トヨタ 新型ウィッシュ 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
ミニバンなのにミニバンらしからぬスポーティさ
新型ウィッシュは、エクステリアと同様、インテリアにも力を入れた。(ベーシックな1.8Aと1.8Xを除いて)インパネの中央やパワーウインドウのスイッチ部分にカーボン調の装飾を施し、シートの生地やメーターの色彩もグレードに応じて細かく分けている。
メカニズムでは、CVTを改良。Gセンサーからの情報によってブレーキングやコーナリングの判断を行い、不必要なシフトアップを控えるG・AIシフト制御付きのスポーツモードを1.8Sと2.0Zに採用した。
燃費も向上。1.8リッターモデルはJC08モード燃費が15.8km/L、10・15モードが16.6km/Lになり、2リッターモデルはそれぞれ14.4km/L・15.6km/Lだ。全車が平成27年度燃費基準を達成しているので、購入時の税額が50%、翌年度に納める自動車税が25%軽減されるエコカー減税の対象に入る。施行期間中であればエコカー補助金の交付も受けられる。
ミニバンといえば保守的なファミリーカーのイメージだが、今では冒頭で触れたように売れるジャンルが限られる。ミニバンの中で、いかに革新を図るかが重要になった。
動力性能は1.8リッターエンジンで不満はない。車両重量は1370kgだからヴォクシー&ノアに比べると200kgは軽く、CVTの高効率も奏効して相応の動力性能を発揮する。エンジンの特性も実用回転域の駆動力を高めたタイプ。ノイズは少し大きいが、違和感を抱くほどではない。
CVTをスポーツモードにシフトすると、エンジン回転が高められ、機敏な加減速が行える。不必要なシフトアップを控えるから、峠道などでの運転感覚もスムーズだ。
ウィッシュではATレバーを右に倒してMポジションに入れれば、レバーを前後に動かすことで7速の疑似変速が可能になる。1.8Sと2.0Zならステアリングホイールのパドルでも操作できる。ただし、エンジンブレーキを利かせたい時、Mポジションに入れるのは煩わしい。そこでスポーツモードを積極的に使いたいのだが、このスイッチはカーナビ画面の下側に装着されてしまっている。以前のAT車に付いていたオーバードライブのスイッチのように、ATレバーのグリップで操作できると扱いやすいところだ。
ワゴン風ミニバンという合理性
乗り心地はミニバンでは硬めの設定。もともとウィッシュはスポーティ指向のミニバンに位置付けられ、路面から細かな振動を伝えやすい。試乗車に装着されていたタイヤは16インチサイズのブリヂストン・エコピアEP25(195/60R16)。タイヤ自体はスポーツ指向ではなく、空気圧も230kPaだから若干高い程度だが、路面の荒れた市街地では少し気になる。
硬めと感じる背景には、シートの座り心地もあるだろう。ミニバンとしては硬めで、乗員の体をしっかりとサポートする。
もっとも、乗り心地が硬めな分だけ操舵に対する反応は機敏だ。操舵した時の切れが良く、ミニバンとしては車両の向きが変わりやすい。積極的に曲がっても前輪が踏ん張り、後輪の安定性も申し分ない。
トヨタは1.8~2リッターエンジンを積んだ5ナンバーボディが基本のミニバンとして、ウィッシュとヴォクシー&ノアのほかに中間的なアイシスも用意している。
車種の性格を明確にする意味もあって、ウィッシュはスポーティな乗り味となった。
もう少し柔軟な快適性と穏やかな操舵感を求めるなら、15インチタイヤを履いた1.8Xを選ぶ手もある。エアロパーツやアルミホイールも省かれ、外観はかなり大人しいが、横滑り防止装置やサイド&カーテンエアバッグは標準装着。車両価格は185万円だ。1.5リッターエンジンを搭載するホンダ フリードGジャストセレクションと同額だから、ミニバンでは安価な部類に入る。
ミニバンの売れ筋は、前述のように広い室内を備えた背の高い車種となってしまうが、3列目に同乗者を座らせたり、3列目を畳んで自転車などを積む機会は少ないユーザーも意外に多い。1年に数回、6名で移動したり荷物を積む目的でミニバンを選んでいる。
このようなニーズでは、ウィッシュのようなワゴン風のミニバンが合理的だ。機能や装備に対して価格が安く、エンジンも1.8リッターで済むから燃料消費量も抑えられる。多人数で頻繁に長距離を移動する使い方には適さないが、片道30分以内の移動なら、同乗者が不満を言うこともないだろう。
日本には数多くのミニバンが用意され、性格もそれぞれ異なる。ウィッシュも力の入ったマイナーチェンジを行ったから、選択の幅を広げると、自分の使い方と予算に合ったムダのないミニバン選びができると思う。
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