マツダ 新型 アクセラハイブリッド[SKYACTIV-HYBRID] 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
アクセラハイブリッド専用のSKYACTIV-G 2.0リッターエンジン
実際、今回のアクセラハイブリッドにはマツダ製の「スカイアクティブ2.0G」エンジンを使うものの、アクセラスポーツ「20S」が搭載する同型のエンジンとは中身が大きく異なる。ほかのエンジンは残留ガスの低減が可能な4-2-1排気だが、ハイブリッドは4-1排気。排気ガスの一部を吸気側に戻すクールドEGRも採用した。これによって圧縮比は1.5リッターと2リッターのガソリンエンジンが13なのに対して14まで高めている。
さらに、アクセラハイブリッドには専用の制御機能も加わるから、エンジンルーム内の補機類と配置も大幅に変えた。
この苦労はカタログデータからも分かる。アクセラハイブリッド専用2リッターエンジンの最高出力は99馬力(5200回転)、最大トルクは14.5kg-m(4000回転)とされ、回転数まで含めてプリウスが搭載する1.8リッターエンジンと数値を合わせた。となればエンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力も136馬力で等しい。
この理由を開発者に尋ねると「いろいろ試したが、結局、最も効率が高いこの数値に落ち着いた」と言う。つまりTHSIIはエンジンを含めて緻密なバランスの上に完成され、ハイブリッドのみを流用するなら、エンジンの性能までプリウスにキッチリと合わせる必要があった。
開発当初は想定外だったアクセラハイブリッド
そしてアクセラのハイブリッド仕様は、最初から企画されていたモデルではない。スカイアクティブ2.0Gも、トヨタのハイブリッドと組み合わせることを視野に入れて開発されてはいない。トヨタも同様で、ハイブリッドだけを「別売り」することは想定外だったろう。いわば既存の完成された2つの料理を部分的に組み合わせて、まったく別の料理を作ることになった。
しかしマツダの新型アクセラの開発者は、完成されたTHSIIをひとつの素材に見立て、改めて腕を振るうことで「マツダの美味しい料理」に仕上げることを考えた。前述のデータが示すように、THSIIにエンジンの出力やトルクを合わせつつ、プリウスとは違うアクセラの、そしてマツダの運転感覚を目指した。「二重の苦労」にチャレンジしたわけだ。
共通のハイブリッドシステムを積むプリウスをも上回る低燃費性能
ブレーキも同様。プリウスでは減速時に軽くブレーキペダルを踏むと、ノーマルエンジン車に比べて若干強めの減速感があり、モーターが充電を開始したことが分かる。そこをアクセラではノーマルエンジン車のブレーキフィーリングに近付けた。
エンジンの始動やブレーキの回生など「システムの働き方が分かる方が、ハイブリッドを操っている感覚が強まって楽しい」という見方もあるが、マツダは自然なフィーリングを求めてプリウスとは違うアクセラのハイブリッドを造り上げた。走行の切り替えモードも異なり、モーター駆動のみで走れるEVドライブモードは備わるが、自然な運転感覚を重視してエコモードはあえて採用していない。そしてエンジンやタイヤなどの効率アップを図ることで、JC08モード燃費は30.8km/L。プリウスの売れ筋グレードは30.4km/Lだから、若干ではあるが、プリウスよりもアクセラハイブリッドの燃費性能が上まわる。ちなみにプリウス「L」グレードは32.6km/Lだが、このグレードはタイヤサイズが異なり、リアワイパーまで省いて軽量化とコスト低減を図った。売れ筋グレードで比べれば、誤差の範囲とはいえアクセラの数値が勝る。売れ行きを伸ばすための「営業判断」だが、「本家」をしのぐ数値を達成したのだから大したものだ。
こういった背景にある苦労を知ると、アクセラハイブリッドを手放しで褒めたくなってしまう。特にクルマ好きの読者諸兄には、こういった「不可能を可能にする開発」を知っていていただきたい。
ただしひとつの商品としては、前述の話はあくまでもメーカー側の事情にすぎず、ユーザーが感知することではない。試乗チェックもこの視点で行った。
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