世界遺産・姫路城を擁する市街地から車でおよそ30分。中国自動車道・夢前(ゆめさき)スマートICに近い「夢乃井本館」の奥まった場所に、「夢乃井庵夕やけこやけ」はある。湯上がりの宿泊客とすれ違いながら専用の通路へ入ると、それまでとはやや異なるふわりとしたやわらかな空気と、目の前に広がる里山のパノラマが非日常を求める旅人を迎える。
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客室からの風景 夢前川のほとりから、豊かな里山の景色を一望
ウエルカムドリンクを楽しみ、レセプションでチェックインを済ませた後は、日常から離れた特別な時間。あたたかなおもてなしと、「お客さまの時間と空間を決して妨げない」ことを両立させるスタッフのサービスによって、宿泊客はみな、本来の自分に還る時間を手にする。
「夢乃井庵夕やけこやけ」は、世界中から観光客が集まる世界遺産の姫路城から距離を置き、賑やかな温泉街とも一線を画す。清らかな夢前川のほとりに佇むこの宿からは、播磨平野に広がる、農作物が綿々と育まれる豊かな田園の情景、そして播磨富士・明神山の稜線が無限の大空へとつながる様を一望できる。客室のデッキでは、季節の移ろいを映す里山と夜空にきらめく星々が、人々の心を本来の姿に誘ってくれる。
客室 全室露天風呂付き 滞在を心ゆくまで楽しめるリラックス空間
2005年に誕生した「夢乃井庵夕やけこやけ」は、客室数を17室に絞り、全室に露天風呂とベッドルームが備わっている。2名から3名での利用を想定した室内は広すぎず、狭すぎることもない心地よい空間。大切な時間をともに過ごす人との距離を縮められるだろう。1階の客室に限られるが、冬には掘りごたつが設けられる。こうした心配りも、リピーターから高い支持を得ている。里山に面したデッキには、心ゆくまで温泉を味わうことのできる露天風呂が。浴槽はヒノキや御影石づくりで、併設された室内のシャワールームから直接出られるようになっているのが嬉しい。
館内施設にも注目だ。エステではじっくり心と身体を癒すことができ、暖炉が備わった2階ロビーでは地酒の試飲も可能(16:30~19:00)。そしてぜひ訪れたいのが、心和むセルフバースタイルのラウンジ「K’s Bar」だ。無料のコーヒー・紅茶・黒豆茶や、こだわりの果実酒(有料)が楽しめるほか、チェスや書籍も用意されている。おすすめは、なんといっても懐かしのレコードたち。ロックにジャズ、クラシックなど多彩な音楽に包まれながら、「BC工房」のこだわりの家具に体を預け、薪のはぜる音に耳を傾ける―。そんな至福の時間を堪能してほしい。
温泉 星空を眺めながら、効能豊かな姫路ゆめさき川温泉を堪能
客室に設けられた露天風呂と、貸切風呂「とんぼ」「てふてふ」には、姫路ゆめさき川温泉の源泉を直接汲み上げた湯が供給されている。高い保湿効果や神経痛、肩こりなどへの効能があるとされるメタホウ酸やメタけい酸を含む泉質。部屋付きの露天風呂では時間を問わず何度も入浴できるのはもちろん、どの部屋からも高く広がる空が見渡せ、晴れた日は無数の星が彩る夜空を眺められる。星の光を妨げるものがない夢前ならではのこの景色に、誰もが魅了されてしまうはずだ。デッキに置かれたローベッドから、飽くことなく星を見上げる宿泊客も多いという。
貸切風呂「とんぼ」にはヒノキ風呂、「てふてふ」には地元の酒蔵・壺阪酒造から譲り受けた釜を利用した浴槽が設えられている。椅子やソファを配した「くつろぎスペース」が併設されており、「ここでクールダウンしながら、貸切風呂でもまた何度も入浴を楽しめた」というファンが増えているそうだ。
料理 プライバシーが守られたダイニングで、播州の味覚を堪能
夕食と朝食が提供されるのは、「ダイニング和香葉(わかば)」。宿泊客が一堂に会する場でありながら、施設内はオープン当初から余裕のあるプライベート空間が確保されている。2名利用の場合は、里山を見下ろすカウンター席、3名以上なら半個室のテーブル席で食事を楽しめる。どちらも隣席の話し声が聞こえないよう席の配置が工夫されており、新型コロナウイルス感染拡大の折にも、訪れる人に癒しの時間を提供してきた。
料理は近隣の農家から直接買い付けた新鮮な野菜や、地元産の姫路和牛、瀬戸内や山陰の海鮮など、季節ごとに内容の異なるメニューが用意されている。また地元の酒蔵5社と提携し、兵庫県を発祥の地とする酒米・山田錦から造られた日本酒も豊富にラインナップされている。食前・食後のお酒として、旬のフルーツを厨房で仕込み、数ヶ月熟成させた自家製の果実酒も喜ばれているのだとか。播州ならではの多彩な味覚をじっくり堪能してほしい。
おもてなし 「お待ちしていました」に込められたスタッフの思い
客室で宿泊客を迎えるのは、敷地内に舞い落ちた木の葉のメッセージカード。館内のいたるところに、スタッフ手書きの案内やメッセージがちりばめられているのも、夕やけこやけ独自のおもてなしだ。カフェやショップ、酒蔵など宿周辺のおすすめスポットや、当月夜空に出現する星座の早見表、館内での「幸せの羊探し」といった遊び心満載の案内も、スタッフがイラストを添えて製作している。
「お客さまは4割近くがリピーターの方です。『ゆっくりしたくなるとここへ来る』とおっしゃってくださる方々に、当館は支えられています」。マネージャーの山下さんはそう語る。リピーターには担当がつき、これまで交わした会話を振り返りながら到着を待つ。「顔なじみになったお客さまはもちろん、初めてお迎えするお客さまについても、事前にうかがった情報を含め、考え得る限りの準備を整えています」と山下さん。「お待ちしていました」と迎えてくれるのは、ゲストを思い、自ら考え、最良のおもてなしを提供してくれるスタッフたちなのだ。
「お客さまの時間を最優先にしながら、サービスはあたたかく、最大限に寄り添うことを徹底しています」と話す山下さん。滞在中の声がけはもちろん、食事処では温かい料理や冷たい料理のサーブについてもベストなタイミングに心を配る。取材の最後、こう力を込めた。「景色とサービス、お食事やお風呂といったサービスをなめらかに融合させ、お客さまがご自身らしくいられる時間を大切にしたいんです」。
キーパーソン
2002年入社。フロントやバックオフィスの仕事を一通り経験した後「夕やけこやけ」に配属され、マネージャーを務めている。
「豊かな自然に囲まれたロケーションと、スタッフの『お客様に喜んでいただきたい』という思いが私たちのホスピタリティの心髄。落ち着いた雰囲気を守りながらも、小さな改善やリニューアルを重ね、常に最高のおもてなしにアップデートしていければと思っています」と山下さん。新しいサービスや改善案が積極的に提案される、スタッフの活気あふれる宿を目指している。