リコールはメーカーだけの責任ではない! 完成検査問題をより良くするための意識とは

リコール制度について

商品に何らかの危険が生じると考えられる場合、その商品を回収して、修理や交換を行う。クルマではこれが「リコール制度」として確立された。自動車メーカーが自主的に国土交通省へ届け出て、クルマを回収し修理を施す。この措置により、重大や故障や交通事故などに発展するのを防ぐ。

国土交通省はリコールの届け出を受けると、車両に生じた不具合情報の収集と分析、メーカーのリコール状況の調査などを行う。取り組みの仕方が不適切な時は、必要な指導や監査をすることもある。さらにメーカーが自主的にリコールを行わず、事故が発生した時は、勧告や命令をすることも可能だ。

リコールの届け出があった時は、ユーザーに通知して回収や修理を促すとともに、メーカーと国土交通省が情報を公開する。それにより安全性を高める。

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もっとも危険なのは“リコール隠し”

クルマは2~3万点の部品で成り立ち、制御も複雑だから、不具合の発生を皆無に抑えるのは難しい。そうなると安全を確保するには、不具合を迅速に発見して、危険が生じる前に回収や修理を施すことが大切になる。

最も危険なことは、不具合を発見したのに、国土交通省への届け出を行わない「リコール隠し」だ。リコールが隠されると、不具合の情報を共有できず、回収や修理も行われないからユーザーが危険な状態に陥ってしまう。

リコール隠しを防ぐのに必要な意識とは

このリコール隠しを防ぐには、「リコールを責めず寛容に対応すること」が求められる。リコールが生じたことを過剰に責めると、メーカーや担当者が萎縮して不具合を隠すことに繋がりかねない。

メーカーは極力リコールを生じさせないよう、安全に配慮した商品造りを行う。それでもなお不具合が生じた時は、もはや責められず、リコールを早急に行って危険な状態を回避する。誰もが最善の仕事をしている性善説に立ち、リコールが生じた時は淡々と対処すべきだ。

責めたくなってしまうのが“完成検査問題”

ただし数あるリコールの中には、「これは防げるでしょう」と思わず責めたくなる案件もある。

それが一連の完成検査問題だ。新車が工場で生産されると、必ず完成検査を受ける。本来なら社内で完成検査員に任命されている有資格者が完成検査の合否を判定するが、実際は無資格の人が完成検査を行ったり、検査方法に誤りがあった。

これがリコールの対象になっている。本来の完成検査を受けていないから、改善措置として、ディーラーに併設された指定整備工場などによって自動車検査員が改めて確認を行う。一般的なリコールは部品交換などの作業を伴うが、完成検査に関するリコールは確認作業だ。

完成検査問題、責めたくなるワケ

この完成検査問題に関して、責めたくなる理由は2つある。まずは一般的なリコールに見られる開発や生産行程の「過失」ではなく、資格のない人に検査をさせるなどの「不正」に基づくことだ。安全に配慮しながら生じた不具合とは意味が違う。

2つ目は完成検査問題が複数のメーカーで頻発していることだ。日産、スズキ、スバルが完成検査問題でリコールを行った。しかもひとつのメーカーが、複数回にわたり誤った完成検査をしていたこともあった。度重なる不正が生じたことになる。

リコールの責任はメーカーには限らない?

なお完成検査は「国の新規検査に代替するもの」だから、そこで生じた責任は国(国土交通省)にもおよぶ。つまりリコールの責任は、国、業界、メーカーのすべてが負うべきものだ。

基本的にリコール案件は、責めずに寛容に扱うべきだが、完成検査問題は根底にある安全を願う気持ちに背くものだった。それだけに見過ごせない課題になっている。

完成検査の方法が昔から変わらず、やりにくいなら、現代に合った方法に変更する必要もある。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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