アルファスパイダー&ウェストフィールドSE “タイムズ Service X”レンタカー 試乗レポート/嶋田智之(3/4)
- 筆者: 嶋田 智之
- カメラマン:小林岳夫
伊達男を気取れる美しい造形に収まって伝統のアルファ・ツインカムを聴く快感
お次はアルファ ロメオ スパイダーである。
スパイダーは大きく3つの世代に分けることができるが、マニア達に“シリーズ3”と呼ばれるこのモデルは、1966年から1993年にかけて生産され続けた初代スパイダーの中後期といえる仕様だ。映画『卒業』でダスティン・ホフマンが駆っていたことで知られる初期型の通称デュエットの末裔にあたるモデルで、テールエンドがボートのようにすぼまったデュエットだけの特徴的なフォルムこそ持っていないけど、逆に1980年代当時の厳しくなりつつあった安全基準に則った大型バンパーや時流に沿ったスポイラー類が、現代の基準で見るとなかなかいい雰囲気を醸し出してるように思う。
何せスタイリングデザインは、かの有名なピニンファリーナ。その古典的でありながら美しいとしか表現できない基本的なボディラインが今もって魅力的なのは誰もが認めるところなのだけど、そこに後付け感たっぷりの大型バンパーやスポイラー類が加わったことで、伊達男がクラシコのスーツを巧みに着崩したかのような絶妙な雰囲気を醸し出してるのだ。僕は初代スパイダーの中では、このシリーズ3が一番好みかも知れない。
名機アルファ・ツインカムとソレックス製ツインキャブの組み合わせ
その美しいスタイリングに組み合わせられるのは、伝統の名機といえるアルファ・ツインカム。2リッター直列4気筒DOHCの128ps。しかもソレックスのツインキャブレター仕様である。このエンジンはロングストローク型の低速から豊かなトルクを発揮する扱いやすい性格ではあるが、だからといって眠いわけではなく、充分に力強い。そして何より、アルファロメオの80年代半ば辺りまでのサウンドが素晴らしい。「ロロロロロ……」と少し巻き舌のテノールで吹け上がっていく様は、ただそれだけで自動車世界遺産級の価値があるものだと思う。
そんなだから、アルファ スパイダーに乗り込んでいい気分にならないわけがない。ダッシュボードの下側からずいぶんと斜めに生える驚くほど運動距離の長いシフトレバーを、一度2速に当てるようにしてから1速に入れる。この時代のアルファのトランスミッションはシンクロが弱く、ちょっとした儀式のようなその自衛策をとらないと、壊してしまう。
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