ミニバンも顔負けの広さで人気急上昇!背の高いコンパクトカーの時代がやってきた(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
全長は4m以下だがミニバン並みに背が高く左右非対称の丸みのあるボディスタイルも特徴だ
先代型のポルテは左側にスライドドア、右側にスイングドアを備える3ドアハッチバックだった。それが現行型では、左側は先代型と同じく1枚のスライドドアだが、右側には前後2枚のスイングドアを備える。左右非対称のボディだ。
ボディサイズは全長が3995mmで全幅は1695mmの5ナンバーサイズ。全長を4m以下に抑えて、取りまわし性に配慮している。
注目すべきは全高で、2WDが1690mm、4WDは1720mmと背が高い。フリードの全高が1715mmだからミニバン並みだ。全長を400mmほど伸ばせば、ミニバンにも発展できそうな空間効率になる。フロントウインドーの位置も前寄りで、車内の広さを強調するデザインとなった。
基本的には水平基調だが、ボディの各部に丸みを付けたことが特徴。左側面のリアピラー(天井を支える柱)にも丸みがある。左側のデザインは個性的だ。
一方、右側は2枚のスイングドアとあって、見栄えはオーソドックス。左右で外観の見栄えがかなり違う。
ポルテは前述のように1.3リッターエンジンを搭載した1.3X(155万円)を試乗する。最高出力は95馬力(6000回転)、最大トルクは12.3kg-m(4000回転)だ。
ポルテとスペイドの場合、車両重量とのバランスから、1.3リッターエンジンは燃費性能で不利。JC08モード燃費は1.5リッターモデルよりも0.6km/L悪化する。そこでアイドリングストップを標準装着し、JC08モード燃費を1.2km/L(約7%)を向上させ、平成27年度燃費基準を達成。50%のエコカー減税の対象車に該当させた。
基本的にはポルテと同じクルマながらフロントマスクの変更で男性にも受ける精悍な雰囲気
スペイドは基本的にはポルテと同じクルマ。先代ポルテはトヨタ/トヨペット店の取り扱い車種だったが、ネッツ店が売っていたラウムを廃止したこともあり、ネッツ/カローラ店も新たに姉妹車のスペイドを扱う。
プリウスやアクアは全店が扱うが、ポルテは姉妹車のスペイドを設けた。別の車種にして拡販を図る目的のほか、同じ車種を売りたくないディーラーの思惑も絡む。全国に展開する店舗数は、ネッツ店が約1600店舗、カローラ店が約1300店舗。対するトヨタ店とトヨペット店は各1000店舗前後だ。ポルテをネッツ店とカローラ店が扱えば、先代型から売ってきたトヨタ店とトヨペット店が不利になりかねない。実際、現行型から開始されたプリウスの全店扱いでは、トヨタ店とトヨペット店から不満の声が聞かれ、対応を図った面もあるだろう。
ポルテはフロントマスクに大型のマルチリフレクター式ヘッドランプを装着し、従来型と同様の柔和なデザイン。対するスペイドは、プロジェクター式のヘッドランプを採用して精悍なイメージだ。テールランプの形状も異なり、スペイドはクリアレンズを備える。デザインコンセプトは、ポルテの「リラックスクリーン」に対して、スペイドは「クールメカニカル」となる。
スペイドの試乗車は、1.5リッターエンジンを搭載する最上級の1.5G(174万円)。2WDモデルの最高出力は109馬力(6000回転)、最大トルクは13.9kg-m(4800回転)だ。1.3リッターに対して14馬力/1.6kg-mの上乗せになる。
JC08モード燃費は1.3リッターよりも優れ、ノーマル状態でも19km/Lで50%の減税対象。アイドリングストップを装着すれば20.6km/Lになり、減税率を75%に向上できる。
全長と全幅をコンパクトに抑えながら天井を思い切り高めてミニバンの雰囲気を感じさせる
ソリオは1.2リッターエンジンを搭載する背の高いコンパクトカー。全長は3710mm、ホイールベースは2450mmに収まり、ミラージュと同じ数値になる。全幅は1620mmだから、国産コンパクトカーでは最も幅が狭い。ポルテとスペイドに比べると、285mm短く、75mm狭い。
その一方で、全高は1765mmに達し、ポルテとスペイドを75mm上まわる。
要は車幅が狭く、全長も短めで、背は高い。リア側のドアは左右ともにスライド式で、ドアパネルやスライドレールはパレットと共通化した。そのために外観は軽自動車風に見えてしまうが、プラットフォームの造りはまったく異なる。先代ソリオと違って、軽自動車の拡幅版ではない。
「バンディット」は、ソリオの上級シリーズになる。最も大きく異なるのはディスチャージヘッドランプを備えたフロントマスクで、全幅をワイドに見せている。ソリオの「軽自動車風味」がバンディットでは巧みに払拭された。
2WD仕様の車両価格は168万3150円。試乗車はアイドリングストップと横滑り防止装置を加えた仕様で177万7650円だ。従来型のソリオSに比べると5万8800円の価格上昇だが、LEDポジションランプが備わり、インパネはピアノブラック仕上げ。割高なグレードではない。
1.2リッターエンジンの最高出力は91馬力(6000回転)、最大トルクは12kg-m(4800回転)。ポルテとスペイドの1.3リッターエンジンに比べるとマイナス4馬力/0.3kg-mだが、車両重量もアイドリングストップ仕様との比較で60kg軽く抑えられている。
デザイン・スペックの総評
ポルテとスペイドは、左側に開口幅が1020mmのワイドなスライドドア、右側は一般的な2枚のスイングドアという、変則的なボディを持つ。この外観が一番の特徴だ。左側はスライドドアの開口部と床の段差がなく、路面から床までの寸法は300mmと低い。ステップワゴンを90mm、ヴォクシーを150mmほど下まわり、助手席の乗降性を向上させている。
その上で、ポルテのフロントマスクは柔和なデザイン、スペイドは精悍に仕上げることで個性化を図った。ただし、ボディ全体のデザインが丸みを持つため、フロントマスクとの整合性が高いのはポルテになる。スペイドは少しアンバランスだ。
一方、ソリオバンディットはボディ全体が直線基調だから、精悍なフロントマスクとの相性も悪くない。
そして一番の特徴は、ボディサイズをミラージュやマーチと同程度に抑えながら、天井を思い切り高く設定して広い室内を備えること。リア側のドアは両側ともにスライド式とあって、最小サイズのミニバンという雰囲気。左右非対称のボディを持つポルテとスペイドは少しヒネリを利かせたが、ソリオバンディットの外観は、優れた使い勝手をストレートに表現している。
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