ハイパフォーマンス4WD車 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
洗練されたルックスと進化した電子制御
特徴的な“逆スラントノーズ”に始まるフロントマスクは、空力的にはあまり好ましくないはずだが、三菱は風洞実験をして空力の最適化をしているという。視覚的なインパクトは大きい。さらに、エアアウトレットや大型リアスポイラー、リアディフューザーなど、専用の空力付加物が備わる。従来のランエボに比べて洗練されたデザインは、いささか万人向けとなったように思えるのだが。
パワートレインも一新。「4B11」の型式名のエンジンに、2ペダルの6速自動MT「ツインクラッチSST」を組み合わせる。Hパターンの6速MTの設定はない。4B11は、従来のエボⅨMRの4G63比でピークパワー値こそ同じだが、最大トルクが向上した。実際には車重が増加し、フラットなトルク特性となったこともあり、十分に速いものの、エボ特有の盛り上がり感はやや薄れた。
SSTは、オートモードでは、ATにかなり近い感覚で運転でき、後述するVWのDSGに比べてもゼロスタートはスムーズといえる仕上がりを見せる。シーケンシャル式のシフトフィールは小気味よく、ステアリングホイールにパドルも付く。ただし、シフトダウンのレスポンスは非常に素早いのだが、現状ではシフトアップはもう一歩という印象である。
Dレンジからシフトノブを手前に倒すとホールドモードになり、またDレンジのままでもパドル操作によりマニュアルモードに変わり、自動的にブリッピングして低いギアに落とすことができる。右側の「+/OFF」のパドルを操作するまでは、そのギアがホールドされるという、マニュアルシフトを意識したような設定になっている。オートモードでは3つのモードが選択でき、「S-Sport」はその名の通りハードなスポーツ走行にも対応する。
独自のAYC/ACDには、従来のセンサーに加え、新たにヨーレイト、ブレーキ油圧センサー、エンジントルクや回転数などの情報が追加され、より緻密な制御が可能となった。また、スポーツABSに加えてASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)が追加された。これらを「S-AWC」の思想のもとに統合制御し、エボXの操縦性が仕上げられている。
エンジン出力と4輪のブレーキ力を個別に制御することで、いわばタイヤのグリップ力の物理的限界を高めるかのような、強制的にクルマを曲げるためのコントロールを行なう。ステアリング系の剛性感も素晴らしい。また、従来いささかトリッキーと感じられた挙動がリニアになり、よりドライバーの意図どおりにクルマを動かせるようになったことも特筆すべきことだと思う。
基本シャシー性能を磨き上げた乗り味
ハッチバックに生まれ変わったインプレッサをベースとするWRX STIが、少し遅れて追加設定された。非常にグラマラスに見えるワイドボディは、エッジの形状など細部までこだわり、4本出しのマフラーを与えるなど、全身でアグレッシブなイメージを演出している。欧州市場の傾向に加え、ラリーをはじめモータースポーツでの戦闘力を考えると、ハッチバックのほうが有利という判断もあったとのことで、その点ではWRX STIこそハッチバック化の恩恵を受ける本命のモデルといえるかもしれない。
また、リアサスペンションが従来のストラット式からダブルウィッシュボーン式に変更されたことも大きい。全体として、ドライブフィールは洗練され、確実に良い方向に進化した。大幅に見直されたEJ20エンジンは、2Lクラス世界最強レベルの308psを発生する。また、レガシィにも採用されたSIドライブが与えられ、STIながら燃費走行をも視野に入れている。
DCCDは、オートモードの中に3段階の+/-のスイッチが備わった。これによりスポーツ走行時にはハンドリングがわかりやすく変化する。いよいよインプレッサも電子制御化が進んできたわけだが、このクルマの進化の方向性として歓迎すべきであり、より積極的に使えるDCCDになったと思う。もともと完成度の高い6速MTは、さらに洗練された。シフトフィールに非常に剛性感があり、ストローク量も的確で、国産車のMTとして最高レベルの完成度だと思う。
ハンドリングについては、シンメトリーAWDというクルマ自体の素性のよさと裏腹に、従来のインプレッサはクセのある操縦性を示した。しかし、新型は非常に洗練された。ダブルウィッシュボーン化しつつ従来を超えるストローク量を確保したリアサスペンションにより、路面追従性が向上。ホイールベースやトレッドが広がり、サスペンションジオメトリーを見直すなどして、乗り心地を快適に確保しつつ、高いスタビリティを得た。
足まわりが不要に固くなっていないし、アンダーステアが軽減されている。デフの制御の進化もあるが、基本シャシー性能が大きく進化したことで、あまり無理をせずに前述の乗り味を実現できたのだろう。
V6エンジン+DSGのもたらす独特の味わい
2008年モデルイヤーにおいて、変わったのはアルミホイールのデザイン。また、ブルーにペイントされ、容量アップしたブレーキキャリパーが与えられた。フロントグリルにクロームを多用して、ゴルフの他モデルに対してキャラクターを立たせているのがR32のマスクの特徴。リアではセンター出しデュアルテールマフラーが印象的だ。
3.2Lの狭角V6エンジンを搭載しているのがR32の最大の特徴であり、V6エンジンをこのボディに積むということ自体が、このクルマの大きな個性になっている。実際に得られるパフォーマンスとしても、3.2L V6エンジンがもたらす余裕やサウンドなど、「V6」が生む独特の味わいこそ、このクルマの大きな魅力だろう。
3.2Lの狭角V6エンジンは、V6としては独特の響きを持つ。吹け上がり方は、実用域を重視しつつ、中速域でのパンチをきかせたような味付け。2500rpmあたりからサウンドなど性格が変わってくるような印象で、レッドゾーンの6500回転まで、あっという間に吹き上がる。
フットワークの印象は、がっしりとしたボディに、足まわりだけ動きながら路面を捉えている印象の、引き締まった味付け。そして、優れた高速スタビリティに感心する。それを重視してセッティングしたというよりも、結果的にこうなったという印象だ。ランエボやインプSTIほどタイヤのパフォーマンスなどもそれほどシビアに突き詰めていないようだが、あまり無理せず、どっしりとしたスタビリティを実現している。高速走行時のライントレース性の高さは、他車がなかなか真似できない領域までののぼりつめているように思う。ステアリングの操舵力は、市街地走行ではかなり軽めだが、高速で走ると程よくどっしりとした重さとなる。
DSGは、MTと同等にスリップもなく、MTをしのぐ素早さでシフトチェンジが可能で、エンジン性能をダイレクトに味わえる。ただし、市街地走行に関しては、ゼロスタートではあまりスムーズではない面も少なからずある。適度にクリープもあり、平坦地では扱いやすいが、少しでも傾斜した場所では、途端に扱いにくさを感じるのは否めない。特に後退時がそうである。
パドルシフトは、セレクターをDレンジに入れたままでもシフトチェンジが可能で、一時的にマニュアルモードとなる。そして、アクセルペダル等、何も操作しなければ、約8秒ギアをホールドし、自動的にDレンジに復帰する設定となっている。
デザイン・スペックの総評
メディアはランエボとインプSTIとの対決を煽りがちだが、開発陣の話を聞くと、ライバルとの関係よりも、自身をより磨くことを最優先している印象のほうが強い。お互い出発点はまったく別のところにあるにもかかわらず、結果的に似たような速さを持ち、ドライブフィールも似たような印象となってきたところは興味深い。ランエボのSSTと、ゴルフのDSGは、やっぱりどうしてもゼロスタートや駐車場出し入れなどにおいて、ATのようなスムーズさには欠けるが、高性能をイージードライブで楽しめるという点では非常に有効なアイテム。これのおかげで、ユーザー間口が広がることだろう。
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