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自動車評論家コラム 2010/4/30 17:15

EVタクシー普及による新しい未来のカタチ/藤島知子(2/2)

Text: 藤島 知子 Photo: オートックワン編集部
EVタクシー普及による新しい未来のカタチ/藤島知子

僅か1分、ドライブスルーのような気軽さで利用できるバッテリー交換

EVは排出ガスを一切出さない環境負荷が少ない自動車。EV元年と呼ばれた2009年には、日本では三菱のi-MiEVやスバルのプラグインステラの販売が開始され、現在官公庁や一般企業を中心にリース販売が始められています。

2010年12月には日産のリーフが市販化を予定しており、それぞれのメーカーが一般ユーザーへの普及を目指して準備を整えています。それらのEVは、どれも家庭用電源や急速充電器を用いて、電力をチャージする方式を採用しているのが特徴ですが、今回のEVタクシーが注目を集めている一番の理由は、ベタープレイスが提案する「バッテリー交換式」のEVを用いている点にあるのです。

バッテリー交換式EVタクシーは、専用のバッテリー交換ステーションにおいて、まるでファーストフード店のドライブスルーでランチを買うのと同じくらいの気軽さで利用することが可能です。

EVタクシー バッテリー交換の様子-2
EVタクシー バッテリー交換の様子-3EVタクシー バッテリー交換の様子-4

ベタープレイスのバッテリー交換ステーションは、港区・虎ノ門のオフィス街の一角にひっそりと佇んでいますが、ガソリンスタンドで鼻につくガソリンやオイルの匂いや店員さんの声、ご近所さんを意識する騒音はいっさいありません。

ステーションでは、EVタクシーが無音で専用レーンに進み、指定の停止箇所に停まると、床面から飛び出してきた作業台によってバッテリーが取り外されて、代わりにチャージされたバッテリーが装着されます。その間、わずか1分程度。ドライバーが一呼吸している間に交換作業は完了し、次なる仕事に向けて繰り出すことができるのです。

今回のベタープレイスと日本交通、経産省資源エネルギー庁によるバッテリー交換型EVタクシーの実証実験は、2010年4月末~7月末までの90日間行われるとのこと。六本木ヒルズを起点にして、日産 デュアリスをベースにした3台のEVで運行されます。

EVタクシーを日本で実験する意味合いの大きさ

ベタープレイス・ジャパン 藤井清孝代表取締役社長

「タクシーはその都市のポリシーを表す象徴的な存在」と語るのは、EVの交換型バッテリー事業の展開を推し進めている、ベタープレイス・アジア・パシフィック代表の藤井清孝氏。藤井氏によれば「自動車開発や電池の技術で先進している日本で実証実験をいち早くおこなう意味合いは大きい」のだとか。

交換式バッテリーを用いることは、チャージに掛かる時間が大幅に短縮できるほか、働くクルマとして稼働率を上げることも可能。価格が不安定なガソリンと比較してコスト管理がしやすいというメリットもあります。

また、今後ステーションが各地に点在していくようになれば、長距離走行を可能にする手段として、EVの可能性を広げてくれる画期的なものといえるでしょう。

今回のタクシーにおいては、チャージのさいに急速充電機を用いたら30分程度かかってしまうところが、バッテリー交換式だとガソリンスタンドの給油よりも短い時間でフルチャージされた動力源を手にすることができるのです。

一日に300kmもの距離を走るタクシーが、これまでどおり、時間が有効に使えることはいうまでもありません。

現在は日常的なエリアで乗る「シティ・コミューター」として受けとめられているEVですが、バッテリー残量と航続可能距離と相談しながら走らなければならないため、行動範囲に制約ができてしまうのも事実。

将来的にバッテリー交換式のEVが台頭してくることになれば、もっと自由に、もっと積極的に環境に優しいEVを選べる時代がやってくるのかもしれません。

ベタープレイスと日本交通「EVタクシー運用実証事業スタート」記者会見にて
EVタクシー フロントシートEVタクシー リアシート

あとは、こうしたクルマを一般的なユーザーが利用できるようになったときに、どのような形態でこうしたサービスを提供してくれるのかも気になるところ。おそらくその頃には、時代を先取りする新しいサービスのあり方が提案されているかも知れません。

バッテリー交換やリースにかかるコスト、バッテリーを損傷したさいにどうするのか、交換ステーションの数、車両側に交換型バッテリーを利用するための専用レイアウトが要求されるといった点からみても課題は数多く、それらを打開するためには、各メーカーや団体の協力なしには成り立ちにくいのが現状です。

しかし、こうした今回の様な実証実験が実施されることによって、EVと向き合う新しい未来の生活のカタチに一歩近づいた感じです。

EVタクシーの存在は、東京の街並みを彩るだけでなく、こうした取り組みがアジア諸国をはじめ、世界へ向けて展開されていくことで、日本独自のアイデンティティを確固たるものにしていってくれるに違いありません。

プリウスの一歩先を行くEVタクシー。期間内であれば、バッテリー交換のデモンストレーションを見学したり、利用することも可能なのだとか。みなさんもEVがある未来の世界を、ひと足早く疑似体験してみてはいかがでしょうか。

筆者: 藤島 知子
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