予選から本気バトルが始まるモータースポーツ最高峰F1の楽しみ方(1/2)
- 筆者: 山口 正己
新予選システムの状況に戸惑った各チーム
2016年F1GP開幕戦の会場、オーストラリアのメルボルンからトラムで20分という立地条件に位置するアルバート・パークのメディアセンターで、マクラーレン・ホンダがQ3に進出できるかどうか、始まった予選をドキドキしながら見つめていた。今年は、新しい予選方式が採用された。何事も、行方の見えない最初は心拍数が上昇する。3月19日、天候は肌寒い曇天だった。
最初のQ1では「よっしゃぁ!!」と声が出た。タイムアタックに出たマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソが、3番手のタイムを記録したからだ。
それに続けとジェンソン・バトンも5番手に来た。これは今年のホンダF1には期待できるかも、と思ったのだが、そこから先はテンション下がりまくりだった。
結果はマクラーレン・ホンダは12番手と13番手。昨年の覇者メルセデスが1-2番手を奪った予選は、分厚い雲に覆われた空のような後味だった。唯一の救いは、フェラーリのセバスチャン・ベッテルが、昨年大差があったメルセデスとのタイム差を大きく縮めて3番手になったことくらいだった。
マクラーレン・ホンダの当面の目標はQ3まで残ること
今年のF1の予選は、新方式を採用したがそもそもF1は独特。これはテレビ視聴率を稼ぐために、できるだけ視聴者に分かりやすい状況を創り出そうとした結果だ。今のF1予選は1時間の予選を3つ区切って行なわれ、“3回ドキドキしていただきましょう”というのが基本概念。今年はさらに90秒毎に1台また1台と台数が削られて、Q2-Q3と進んでいく。
オーストラリアGPでは、いまひとつパッとしない予選だったが、舞台を中東に移した第2戦バーレーンGPを消化した段階で、その理由がわかった。各チームのクルーが、新予選システムの状況に戸惑っていたのだ。
下位チームは2回目のアタックに向け、給油とタイヤ交換に手間取って時間切れと、2度目のアタックすらできないチームが多かったからだ。2戦目のバーレーンでは、各チームが1週間のインターバルの間に、研究し対応してきたので、現状の予選方式でも、楽しめることができた。逆に言えば、スグに対応してくるのがさすが世界のエリート集団が集まるF1である。
どこかで振り落とされないようにするために、とにかく下位チームは最初のQ1からがんばって走る必要がある。なので、現在下位に甘んじているマクラーレン・ホンダだけに注目してみれば、Q1、Q2、Q3と進む予選(Qualyfy=資格を与える=予選通過する)は、ドキドキできる。マクラーレン・ホンダの今年の当面の目標は、Q3まで残ることだ。
日本に限らず、F1ファンが減ったといっても現在でもテレビなどで観ている人は4億といわれるF1。これだけの人たちの興味を持続させるのは簡単ではない。しかし、F1は我々が下位で苦しむマクラーレン・ホンダを注目するように、世界各国の視聴者にはいろいろな嗜好や事情や状況で、いろいろな見方で楽しむ事ができる。
世界的にもテレビ視聴率やネットのアクセスを増やすためには、ある意味、小手先の操作が必要で、予選を3つに分けているのもそうした事情があるからだ。
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