VW 新型ゴルフ8 海外試乗│キャリーオーバーと思うなかれ、王者は相変わらずの強さを持っていた

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ついにフォルクスワーゲン ゴルフが8代目の新型へとフルモデルチェンジをした。今回はそんな新型ゴルフ8をポルトガルのポルトで開催された国際試乗会でモータージャーナリストの河口 まなぶ氏が試してきたので早速レポートをお届けする。

 

■やっぱりすごかった新型ゴルフを画像でチェック!

目次[開く][閉じる]
  1. キャリーオーバーだから不安? いやいや「やっぱりゴルフはすごい」
  2. 新世代らしさを強く感じる部分もあるが、基本的にはどこかホッとできる部分があるエクステリア
  3. 保守的な感覚はなく、むしろ先進性に攻め込もうとする意欲が見られるインテリア
  4. 先進性はドラスティックに変化
  5. グレードは「ゴルフ」「ライフ」「スタイル」の3種類
  6. 乗り心地の良さと静粛性の高さは、ひとつ上のセグメントと比べられるかも!?
  7. 電気を主軸にしようとするきっかけとなったディーゼルが、ここまで好印象なのも何だか不思議な感覚
  8. トラベルアシストのボタンを押すと一気に滑らかなレーンアシストを行ない、気持ちよく走行してくれる
  9. 平均点が極めて高く、王者は相変わらずの強さを持っていた
  10. 最後まで読んで頂いた方には超豪華な旅館宿泊のチャンス!

キャリーオーバーだから不安? いやいや「やっぱりゴルフはすごい」

まず新型ゴルフ8は、2012年に登場した先代ゴルフ7で初めて用いたフォルクスワーゲン(VW)のアーキテクチャ「MQB」をキャリーオーバーしている。ご存知のようにMQBは、ゴルフを筆頭にパサートやティグアンなどにも派生し、さらにはポロなどでも使われてきた他、アウディでも用いられてきたVWグループならではのスケールメリットを生かした一大プラットフォームだ。それを新型ゴルフ8でも継承したわけだ。

と、こんな書くと、なんだキャリーオーバーか、と誰もが上から目線になる。しかも今年VWは、I.D.3を発表して電気自動車へのシフトを鮮明にしたばかり。今年のジュネーブショーでのVWの役員へのインタビューでも、「電動車両はI.Dの新たなプラットフォームで作る。MQBは内燃機関用で、48Vのマイルドハイブリッドまで」という趣旨の話を聞いた。しかもその話のトーン的には「MQBはこれまでの価値観のクルマで使う」感じで、なんとなく“我々VWの目指す将来の主役はI.D”という空気が流れていたので、実は我々ジャーナリストもMQBのキャリーオーバーで生まれる新型ゴルフ8は大丈夫なのか? という心配はあった。

が、ポルトについて新型ゴルフ8を走らせた瞬間に全ての不安は氷解し、我々の心配も取り越し苦労だったと感じた。そして同時に口から出た言葉は「やっぱりゴルフはすごい」というものだった。そんな新型ゴルフ8の凄さを語る前に、まずはプロファイルを見ていこう。

フォルクスワーゲン/ゴルフ
フォルクスワーゲン ゴルフカタログを見る
新車価格:
261.9万円590.9万円
中古価格:
18.9万円555.6万円

新世代らしさを強く感じる部分もあるが、基本的にはどこかホッとできる部分があるエクステリア

MQBをキャリーオーバーした新型ゴルフ8はゴルフ7よりも26mm全長が長くなり、全幅はわずかに1mmだが狭くなった。そして全高は36mm低くなっている。ここから以前よりもワイド&ローなフォルムになったことが分かる。

そしてデザインだが、以前よりも有機的な感覚を手に入れた点が新しい。キャラクターラインを精度高く出すあたりの手法は不変ながらも、ボンネットの形状等を見ていてるとどこかオーガニックな感覚がある。

また前後のライトはI.Dライトと呼ばれるインテリジェントで高機能なものを採用するため、このディテールによる新世代感も強く感じる部分。またブランドロゴも変更を受け、車名のフォントも変わった。

ただし基本的な表現手法に大変化はないので、どこかホッとできる部分もある。とはいえ先の3サイズによって、先代よりも確実にスポーティな雰囲気は増している。

保守的な感覚はなく、むしろ先進性に攻め込もうとする意欲が見られるインテリア

一方で強烈なインパクトを与えてきたのがインテリアだ。

ドアを開けた瞬間に、これまでとは明らかに異なる未来のコックピットがあるのが分かる。目の前には2枚の液晶ディスプレイがピアノブラックのパーツで繋げておかれ、中央の画面の下からコンソールまで、ほとんどスイッチが存在しない。

そしてシフトレバーはポルシェ 992のような小さなスティックタイプになっており、そこに今までのVWに感じられた保守的な感覚は一切なく、むしろ誰よりも先進性に攻め込もうとする意欲すら感じられた。

ちなみにヘッドライト関係のスイッチや、ハザード周りのドライビングモード設定その他は全てタッチ式(残念ながら押したことを振動で伝えるハプティック系ではない)になっており、極めつけはエアコンの温度調整やオーディオのボリュームがタッチかつスライドで調整する方式となっていたこと。つまり指をおいて撫でると温度の高低やボリュームの大小を調整できるのだ。

先進性はドラスティックに変化

で、少し触っていると、「果たしてこれは操作しやすいのか?」という思いが湧き上がってくる。が、その辺りも心配無用で他社のインターフェース同様に「Hello VolksWagen」と声をかけて曖昧な会話での操作も可能だ。またオプションでアマゾンのアレクサにも対応しており、これを融合して使うこともできるのだという。

しかしながら、デジタルネイティブじゃない世代にとってはどちらにせよ『?』な部分も多いかもしれない。ちなみにそうした操作によって様々なことができるし、ナビ画面やメーター周りも好きなレイアウトや色を選ぶこともできる…といった具合で、新型ゴルフ8は一気にこのクラスの中で見ても、先進的な存在に急展開を行ってきた。

さらにはコネクティビティでもネットワークサービス「VolksWagen We」を用いることで、アプリ経由で様々な情報提供や車両操作も可能とする。イメージとしては保守的なVWにも関わらずここまでドラスティックに変わったのは、やはりI.D.との関係もあるのだろう。そんなわけでこのクラスの先進性ではメルセデス・ベンツ Aクラスともためを張る存在となったわけだ。

グレードは「ゴルフ」「ライフ」「スタイル」の3種類

そんな新世代のゴルフ8は今回、グレード展開も変更された。これまではトレンドラインやハイライン、という呼び名をしてきたが、ここでもイマドキ(?)な感覚を演出したのか、最もベーシックなグレードは「ゴルフ」、そして中間グレードが「ライフ」、さらに上位グレードが「スタイル」という、やや分かりづらい展開となっている。

そうした中で今回の試乗会では最上位の「スタイル」で、2種類のパワーソースを試すことができた。ひとつは新世代のTDI、そしてもうひとつがeTSIと呼ばれる電化内燃機関だ。

まずTDIはこれまで同様に2.0Lの排気量ながら、ツインドージングと呼ぶデュアルアドブルー噴射機構を持っており、資料によればこれまでのTDIより最大で80%(!)もNoxを削減するのだという。ディーゼルでいろいろあっただけに、さすがに今回は相当に気を使ってクリーンなユニットを作ったようだ。最高出力は150ps、最大トルクは360Nmと、これまでのTDIより出力は同等ながらトルクは20Nm上乗せした。そしてこれを7速DSGと組み合わせる。一方でeTSIは、1.5Lの直噴ターボ・ガソリン・エンジンに48Vのベルト駆動式ジェネレーターを加えたマイルド・ハイブリッドだ。最高出力は150psで、最大トルクは250Nmを発生し、これを7速DSGと組み合わせている。

乗り心地の良さと静粛性の高さは、ひとつ上のセグメントと比べられるかも!?

最初に試乗したのはeTSIを搭載したモデル。走り出してすぐに冒頭で記した通り「やっぱりゴルフはすごい」との言葉が口をついた。

ファーストインプレッションは「またもやクラスの頂点をあっさりと奪取したな」というもの。乗り心地の良さ、静粛性の高さなど、他車と比べて分かりやすく、これまでの質実剛健なイメージからむしろラグジュアリーを感じるような上質さを実現した感触を伝えてきた。乗り心地はいかにも良いダンパーを使っているなという感覚で、当然ながらAクラスやマツダ3と比べて少し上を行っている。加えて静粛性に関しても、マツダ3と同等くらいには達していて、このクラスのレベルは一気に上がった感がある。なぜなら新型ゴルフ8の乗り心地の良さと静粛性の高さは、一瞬ひとつ上のDセグメントと比べられるかも? と思えるレベルだからだ。

eTSIは大きなモーターではないので、発進時や再加速時に少しのプラスαを加えてくれる。なので通常の1.5Lよりも当然力がある感じがする。けれど高回転までいくと恩恵はなくなるし、直噴ターボで頭打ち感は否めない。しかしながら普段使いではそもそも高回転まで回すことがないのに加え、7速DSGとの連携によって最大トルクの美味しいところをつないで走ってくれるため、動力性能的に大きな不満はない。プラスαを求めるとモアパワーと感じる程度だ。

電気を主軸にしようとするきっかけとなったディーゼルが、ここまで好印象なのも何だか不思議な感覚

しかしながらTDIに乗り換えると、そうしたパワートレーン面でのパンチのなさは払拭される。特に360Nmの最大トルクは力強くクルマを前に推し進めてくれるので、とても頼もしい感覚が日常域から感じられる。

もちろんこちらもディーゼルなので、全開では期待ほど回転は鋭くない。しかしながら、全体的な回転の滑らかさと静粛性の高さはこれまでのディーゼルとは比べ物にならないレベルで、もしかすると言われないとディーゼルと気付かない人もいるのではないかとも思えた。そのくらい音も振動も少ない洗練されたものになっている。そこに先のフィーリングが加わるので、このディーゼルはとても高く評価できる。それにしても、いまやI.D.3推しで電気を主軸にしようとするきっかけとなったディーゼルが、ここまで好印象なのも何だか不思議な感覚だが。

走りもデジタルな部分が増した?

それはさておきこんな具合で走りは全般的に好印象だ。気になる点といえば乗り心地も良く、ハンドリングもステアにギア比を早めたり、モデルによってはプログレッシブなものにしてるためスポーティさも生まれているのだが、走っていると以前のようなサスペンションの深いストローク感が生む心地よさはなくなったことに気づくし、ハンドリングもややダイレクト過ぎる感じがしないでもない。

乗り心地もハンドリングも悪くないが、サスペンションの深みもハンドリングの良い意味でのダルさがなくなったことは、走りもデジタルな部分が増した? ともいえなくもない。

トラベルアシストのボタンを押すと一気に滑らかなレーンアシストを行ない、気持ちよく走行してくれる

そして運転支援系に関しては今回、トラベルアシストと呼ばれる機能を盛り込んだ。

これは時速210km/hまでで、ACCとレーンアシストを使い道路をトレースする機能。欧州ではハンズオフは認可されないが、新型ゴルフ8はハンドル全周にタッチ式センサーを用いているのでステアリングに手が触れていれば機能は継続して作動する。

これが面白いのは通常のレーンアシストだけを作動させると、レーンとレーンの間を行ったり来たりする相変わらずの制御なのだが、トラベルアシストのボタンを押すと一気に滑らかなレーンアシストを行ない、気持ちよく走行してくれること。また前走車との距離の取り方なども含めて巧みになっており、この点ではAクラスにも差をつけているといえる。

平均点が極めて高く、王者は相変わらずの強さを持っていた

今回2日間で2台の新型ゴルフ8を試乗してみて、改めてVWとゴルフの凄さを実感した。やはりこのクラスのベンチマークの実力の高さはただものではないことを思い知らされた。

しかしながら同時に感じたのは、他車との差も確実に縮まりつつあることだ。例えば乗り心地は現時点でAクラスやマツダ3を凌ぐが、トヨタ カローラと比べたら同等かもしれない、とも思う。静粛性に関しては、日本のマツダ3やカローラはこの新型ゴルフ8と確実に同等といえるレベルにあるだろう。またハンドリングに関してはもはや互角で、この辺りは実際に乗り比べしないと判断が難しいだろう。さらに内外装の品質感については、マツダ3のレベルにまでは達していないともいえる。

しかしながら、それでもなおやっぱりゴルフはすごい、と思えるのは、様々な部分での評価で確実に悪い部分がないところであり、平均点が極めて高いところにある。ここは良いけどあそこはダメで…という部分が極めて少ないのだ。そして1台のクルマとしてみたときの完成度はやはりひとつ抜け出ている感がある。

しかも今回は、このクラスの中で見ても圧倒的に先進的な内容を盛り込んできた。この点ではAクラスと同等以上で、マツダ3やカローラはまたもや周回遅れにされた感がある。

そんな具合で王者は相変わらずの強さを持っていた。日本導入は来年の後半になるという。果たしてその時に、日本車は巻き返しがはかれるか? あるいはもっと強烈なプロダクトが他社から登場するだろうか? それも含めて今後が楽しみだ。

[筆者:河口 まなぶ/撮影:フォルクスワーゲン]

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河口 まなぶ
筆者河口 まなぶ

1970年生まれ。大学卒業後、出版社のアルバイトをしたのちフリーランスの自動ライターとなる。1997年に日本自動車ジャーナリスト協会会員となり、自動車専門誌への寄稿が増え、プレイステーション「グランツーリスモ」の解説も担当。現在、自動車雑誌を中心に一般誌やwebで自動車ジャーナリストとして活躍。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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