トヨタ 新型プリウスの“実燃費”を先代プリウス・アクアと比較してみた(6/6)

トヨタ 新型プリウスの“実燃費”を先代プリウス・アクアと比較してみた
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トヨタ 新型プリウス 燃費レポート/総評

トヨタプリウス(4代目モデル) 総合実燃費/28.8km/L

トヨタプリウス(3代目モデル、マイナーチェンジ後) 総合実燃費/26.4km/L

トヨタアクア(初期モデル) 総合実燃費/26.3km/L

まとめに入る前に2つ、補足となる情報をお伝えしたい。

総合実燃費が良好な新型プリウス、では冷間時の燃費は・・・!?

トヨタ 新型プリウス(4代目)

1つ目は、ガソリンエンジン車やハイブリッドカー、電気自動車などカテゴリに限らず、燃費を追及したクルマの課題の1つが、おおよそ外気温5度以下の気候の中での冷間時の燃費である。

冷間時にはどのクルマも燃費は悪いものだが、燃費のいいクルマほど熱効率が良いために余計な熱が出ない。そのため暖気に時間が掛かり、暖気に時間が掛かれば温度の上がった冷却水が熱源となるヒーターが効くまでの時間も長いという“燃費が良い故の課題”が産まれている。

そのため、新型プリウスには寒い時期の燃費を向上させるため、冷却水などの冷却に使う走行風が過剰な場合には、冷却水の温度をなるべく早く適温に上げるためにグリルをシャッターで塞ぐ機構が備えられるほどである。

トヨタ プリウス 燃費テスト 冷間時の燃費は「19.7km/L」

そういったこともあり、テスト日に自宅を出た朝5時頃は気温0度から2度という冷間時の燃費を測るには絶好のコンディションだったため、エンジン始動から早朝の空いたペースの速い幹線道を10.9km走った時点での燃費を記録したところ「19.7km/L」であった。

こういった燃費を3代目プリウスを含めて計測したことがないため、筆者の感覚でしか評価するしかないのだが、この気温の中でエンジン始動から5kmほどでアイドリングストップが開始するなど(当然エアコンは25度にセットしているので、ヒーターを作動させるのに必要な温度まで冷却水の温度も上がっているということだ)、いろいろな意味で現行プリウスは冷間時の燃費も優秀な部類に入り、おそらくグリルシャッターの効果も相当にあるのではないかと思う。

新型プリウスのおススメグレードは

2つ目は、今回とは別の機会に試乗した廉価版の「E」グレード「S」グレードと「A」グレードに設定される17インチホイールなどが装着される「ツーリングセレクション」「4WD」の印象だ。

Eグレード(242万9,018円)は車重が軽いため、新型プリウス最強といえる加速感と軽快感、今回テストしたSグレードに対して常時1から1.5km程度増しの実燃費を得ているが、軽量化の副作用なのか「低級音」が見受けられ、乗り心地も悪化しているなど、人間でいえば不健康なダイエットをしているような印象である。

燃費に関しては十分すぎるほど優秀なプリウスだけに、よほど燃費にこだわる以外、約5万円高いが標準のSグレードを選ぶことを強く勧めたい。

ツーリングセレクションは、17インチタイヤを履くこともありハンドリングがシャープになるというメリットはあるものの、乗り心地がEグレードほどではないものの標準のSグレードに劣る、最小回転半径が15インチタイヤ装着車の5.1mに対し5.4mと小回りが利かなくなる、実燃費は標準のS、Aグレードの常時1から1.5km程度落ちるといったデメリットもあるため、標準のS、Aグレードの全体的なバランスの良さを考えると、筆者個人としては15万円高で得られるものは少ないと考える。

4WDはFFの同グレードかなり近い印象で、燃費の悪化もFFの同グレードに対し常時1から1.5㎞程度落ちと少なく、約20万円という差額も納得できるものなので、4WDの必要性があるユーザーなら4WDを選ぶことを勧める。

燃費は、まだ伸びそうな余地も

トヨタ 新型プリウス(4代目)

さて新型プリウスだが、プリウスは2代目、3代目からキープコンセプトであるため、「4代目プリウス“ならでは”の新しさは果たしてあるのか?」と聞かれれば、それは少ない。

しかし、3代目プリウスのユーザーであっても、Toyota Safety Sense Pの設定による予防安全性能、衝突安全性の向上だけでも乗り換える価値は大きいと断言できる。

そこへ、前述の「車としての質の向上」に加えて世界有数の「燃費の良さ」と、客観的に見ればSグレード以下にブラインドスポットモニターが付かないことと、前席、後席ともに乗降性が良くない点以外はケチの付けようがなく、「欲しいなら今すぐにでも契約を」というのが筆者の本心である。

また、燃費に関しては今回のテスト車は走行1,500~2,000kmだったが、ハイブリッドカーの場合は理由は定かでないが走行距離が増えて各部の慣らしが進めばさらに燃費が向上する傾向がある上に、新型プリウスにはまだ燃費が伸びそうな改良個所があることを考えると、恐ろしさすら覚える。

トヨタ 新型プリウス(4代目)

筆者は発売から1ヶ月の受注台数は3代目プリウスほどではないにせよ、“リーマンショックによる100年に一度の不景気、エコカー減税、新車購入補助金”といった時代背景もあり「プリウスショック」と呼ばれた3代目プリウスの登場と同じようなインパクトを、新型プリウスにも感じている。

そんなことを踏まえると今後、日本車、輸入車ともに同クラスのライバル車は新型プリウスにはない強烈な魅力を持っていないと新型プリウスに太刀打ちすることは非常に難しいと強く思う。

こういったことを考えたのも3代目プリウスが登場した時とまったく同じである。

新型プリウス唯一にして最大の難点は、この原稿を書いている2月24日現在、リチウムイオンバッテリーを使うE、A、Aツーリングセレクションで5~6ヶ月、最上級のAプレミアム系で7~8ヶ月と公表されている納期だけであるが、ツーリングセレクションを含むSグレードであれば2~3ヶ月と意外にも納期が短い。

そんな要素を踏まえると、今から新型プリウスを買うのであれば今回テストした標準のSグレードを選ぶというのが現時点でのベストチョイスとなるだろう。

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永田 恵一
筆者永田 恵一

1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスのライターとして独立した。豊富なクルマの知識を武器に、自動車メディア業界には貴重な若手世代として活躍してきたが、気付けば中堅と呼ばれる年齢に突入中。愛車はGRヤリスと86、過去には日本自動車史上最初で最後と思われるV12エンジンを搭載した先代センチュリーを所有していたことも。記事一覧を見る

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