コダワリのFRミドルクラスセダン 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
すべてが一新された12代目の名車
先代V35とスタイリングのテイストが似ているのは見てのとおりだが、実車を見ると雰囲気がけっこう違って感じられる。ボディサイズは微増にとどまるが、かなり大柄なクルマに見える。キャラクターラインやランプ類も斬新な印象のもので、ボディパネルの抑揚も緻密に仕上げられている。これらによりV36のスタイリングは非常に新鮮味を感じさせる。後輪駆動を強調すべく、デザイン的な要素をリアタイヤに帰着するよう描かれている。ただし、バンパーの造形もあわせて、ややリアが重過ぎるように感じられなくもない。
クルマの素性としては、先代V35との共通性は少なく、プラットフォームもエンジンも新開発となっている。走りの面でも、V35との共通性を感じさせつつも大きく進化している。まず、ボディ剛性が非常に高くなっている。とくにフロントセクションの大幅な剛性向上が図られており、高い接地感と走りの一体感がある。ステアリング系の剛性感も高いが、反力がやや大きめで、操舵力が重い印象もあるが、積極的に走りを楽しみたいユーザーには歓迎されることだろう。
パワートレインは、従来のVQ型の進化版であり、新たに「HR」という新しい名称が付くユニットが与えられた。上級のVQ35HRでは315psを発生する。完全左右対称の吸排気システムを持つほか、内部パーツも全面的にリファインされている。レスポンスとトルク特性に優れ、低回転域から力強く、レブリミットの7500rpmまでよどみない吹け上がりを示す。非常にパワフルに感じられる。また、あえてエンジンサウンドを聞かせるような設定となっているところも、高性能をウリとする日産各車に共通する部分である。
ATにはASC(アダプティブシフトコントロール)と、「DSモード」が新設定された。シフトダウン時に空吹かしを行なうシンクロレブコントロールも付く。これらが走る楽しさを演出するための制御を行ない、かなり積極的に介入する設定となっている。とくにDSモードの制御は、走ることが本当に好きな人がチューニングしたと感じさせる仕上がりである。これらは、かつてマニュアル車に乗っていた人には大いに歓迎されるだろう。逆に、ごく普通に乗りたいユーザーにとっては、せっかくの制御の意味を理解できないことも考えられ、微妙なところかもしれない。
タイプSとタイプSPで選択可能な4WASは、フーガのリアアクティブステアと同様の機構をフロントにも応用したもの。また、フーガと異なりリアの逆位相制御を行なわなくなっている。現状では、ステアリングゲインの立ち上がりが速すぎる点や、舵角とヨーのシュアな関係に欠ける点など、洗練の余地を感じさせるものだが、走りを楽しむための装備として、今後のさらなる進化に期待したいと思う。
これまでの日本になかったクルマ
4575mmとそれほど長くない全長に対して全幅が1795mmと大きく、スッキリとしつつも微妙な膨らみを与えたボディサイドや、薄く大きく張り出したフェンダーなど、かつての国産セダンにはなかったデザインテイストを感じさせる。リアエンドを大きく持ち上げて切り落としたウェッジシェイプのボディに、キャビンを載せたようなフォルムとなっており、セダンとしてはかなり斬新なプロポーション。前進感を強く表現するサイドウインドウグラフィックに、C、Dピラーを大きく傾斜させ、それ逆にそらせてトランクにつなげ、サイドとリアの造形をマッチングさせている。非常にスタイリッシュであることに異論はないが、しいていうと、ランプ類のデザインにはもうひと工夫欲しかったところではある。
走りはスポーティな印象を強調した味付け。ロールを抑え、ピッチングやバウンシングなどの上下動も強制的に抑え込むような設定となっている。反面、乗り心地としては、タウンスピード領域ではそれなりに突き上げ感を覚える。速い入力に対してはハーシュネスも感じられ、車速を上げていったときにちょうどよくなってくる。マイナーチェンジ前はさらにスポーティな仕様となっていたのだが、現行の仕様ではいくらかマイルドになっており、不快な硬さをあまり感じさせない設定となっている。
ステアリングはセンター付近を穏やかにし、切り始めからのゲインを高めている。ステアリングとクルマの動きの一体感は高く、スポーティな感覚があるのだが、運転の不得手な人が乗ると不用意にヨーモーメントを発生しやすいというデメリットもある。
3.5Lエンジンは、非常に緻密な回転フィールで、雑味のない印象。踏み始めは飛び出し感があるが、その先はあえて大人しめとしているようで、余裕ある動力性能を、あえてひけらかさないような味付け。同じ3.5Lエンジンを積むスカイラインのほうがパワフルな感覚では上といえそうだが、上質感はISに分がありそうだ。
また、後述するマークXと比べると、全体の静粛性はかなり高い。
独特のデザインと気に障るところのない走り
従来のマークⅡの後継モデルであり、基本的には昔ながらのいわゆるアッパーミドルセダンらしさを追求したモデルである。しかし、なかなかチャレンジングなデザインテイストを各部に採り入れているところは興味深い。とくにフロントセクションは非常に個性的。ボンネットフードを球面の形状として先端を低くし、低い位置に独特の形状のヘッドライトを配している。これを、キャビンからリアセクションにかけては、従来のマークⅡの延長上である印象のオーソドックスなリアセクションと違和感なくつなげている。リアでは、バンパー下端に埋め込まれたマフラーカッターを採用するなど、これまた個性的である。さらに、Sパッケージではエアロパーツが装着され、18インチタイヤ&ホイールが標準装備され、スポーツセダンらしい雰囲気を与えている。
走りについては、マイナーチェンジで足まわりの設定が見直された。動き出しの初期の硬さ感が薄れ、AVSのチューニングも洗練されている。ノーマルでも腰砕けになることはなく、スポーツに切り替えると、ロールがよく抑えられている中で、カドが取れた印象で、乗り心地は悪く感じられない。常時スポーツでもいいぐらいである。
ステアリングもあまりクイックすぎず、ゲインの立ち上がりも穏やか。過敏なところはなにもなく、運転しやすい。それでいてスポーティな感覚もあり、ライントレース性も高いのだ。
2.5Lエンジンは、レッドゾーンは6500回転からと控えめだが、高回転域での吹け上がりの鋭さにおいて、むしろ3Lエンジンよりも好感がある。出力的にも、これで十分と思わせるものがある。静粛性については、やはり高価なモデルに比べると見劣りし、パワートレイン系から室内に侵入するノイズも、大きな不満があるほどではないが、やはり大きめではある。
結局のところ、もっとも違和感なく乗れるのはマークXだと感じられた。そして、意外なほどその実力は高いことも再確認できた。しかし、走り好きの人には物足りないところもあるだろう。
デザイン・スペックの総評
3台の特徴を一言でいうと、スカイラインはスポーツセダンとしての素性を本格的に追求したモデルで、ISは高級でスポーティなコンパクトセダン、マークXはちょっとスポーティなミドルセダンというところだろう。スカイラインの進化ぶりには目を見張るものがある。しかし、ISの実力もかなり高いし、マークXは、とりたててスポーティを謳っているわけではないが、実際にはスポーティとコンフォートが絶妙にバランスされており、その実力は侮れないものがある。積極的に走りを楽しみたい人にとっては、洗練の余地こそあるものの、スカイラインの走り味は、ライバルから飛び抜けた部分はある。
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。