MX-30 EVモデルはまるでガソリン車! EV特有の直線的な加速が注目されるクルマづくりに一石投じるマツダの目論見とは?(2/3)
- 筆者: 青山 尚暉
- カメラマン:森山 良雄
EVらしくないのがイイ! 違和感のない加速が最大のポイント
さてマツダ 新型MX-30 EVモデルの運転席に乗り込めば、エコ素材をあしらったインテリアデザインはほぼMX-30 マイルドハイブリッドモデルと変わらない。
EVモデルならではなのは、クラシックな3連メーターの表示、インパネ中央に平べったく配置されるナビ、というか相変わらず小さすぎるディスプレー内のEV専用の情報ぐらいなものである。
MX-30 マイルドハイブリッドモデルに対してエクストラコストを払うユーザーにしてみれば、エクステリアを含め、もう少し特別感を演出してくれてもいいのでは?なんて思えたりするかもだ。
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過剰な演出0! EVらしくない自然な運転感覚がイイ
しかし、MX-30 EVモデルの“電源”ボタンを押し、起動させ、シフターをDレンジに入れ、モーターペダルを踏み込んだ瞬間、マツダのEVに対する大いなるこだわりに、思わず頬がゆるんだのも本当だ。
その理由はまずペダルフィール、というかペダル操作に対するモーターの反応がスイッチ的ではなく、EVっぽくない。つまり、内燃機関を積んだクルマのように自然なのである(厳密には異なるが)。
これまで、マツダの車種でガソリン車とクリーンディーゼルがある場合、個人的には迷うことなくクリーンディーゼルが上だと思ってきた。
豊潤なトルク、タメのある(CX-5はMCで新ペダルを採用し、タメは減少したが)ペダルフィール、そしてなによりもガソリン車とは別格の上質なドライブフィールを楽しませてくれたからである。
が、この145psの最高出力、および瞬時に27・5kg-mの最大トルクを発揮するEVモデルのモーターフィールは、クリーンディーゼルも増して濃厚で上質なパワーフィールをシームレスに、レスポンシブルに発揮。
例のサウンド効果もあって、MX-30マイルドハイブリッドモデルから乗り換えた直後さえ、違和感がない自然さが好ましく感じられたのである。
ただ、モーター音の演出が不要と感じる時もあるはずなので、できればON/OFFスイッチが欲しいところではある。
乗り心地は世界レベル! マツダの技が光る仕上がり
MX-30 EVモデルの感動ポイントはまだまだある。それが乗り心地。
そもそも先に強豪ひしめく欧州で勝負しているだけに、マツダ車最上級どころか、このクラスとして世界的にも一流の乗り心地を示してくれたのだ。
同時に試乗したMX-30マイルドハイブリッドモデルと比較すれば、その差は歴然。幹線道路の荒れた路面、高速道路の継ぎ目などを乗り越えたときのいなし方、収束性、それがもたらすフラットライド、快適感はもう素晴らしいの一言の先にある。
超好印象の走行性能と乗り心地を実現できたワケとは?
この点については、床下に敷き詰められたバッテリーによる低重心(MX-30マイルドハイブリッドモデルに対して車高はわずかに上がっているものの、重心は下がっている)、バッテリーを保護する強固なケースによる剛性アップなどから、ある程度予測できたのだが、このクルマの動的部分を担当した開発陣によれば、それだけが理由ではないとのこと。
むしろ、新搭載されたe-GVC Plusが効いているのだという。マツダのG-ベクタリングコントロール(=GVC※)は操縦安定性、ひいては車酔いしにくさにも効果がある技術だが、e-GVC Plusではこれまでの内燃機関モデル用よりも作動領域を拡大。
操縦安定性やダイナミクス性能の向上はもちろん、乗り心地にも大きく寄与しているのだそうだ。付け加えれば、開発陣がテストしているであろう、e-GVC PlusのON/OFF(市販車ではできない)で、その効果(差)が明確に実証されていると踏んでいい。
※GVC:ハンドル操作をした際に発生する車両の前後左右の動きを滑らかにさせる統合制御システム
新提案のパドル制御で異次元の加速を味わえる
最後の感動ポイントは、例のEV専用となる新しい概念のステアリングパドルシステムの”右パドル”である。
マツダはその作動を「走行抵抗を変えるもの」とし、アクセルオフ回生の減速力が弱まり、加速しやすく、一定速度で走りやすくなる状態にすることで、2段階ある右パドルを操作すると、コースティングというより、クルマがフワッと軽くなったような感覚。あるいは、春先にコートを脱いだような身軽さ、誤解を恐れずに言えば、魔法の絨毯や、西遊記に出てくるきん斗雲(きんとうん)に乗ったかのような、クルマとして異次元の“加速世界”に誘われる(魔法の絨毯や西遊記に出てくるきん斗雲に乗ったことはありませんが)。
HV、PHV(PHEV)を含む内燃機関車のパドルシフト操作の感覚とはまったく違うその心地良さ、気持ち良さから、何度も右パドルを操作(確認)してしまったほどである。
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