アウディQ2 1.0TFSI SPORT 試乗レポート|美しくユニークなアウディ最小のコンパクトSUV(1/2)
- 筆者: 藤島 知子
- カメラマン:島村栄二・オートックワン編集部
A3スポーツバック同様のMQBプラットフォームを採用
今回ご紹介する「アウディQ2」は、SUVのラインナップの末っ子として仲間入りした同社最小のSUV。アウディの車名の数字は車格を表すものだが、Q2の骨格構造はアウディ A3と同じ横置きエンジン用のMQBプラットフォームがベースとなっている。つまり、アウディの最小モデルの「A1」をSUV化したのではなく、どちらかというと「A3」のサイズに近い。
実物は想像していたよりもずっと豊かな印象を受ける。具体的には、全長4200mm×全幅1795mm×全高1530mm、ホイールベースは2595mm。A3スポーツバックよりも全長は125mm短く、全幅は10mm横幅が広く、全高は80mm背が高い。直進安定性や居住空間に影響する前後のタイヤの間隔(ホイールベース)は40mmも広くとられている。
多面体形状のボディデザインが美しく、そしてユニーク
今回試乗したのはベガスイエローの“Audi Q2 1.0 TFSI Sport”。
鮮やかなイエローは、アウディ最小の猛獣と言われた「S1」の特別色として設定されていたもの。S1には約25万円のオプションとして設定されていたが、Q2では6万円というバーゲンプライス。生産ラインと別工程で塗装していたS1とは違い、Q2は工場の生産ラインで塗れることで輸送コストが抑えられたらしい。特別色の希少性が薄れる点ではブランドの在り方に疑問が残るものの、これだけインパクトのあるカラーをSUVに重ねても、嫌味なく溶け込んでいるあたりは見事といえる。
Q2がこなれて見える理由は「ポリゴン」と呼ばれる多面体のボディにあるだろう。アウディの顔であるシングルフレームグリルは八角形で描かれており、低くワイドに構えて見せる視覚効果をもたらしている。サイドビューはガラスエリアとドアパネルの面積を1:2の黄金比で構成し、人が美しいと受けとめるバランスでまとめ上げた。
ユニークなのはドアパネル上部の六角形のキャラクターライン。固形バターの角をナイフでそぎ落としたようにエッジを効かせた面構成は、これまでのアウディにはなかった斬新な表現といえる。さらに、クォーターピラーのパネルをコーディネートすることも可能だ。こうした「ハズし」のテクニックを効かせることで、カジュアルにのりこなせるSUVのキャラクターを印象づけることに成功している。ちなみに、撮影車のパネルはシルバーで、グリルと同色のコーディネート。もちろん、ベガスイエローとの相性も抜群だ。
上級モデル譲りのフル液晶メーター“アウディ バーチャルコックピット”を搭載
ここ最近、コンパクトSUVが存在感を高めている理由は、街乗りしやすいボディサイズに居住空間と荷室の実用性を併せ持っているところにある。その点、アウディ Q2のキャビンは期待していた以上に広い空間が与えられている。
インパネに目を向けると、ダッシュボードやエアコンの吹出口、操作スイッチ類のデザインはA3のイメージが踏襲されている。アウディといえば、ブラックの内装色に白色LEDや赤のアクセントカラーを効かせてスポーツ性と先進性を表現してみせるのが特徴だが、このクラスのモデルにフル液晶メーターのアウディ バーチャルコックピットが採用されたことに心を奪われてしまう人も多いだろう。このメーターは携帯電話のLTE回線を通じてGoogle mapやGoogle earthをメーター上に映し出せるほか、車両設定、音楽再生の情報など、ドライブに必要な様々な情報を表示する。カーナビの目的地設定は音声入力に対応しているだけでなく、シフト脇に配置されたタッチパッドを指でなぞって入力することもできる。
クルマはライフステージに応じて必要なサイズが決まってしまうが、Q2のようにコンパクトクラスであっても上級車の先進的な装備が選べるのは喜ばしいこと。クルマと向き合う度に充実感が味わえる装備の数々は購入後の満足感を高めてくれそうだ。
コンパクトSUVながら十分な室内空間を確保、先進安全装備も充実
SUVといえども、シートの座面は乗り降りしやすい高さに設定されている。デザインコンシャスなモデルというと、運転時に死角がないか気になるところだが、そのあたりは上手くフォローされている。フロントガラスを支えるAピラーとドアミラーの間にはわずかな隙間が設けられていて、交差点の右左折や狭い道を走るときに、自車の周りにいる自転車や障害物の状況を直接目視で確認しやすい。座高が低い女性ドライバーの場合は、シートリフターの調整機構を使って座面を上げれば、低い位置が見えやすくなるので安心してドライブできそうだ。
安全面では上級車さながらの運転支援システムを充実させていて、衝突被害を軽減する機能や、渋滞時でも前走車との車間を維持しながら追従して走るクルーズコントロール(ACC:アダプティブクルーズコントロール)を採用するなど、ハイテク機能も用意されている。
後席は膝回りと頭上の空間が広めに確保されていて、大人の男性でもくつろげるだけのスペースを確保している。ファブリックシートの表皮はハリのある感触で、座った時のたわみが少ないしっかりとしたもの。太ももを支える座面は短めの造りだが、背もたれは高め。後席には3人座れるが、左右の2座は背中が彫り込まれた形で、カーブを通過する時に上体をしっかり支えてくれる。足元はかかと直後の壁がわずかに張り出しているが、足の置き場を工夫すれば、それほど気にならなくなるかも知れない。
ラゲッジスペースや車内の使い勝手をチェック
続いては、荷室の実用性をチェック。
荷室スペースは、日常で買い物した荷物を積むスペースとして充分な405リットルの容積を確保している。荷室フロアはボードの高さが上下2段式で調整できるようになっていて、下の段にすると小さめのキャリーバッグを立てて積み込めそうなところが実用的。また、趣味やアウトドアの荷物を積む時は、後席の背もたれが60:40の分割式で倒せるので、臨機応変に使いこなせそうだ。
このように、家族や友達とのお出かけシーンで活躍する実用性を備えたQ2だが、今ドキの若者にとって嬉しいユーティリティも備わっている。車内にはドリンクホルダーやシガーソケットが設置されているほか、AUX端子と2つのUSB端子を装備。スマホの充電や手持ちのデバイスから気軽に音楽が楽しめるので、ドライブ時の気分も盛り上がりそうだ。
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