GT-R 2015年モデル/RC F/M4を徹底比較 ~スーパースポーツカーの頂上決戦!~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂 幸正
ツインターボが生み出す高い動力性能に適した4WDを搭載
日産 GT-Rは、長年にわたってスカイラインをベースに開発されたが、2007年に登場した現行型(R35型)は違う。エンジンからプラットフォームまで、スカイラインとはまったく異なるクルマに発展した。
とはいえ、後席を備えた4シータースポーツという位置付けは継承している。今回取り上げたレクサス RC FやBMW M4と違って、ベースになるクーペはないが、乗車定員が4名の実用的なボディを持つ。このあたりは2シーターのフェアレディZとの違いでもあるだろう。
エンジンはV型6気筒の3.8リッターで、ツインターボを装着した。最高出力は550馬力(6,400回転)、最大トルクは64.5kg-m(3,200~5,800回転)に達し、今回取り上げた3車種の中では動力性能が最も高い。
駆動方式も、後輪駆動を採用するほかの2車種とは異なり、ボディの後部にトランスミッションを配置するトランスアクスル方式の4WDだ。重量配分は優れているが、機能は複雑で、長いプロペラシャフトが2本備わる。エンジンの出力を太いプロペラシャフトで後部のトランスミッションに伝え、前輪については、そこから改めてフロントデフに駆動力を伝える仕組みだ。
GT-Rの最大トルクは、一般的な3リッターエンジンの2台分に相当する。これだけのトルクを持つエンジンと、優れた走行安定性を両立させるには、4輪駆動の採用は必然だろう。RC FやM4についても、駆動力を考えると4輪駆動の方がバランスが良いと思う。
ちなみにメルセデス・ベンツ SL65AMGなどは、今でも最大トルクが102kg-mに達するエンジンに、後輪駆動を組み合わせる。出力が過剰で、トラクションコントロールがなければ成立しないクルマだ。こういったクルマにくらべて、GT-Rは理屈に合っている。
V型8気筒エンジンを搭載した今では貴重なスーパースポーツ
レクサス RC Fはクーペの「RC」のボディに、V型8気筒の5リッターエンジンを搭載したスポーツモデル。先代ISをベースにしたIS FがRC Fに置き換わった。5リッターエンジンは、レクサス LS600hに使われているタイプと基本は同じで、ハイブリッドを持たないノーマルエンジンとしている。
ミドルサイズクーペに大排気量エンジンを搭載する手法は、高性能車を開発する上ではオーソドックスだ。ターボやスーパーチャージャーを装着した場合に比べて、動力性能の高まり方が素直。直線的に速度が上昇するから、ドライバーも運転する楽しさを味わいやすい。
その代わり、大排気量のV8エンジンは重量増加が大きく、燃費でも不利になる。特にベースとなったレクサス RC 350は1,690kgと重いため、RC FはV8エンジンと装備を充実させたことで1,790kgに達した。燃料の消費量も多く、JC08モード燃費は8.2km/L。GT-Rの8.7km/L、M4の12.2km/Lに見劣りする。
つまりレクサス RC Fの特徴は、良くも悪くもV8エンジンの搭載だ。かつてBMW M3がV8を搭載し、今は直列6気筒3リッターのターボに変わったことを考えれば、RC Fの考え方は古いように思える。
しかし世の中の高性能エンジンが片っ端からターボに切り替わる現状に不満を持つユーザーは、重くて燃費が悪くても、V8エンジンに魅力を感じるだろう。
そしてRC Fは後輪駆動車で、GT-Rに比べるとメカニズムは平凡だ。そこに日本車で1,000万円近い価格を付けるとなれば、V8エンジンでないと成り立たない。
逆にいえば、今の常識でRC Fを開発すると、エンジンはV6の3.5Lターボになる。車両重量を1,700kg以下に抑え、価格は780万円前後だろう。このような常識に沿わない古典的なスポーツカー造りに、RC Fの楽しさがある。
高出力のターボを装着しながら燃費性能も優れている
BMWの4シリーズクーペをベースに開発された高性能モデルがM4だ。先代型のM3クーペ&セダンは、V型8気筒の4リッターエンジンを搭載したが、現行型は直列6気筒3リッターのツインターボに変更されている。
先代型のV8エンジンは、吹き上がりが超絶的に滑らかだった。現行型で直列6気筒の3リッターターボになったのは残念な気もするが、JC08モード燃費を見れば納得できる。先代型の7速M・DCT装着車は9.3km/Lだったが、現行型は12.2km/L。燃費数値は132%も向上した。
そして今回取り上げたライバルの日本車は、前述の通りRC Fが8.2km/L、GT-Rが8.7km/Lだ。JC08モード燃費は、日本特有の偏屈な基準だが、M4はそこで圧勝している。ライバルの日本車に装着されないアイドリングストップも備わり、燃費対策をしっかりと行った。
日本車の場合、アイドリングストップはエコカー減税の達成手段になっている。付けても減税にならない車種には装着されないが、大排気量車ほどアイドリング時の燃料浪費も増える。本来なら、RC FやGT-Rのような高性能車にこそ必要だ。M4は3リッターのターボにダウンサイジングしたことも含め、BMWらしく整合性の取れたエコ指向のフルモデルチェンジを行った。
M4の車両重量は、7速M・DCT装着車が1,640kg。RC Fが1,790kg、GT-Rが1,750kgだから、3車種の中では最も軽い。ボディが軽ければ、動力性能、走行安定性、さらに燃費まで、クルマのさまざまな機能にメリットをもたらす。軽量であることもM4の注目点だ。
このようにM4は、高性能車でありながらバランスの良い開発を行っている。
デザイン・スペックの総評
今回取り上げた3車種は、すべて後席を備えた4シーターの高性能クーペだが、スペックを見るとそれぞれ指向性が違う。RC FはV型8気筒エンジンを搭載した後輪駆動車で、BMWに当てはめればM4の先代型となるM3クーペに相当する。燃費を含めて新鮮味に欠けるが、ターボを装着しない大排気量エンジンだから、幅広い回転域で高い動力性能を発揮する。スポーツカーというよりも、GT(グランドツーリング)カーの性格が強い。
M4はまさにRC Fのライバル車だが、現行型はV8エンジンをターボに置き換え、燃費と動力性能を両方とも向上させた。最高出力が431馬力、最大トルクが56.1kg-mで、JC08モード燃費が12.2km/Lというのは効率が高い。もちろんフルパワーを発揮させれば相応の燃料を消費するが、大人しく巡航すれば燃費を向上させられる。
そしてGT-Rは、RC FやM4のような既存のクーペの高性能版ではない。完全に独立したスーパーカーとして、走行性能を徹底的に高めた。注目されるのは4WDと組み合わせたこと。天候を問わず、駆動力を路面へ確実に伝達することが可能だ。この考え方は、1989年に復活したR32型スカイラインGT-Rの時点で確立されていた。
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