ローレルが登場。1969年になると日産 スカイライン2000GT-R、いすず ベレット1600GT-R、1970年にはトヨタ セリカ、三菱 ギャランGTOも投入され、短期間で商品力の優れた日本車が急増した。この時期に20歳前後になれば、新車の購入は無理でも、せめて運転免許は欲しいと考えるだろう。
つまり運転免許を当たり前に所有するようになった最初の人達が「団塊の世代」だ。この世代が今では70歳を迎えようとしている。
日本が経験したことのない「高齢ドライバー時代」
運転免許統計を見ても、2016年末の時点で、65~69歳は運転免許保有者全体の9.6%を占める。それより高齢のユーザーを含めた65歳以上であれば21.5%だ。また60~64歳は8.3%、55~59歳は8.2%と続くので、今後は運転免許を持った高齢者が増える。それは、日本が経験したことのない「高齢ドライバー時代」を迎えるということだ。
そのために運転免許の返納が奨励される傾向も見られるようになった。「事故の加害者になる前に運転をやめる」というドライバーの判断は尊重すべきだが、自動車業界としては情けない話だろう。ユーザーの体力が下がり、いよいよ自動車の利便性、快適性が発揮される時になって、「運転をやめます」と言わせてしまうのだ。これでは高齢ドライバーに申し訳ができない。
自動運転になれば解決できる課題だが、市街地も含めた完全な自動運転が実現するのは遠い将来だ。当分の間は安全装備と、この機能を応用した運転支援の進化が続く。そこに高齢者への対応も組み込み、なるべく長期間にわたり、安全に自動車を使っていただきたい。
以上のような事情も踏まえて自動車メーカーは安全対策に取り組むが、ごく当たり前の基本に忠実なクルマ造りが、事故防止に役立つことも多い。その典型的な例が、マツダの安全取材会で明らかになった。
そこで空間効率では不利になるが、前輪を前に押し出し、なおかつペダルとドライバーは後ろ寄りに配置して、ペダルを右側に寄せるようにした。
例えば現行マツダ デミオは、先代型に比べるとペダルが20mm右側にあり、アクセルペダルは踵を支点に操作しやすいオルガンタイプとした。
この考え方は、スカイアクティブ技術をフルに使う先代マツダ CX-5以降のマツダ車(OEM車を除く)「新世代商品群」では共通化され、アクセルペダルの左端とブレーキペダルの右端の間隔も、おおむね70mmで統一された。コンパクトなデミオからLサイズのマツダ CX-5まで、ドライバー/ハンドル/ペダルが直線的に並ぶ配置と運転姿勢は基本的に共通だ。
そして旧型はペダルが新型よりも左側に装着されるから、上半身を後ろに向けると、体の捩れ方がさらに大きくなる。新型はペダルの踏み換えも含めて操作全体にメリハリがあり、足の動きを抑制された状態では、誤操作の防止効果が高いと感じた。
しかしこれを技術の進歩と考えるのは早計だ。後輪駆動が中心だった時代には、ペダルが左寄りに装着されることはなかった。本来であれば、前輪駆動化する時点でペダル配置に注意を払うべきだったが、それを怠ったことで操作ミスを誘発しやすいペダル配置ができあがった。
ペダルの誤操作減少と同様に、後方視界の向上も切望
AT車の普及も一因だ。マニュアルトランスミッション(MT)車であれば、原因を問わず、ドライバーは異常を感じると即座に左足でクラッチペダルを踏んで駆動力の伝達をカットする。ペダルの操作ミスを防ぐためにマニュアルトランスミッション(MT)車に乗れとはいわないが、ATが原因のひとつになっていることは間違いない。1980年代にAT車が普及する段階でも、急発進事故が社会問題になった。
同様に近年の自動車では、日本車、輸入車を問わず後方の視界が悪化している。マツダがスカイアクティブ技術とセットで導入した「魂動デザイン」も、サイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げるボディ形状によって後方が見にくい。今回のテストでは後退時の操作性を比べる目的で、後ろを振り返りながらペダルを操作したが、ほとんど何も見えなかった。
今と昔の自動車を比べると、全般的には安全性が向上して交通事故の死者数も減ったが、危険性を高めた機能もあり、その代表がペダル配置と視界だ。マツダは悪化したペダル配置を元に戻して誤操作も減らしたのだから、視界も向上させて欲しい。
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