トヨタ ランドクルーザープラド 試乗レポート
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:小宮岩男
伝統の走破性の高さを備える、真のワールドブランドがさらに進化して登場した。
このクルマの供給地で最も厳しい走破性が求められるのは、ヨーロッパやアフリカのラフロード――開発担当者がそう語るトヨタの最新オフローダーがランドクルーザー・プラドだ。
アメリカを軸に好調なセールスを続ける最新のSUVたちは、その多くが「乗用車化」への道を歩み続けている。けれどもプラドの場合、冒頭掲げたようなヘビーユースが行なわれる可能性から、おいそれとはそうした流行の波に乗れない事情がある。実際、今回の新型プラドでもラダーフレーム式ボディにリア・リジッドアクスルと、その主要な骨格構造はまだまだ旧態依然とした“トラック”に近い。けれども「そんなタフネスぶりを備えているからこそまた選ぶ気になる」と言われる真の国際車が、ランクルというブランドでもあるのだろう。
今回の紹介車種は『3.4TZ Gセレクション』。5ドアボディにV6エンジンを搭載したトップモデルである。
乗り味はオフローダーらしさが残るけれど、フレーム式ボディによる静粛性の高さには驚かされる。
どこかセルシオ風デザインのキャビンに乗り込む。ドア下のサイドステップとAピラー内側に儲けられたアシストグリップは、このクルマにとってはマスト・アイテムだ。こうした瞬間に、プラドのオフローダーとしての本物度の高さを実感する。ちなみに、このクルマの姉妹車がまもなくアメリカのトヨタ高級車チャンネル『レクサス』系列で販売の予定と言う。さきほどの「セルシオ風」の印象も、あながち気のせいではないのだ。
驚かされるのはその静粛性の高さ。エンジン音や風切り音も小さいが、ロードノイズの驚異的小ささが印象的だ。これは、間違いなくフレーム式のボディを採用することのメリットだろう。以前クラウンがフレーム式を廃止した際、「ロードノイズの遮断に苦労をした」と耳にしたことを思い出す…。
フットワークのテイストは、やはり“乗用車”と同じというわけには行かない。微舵操作に対する応答性がやや緩慢だし、路面凹凸を拾った後の振動の減衰にも時間がかかる印象だ。ちなみに、このあたりは“TEMS”のスイッチを操作しても、さほど大きく印象が変わる感はなかった。
高度な登降坂制御を行なう“アクティブTRC”により、安心かつ気軽な走破性を実現した。
ボディ骨格の基本的な作りを自慢するだけあって、プラドのオフロード走破性はやはり凄い。「主にオンロードでの回頭性の良さを狙った」というフロント40%、リア60%の前後不等配分を行なうセンターデフは、トルセン式ゆえの駆動力伝達レスポンスの良さもひとつの特徴だ。
試乗車のグレードには、これも今回のプラドから新設定という“アクティブTRC”が標準装備される。4輪独立の自動ブレーキング・メカによってアクセル ON時の空転を制御してトラクション能力を高めると共に、低ミューの急な降坂路でもブレーキペダルに触れることなく5~7km/hという微低速で安全な走行を可能にするというディバイスがこれだ。同様のシステムをすでに採用している海外製オフローダーも存在をするが、確かにプラドの場合にも本来ならば熟練を要するシーンを、極めてイージーかつ安心して走破できることを確認できた。
本格派4WDの頂点に相応しいスペックが魅力の、ランクルファミリーの一員。
冒頭にも述べたように、プラドは日本以外の地域も強く意識をした国際車だ。率直なところ、そんな地域への適合性をも考えたこのクルマが備えるオフローダーとしての性能は、ほとんどの日本のユーザーにとってはオーバースペックで活用の場などまず見当たらないものに違いない。
けれども、そうした“過剰性”がまた魅力と映るのも事実であろう。トヨタもそうした記号性が重要であることは認識をしているようで、「プラドがランクルの一員である限り、4WDメカはフルタイム方式でなければならないし、増してや2WD仕様の設定は考えられない」と述べる。新型プラドは、“ランクル伝説” に新たなページを加えるために生まれてきた1台なのだ。
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