メルセデス・ベンツ E350e（Eクラス PHV）試乗│エコは損得勘定だけでは測れない(2/2)

運転感覚は全般的に満足感が高い

車両重量は1980kgだから、ハイブリッドを装着しないE250アバンギャルドスポーツに比べて270kgほど重い。約2トンに達するから軽快感は乏しいが、メルセデス・ベンツらしく操舵に対する反応は忠実で、車両の向きが正確に変わる。峠道では比較的良く曲がり、4輪の接地感も高い。

足まわりやボディが入念に造り込まれているので、乗り心地もガッシリと重厚な印象だ。これはEクラスを含めたメルセデス・ベンツの全車に通じる特徴でもあるが、同乗者も含めて乗車感覚を上質に仕上げた。

このように運転感覚は全般的に満足感が高いが、今のEクラスはボディが大きい。全長は4950mm、全幅は1850mmだ。後輪駆動だから最小回転半径は5.4mに収まるが、取りまわし性には注意したい。

充電は200V電源で、急速充電には非対応

外観のデザインは水平基調だが、ウインドウの下端が高めだから、後方視界はあまり良くない。購入する時には縦列駐車などを試しておくと安心だ。

また充電は200V電源で行う。高速道路などに設置された急速充電器には対応していない。一充電消費電力量は6.94kWhで、1回の充電によって走れる距離も前述の20.1kmだから急速充電は不要ともいえるが、外出先で簡単に充電できれば便利だろう。

E220dに比べると、燃費も価格面でも訴求しにくいモデルに

E350eアバンギャルドスポーツの価格は811万円だ。E250アバンギャルドスポーツが788万円だから、差額は23万円に収まる（ただしE350eアバンギャルドスポーツではヘッドアップディスプレイがセットオプションだから実質的な価格差は28万円前後に拡大する）。

それでも販売店によると「E350eアバンギャルドはほとんど売れていない。E250アバンギャルドとの価格差は23万円だが、燃費数値もわずか（0.8km／L）しか違わないからだ。また2リッターのクリーンディーゼルターボを搭載するE220dアバンギャルドスポーツが割安に（価格は769万円）設定され、これは動力性能が高く、燃費もさらに良い（JC08モードは21km/Lで使用燃料も軽油だから安い）。これに比べると、E350eアバンギャルドスポーツは価格が割高で売りにくい商品になっている」と言う。

プラグインハイブリッドが売りにくいのは、プリウスPHVにも当てはまる。同じ車種にハイブリッドやクリーンディーゼルが用意されると、「価格の上乗せ分を走行コストの安さで取り戻せるか」という損得勘定が計算され、プラグインハイブリッドが不利になってしまう。エコロジーは損得勘定では割り切れないが、本格的に普及させるには、燃費をさらに向上させて低価格化も進めることが大切だ。

乗り味と航続可能距離の組み合わせが奇妙な情緒を生み出す

それでもE350eアバンギャルドスポーツのモーター走行は印象に残る。メルセデス・ベンツ Eクラスの緻密な造りと、電気自動車（EV）の滑らかさが、とても快適な走りを生み出すからだ。それが20km足らずで終わり、エンジンが始動すると、刹那的な気分を味わった。剛健なEクラスの乗り味と、余りにもはかない航続可能距離の組み合わせが、奇妙な情緒を生み出していた。

[Text：渡辺 陽一郎 Photo：茂呂 幸正]

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