メルセデス・ベンツ E350e(Eクラス PHV)試乗│エコは損得勘定だけでは測れない(1/2)

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ドイツブランドの大半が複数のプラグインハイブリッド車を揃える

日本の低燃費車の代表は、販売台数を考えると、エンジンとモーターを併用するハイブリッド(HV)だ。減速時には駆動用モーターが発電を行い、駆動用電池に回生充電する。この電気を使って走ることで、エンジンを駆動させる機会を減らして燃料を節約する仕組みだ。従来は熱として放出されていた減速エネルギーを、駆動に使えることがハイブリッドのメリットになる。そしてエンジンとモーター駆動を効率良く併用するから、燃料消費量をさらに抑えられる。

このハイブリッドに、充電機能を加えたのがプラグインハイブリッド(PHV)である。日本車で量販されているのは、トヨタ プリウスPHVと三菱 アウトランダーPHEVだけだが、輸入車では車種が圧倒的に多い。メルセデス・ベンツにはC350eやE350e、SUVのGLC350eもある。BMWは330eや530e、フォルクスワーゲン ゴルフやパサートのGTEという具合に、ドイツブランドの大半が複数のプラグインハイブリッド車をそろえる。

逆に欧州車には、日本車のような充電機能を備えない普通のハイブリッドはほとんどない。メルセデス・ベンツ Sクラスは、ISG(モーター機能付発電機)を備えたマイルドハイブリッドを搭載するが、これは環境/燃費性能を向上させた新しいベースエンジンという位置付けになる。

2030年には二酸化炭素の排出量を2015年規制値の約半分に抑える必要が

欧州車にプラグインハイブリッドが普及する理由は、燃費/二酸化炭素の排出規制が実施されているからだ。EU(欧州連合)は2008年に、EU全体における乗用車の二酸化炭素排出量を、2015年に1km走行当たり130g以下に抑える規制を導入した。これは2013年に前倒しで達成されたが(126.7g/km)、2021年には95gにする規制を掲げた。2030年には、そこからさらに30%減らさねばならない。つまり2015年規制値の約半分に抑える必要が生じた。

こうなると短距離の外出は充電された電気で走り、長距離の移動はエンジンとモーターを効率良く併用できるプラグインハイブリッドが求められる。

そんな欧州の主流派であるPHVを試すべく、メルセデス・ベンツ E350eアバンギャルドスポーツを試乗した。メルセデス・ベンツでの中でも主力となるEクラスセダンのボディに、プラグインハイブリッドを搭載している。

モーター駆動が加わって動力性能が高まることを踏まえても、燃費数値が物足りない

エンジン自体は直列4気筒2リッターのターボで、最高出力が211馬力(5500回転)、最大トルクは35.7kg-m(1200~4000回転)だから、動力性能はターボを装着しない3.5リッターの自然吸気エンジンと同程度だ。これにモーター駆動を組み合わせて、エンジン駆動と合計したシステム最高出力は286馬力、システム最大トルクは56kg-mとされる。モーター駆動の併用で、数値上は5リッターエンジン並みに増強された。

一充電消費電力量は6.94kWhで、1回の充電により20.1km(Eモード)を走行できる。ハイブリッド走行時のJC08モード燃費は15.7km/Lだ(使用燃料はプレミアムガソリン)。共通の2リッターガソリンエンジンを搭載するE250アバンギャルドスポーツが14.9km/Lだから、ハイブリッド化による燃費向上率は約5%にとどまる。モーター駆動が加わって動力性能が高まることを踏まえても、燃費数値が物足りない。

ちなみにV型6気筒3.5リッターエンジンをベースにしたハイブリッドを搭載するレクサス GS450hが18.2km/Lだから、E350eはもう少し数値が向上すると、プラグインハイブリッド車としてのインパクトが強まる。

3500回転前後の実用回転域では、アクセル操作に機敏に反応してスポーティな走りが楽しめる

試乗では、まず動力性能を試した。プラグインハイブリッドだから、充電された状態では、モーター駆動のみで発進する。エンジンは始動しないから、この時の加速感は当然ながら静かで滑らかだ。メルセデス・ベンツ Eクラスだから遮音も入念に行われ、ほとんど無音で加速していく。通常の加速であれば、モーター駆動だけで十分に足りる。エンジンを始動させず、時速100kmを超える領域までEV走行することも可能だ。

そしてアクセルペダルをさらに深く踏み込むと、ハイブリッドシステムの負荷の加わり方に応じてエンジンが始動する。この時には2リッターターボエンジンの駆動力が上乗せされるから、かなり活発な加速が可能だ。特に3500回転前後の実用回転域では、アクセル操作に機敏に反応してスポーティな走りも楽しめる。

ただしエンジンを始動させた時には、4気筒のノイズが粗く聞こえた。モーター駆動だけで走る時がきわめて静かだから、アクセルペダルを踏み込んでエンジンが比較的高い回転域で回り始めると、そのノイズが過剰に目立ってしまう。

また駆動用電池を使い切ってエンジンが始動した時の現実に引き戻されたような落胆は、すべてのプラグインハイブリッドに共通する特徴で、メルセデス・ベンツE350eアバンギャルドスポーツも例外ではない。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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