レクサス 新型UX 新型車解説│ユーザーのライフスタイルに合わせて様々な顔を見せる“マルチパフォーマンス”な一台

一日の生活範囲の中で自由に出かけて新しい発見をしたくなるクルマ

現在、世界的なクロスオーバーブームだが、その中でも高級車とSUVが融合した「プレミアムクロスオーバー」の活性化が著しい。実はこの世界を切り開いたのはレクサスだ。1998年に登場の「RX」が元祖で2014年には弟分となる「NX」が追加。この2台が現在のレクサス販売をけん引するエースであり、レクサスの2018年上半期(1~6月)の世界総販売台数は過去最高となる32万7832台(前年同期比7%増)に大きく貢献している。

とは言え、この2台で世界の強豪相手に戦うのは限度があるのも事実で、販売現場からはより小さなモデルのリクエストが多かったと言う。そこで登場したのがレクサスクロスオーバーシリーズの末っ子「UX」である。

と言っても、単純な大中小のラインナップを揃えるのではなく、兄貴分のRX/NXとは違う独自の個性が盛り込まれている。車名(UX)の意味は「アーバンクロスオーバー」で、チーフエンジニアの加古慈(かこ・ちか)さんは「都市生活者が一日の生活範囲の中で自由に出かけて新しい発見をしたくなるクルマを目指しました」と語るように、オフロードよりも都市での使い勝手にこだわる。

“SUVらしさ”を演出しているものの、実はスポーティハッチと言ってもいいくらい

レクサス 新型UXのエクステリアは、フェンダーのホイールアーチモールやボディの厚みなどで“SUVらしさ”を演出している。しかし、コンパクトなキャビンに立体的なスピンドルグリルを含む表情豊かなフロントマスク、凝縮感の高い引き締められたサイド周り、そして塊感のある絞られたリア周りで、スポーティハッチと言ってもいいくらいである。

更にFスポーツは、専用の前後バンパーやグリル、漆黒メッキアイテム、専用アルミホイールなどがプラスされる。ちなみに特長的な形状のホイールアーチモールや左右一体型の翼形状のリアコンビランプは、デザイン的なアイコンだけでなく、操縦安定性にも寄与する機能部品だそうだ。

ボディサイズは全長4495×全幅1840×全高1520mm、ホイールベース2640mmと同クラスのライバルよりやや小さめだが、最小回転半径5.2mと言う取り回しの良さ、そしてクロスオーバーながらタワーパーキング対応の1550mm以下の全高と、日本でも扱いやすいサイズに収められている。

日本独自の美意識をイメージさせる、さすがのレクサスクオリティ

レクサス 新型UXのインテリアは、GS以降レクサスの特徴となる水平基調のインパネを採用。コクピット感覚は非常に強いが、インパネ上部とフード上のキャラクターラインを繋ぐ、日本の縁側のような内と外の繋がりを使うことで “広く見せる”演出により、視覚的な広さ感と見晴らしのいい視界性能を実現。ドライビングポジションはアイポイントが高いが着座姿勢は低めでクーペライクと言う不思議な感覚だ。

スイッチ類はインパネを薄くするために空調以外の操作以外は少なめ。オーディオコントロールはパームレストに内蔵されるオーディオスイッチ、ナビゲーションを含めた各種インフォテイメントはレクサス車共通のリモートタッチを採用する。オーディオスイッチはナイスアイデアだが、リモートタッチは右ハンドル仕様では左手で操作するためブランドタッチや手書き入力は難しいが、音声認識のレベルが上がっているのでそちらをメインに使いたい。

各部の質感の高さは末っ子ながらレクサスクオリティ。インパネは「和紙」、革シートには「刺し子」をモチーフにした日本独自の美意識をイメージさせた加飾を採用するなど、ジャパンプレミアムらしい演出もポイントの一つだ。また、空調のレジスターノブに採用されるLED照明は世界初となる非接触給電式だ。装備類も充実しており、上級モデルと同じく空調はオートエアコンと連動してシートヒーター/シートベンチレーション/ステアリングヒーターを綿密に自動制御する「レクサスクライメイトコンシェルジュ」。オーディオは上級モデルと同じく「マークレビンソン・プレミアムサラウンドシステム」を設定。ナビゲーションは “繋がる”機能が強化されたハイブリッドナビに加え、ITSコネクト対応の最新スペックである。

更にFスポーツは専用メーター、ディンプル素材、専用ペダル、アナログクロック、パドルシフト、LSと同形状のステアリング、LCのデザインイメージを継承した一体発泡スポーツシートなどが用意される。

『カッコいい外装』と『走り』のために割り切ることも必要

コンパクトなレクサス 新型UXだけに、居住性の面では運転席が特等席となっており、後席やラゲッジは必要十分なスペースに留まる。特にラゲッジは220Lの容量は確保するが、バックドア開口も小さく、ゴルフバックはシートを倒さないと収納は難しい。実は開発当初は後席/ラゲッジスペースを重視したパッケージも検討したそうだが、加古CEは「あれもこれも……と欲張った結果、全てが中途半端に。UXのコンセプトとターゲットを再考し『カッコいい外装』と『走り』のために割り切ることも必要でした」と語る。つまり「広さを求めるならNX/RXをどうぞ」と。

ある意味「全員に好かれなくても構わない!!」と言う八方美人からの脱却は、最新のレクサスらしい部分と言えるかもしれない。

パワートレインは日本向けモデルとしては初導入の2種類

パワートレインは2種類を用意するが、どちらも日本向けモデルとしては初導入となる。ガソリン車は2.0リッター直噴で「ダイナミックフォースエンジン」と呼ばれる次世代型。高速燃焼による熱効率向上(最大熱効率約40%)も相まってクラストップレベルの動力性能(174ps/209Nm)と低燃費を実現。実用域の十分なトルクと高回転までレスポンスよく滑らかに回るフィーリングを両立しており、ダウンサイジングターボに負けないNAエンジンに仕上がっている。

トランスミッションはCVTのみの設定だが、通常のプーリーとベルトに加えて発進ギアを追加した「ダイレクトシフトCVT」を搭載。伝達効率の向上、ワイドレンジ化、変速追従性はもちろん、CVTが最も苦手なダイレクト感やレスポンスの良さもプラスされており、下手なAT顔負けの性能を備えている。

ハイブリッドはガソリン車と同じ2.0リッター直噴(出力は145ps/188Nm)にモーター(108.8ps/202Nm)の組み合わせることでシステム出力は178.1ps。システム自体は「THSII」だが、こちらも次世代型へアップデート。効率のいいエンジンとのラバーバンドフィールも抑えた巧みな制御の相乗効果によって、燃費はいいのは当たり前で従来のハイブリッドシステムを大きく超える力強さと車速とリンクした伸びのある加速感を実現。

従来のシステム(1.8リッター+モーター)は非力なエンジンをモーターが補うイメージだったが、このユニットはエンジンにモーターの力が上乗せされており、「パフォーマンス」の高さで選びたくなるハイブリッドだ。

また、減速時にエネルギー回収を効率的に行なう「先読み減速支援」、ナビゲーションと連携し下り坂と渋滞に対応する「先読みSOC制御」などにより、実用燃費の向上も行なわれている点にも注目である。

開発当初からクロスオーバーではなくより背の低いハッチバックをベンチマーク

動方式はガソリン車がFFのみ、ハイブリッドはFFとAWD(E-Four)を用意する。

フットワーク系は「見た目はクロスオーバー、走りはハッチバック」をキーワードに、開発当初からクロスオーバーではなくより背の低いハッチバックをベンチマーク。その実現のために奇を狙わず直球勝負(=基本性能の追及)が行なわれている。

プラットフォームはプリウスやC-HR、カローラスポーツに採用される「GA-C」をベースに、高張力鋼板を最適配置したアンダーボディ、左右ドア開口部とバックドア開口部の環状構造、レーザースクリューウェルディングや構造用接着剤の仕様部位の大幅アップ、パフォーマンスロッドやステアリングギアブレースの追加などが行なわれたUX専用設計。

同時に低重心化と軽量化も徹底してこだわっており、ボンネットやフェンダー、ドアはアルミ製、バックドアは樹脂製、更に重心より上にある部品の多くはグラム単位での減らす努力が行なわれたそうだ。

サスペンションはフロント・ストラット/リア・ダブルウィッシュボーン式で、ベースモデル/バージョンCはコンベンショナルダンパー+215/60R17、バージョンL/Fスポーツとは減衰力が電子制御可変のリニアソレノイドバルブ付AVS+リアパフォーマンスダンパーと225/50RF18(ランフラット)の組み合わせとなる。

末っ子ながら妥協なき開発が行なわれているUX

駆動方式やカテゴリーは全く異なるが、先に登場したLC/LSと同じく、レクサスが目指す「すっきりとした奥深い」走りの実現のために徹底した走り込みを行なったそうだ。

また、レクサスの強みの一つでもある静粛性にもかなりこだわっており、防音材の最適配置はもちろん、開口部や素材構成を改良。また、アンダーカバーの材質を繊維素材への変更やルーフの雨打ち音にも配慮した設計により、雨天走行時のノイズも低減させている。

安全支援システムも抜かりなく、第2世代「レクサスセーフティシステム+」を全車に採用。単眼カメラ+ミリ波レーダーの構成は変更ないが、各センサーの性能向上によりプリクラッシュセーフティは夜間歩行者と自転車の検知が可能に。機能もより充実し、従来の機能に加えて全車速追従機能付のレーダークルーズコントロールと合わせてステアリング操作支援を行なう「レーントレシングアイスと(LTA)」、道路標識を認識する「ロードサインアイスと(RSA)、先行者発進告知機能などがプラスされている。

このように末っ子ながら妥協なき開発が行なわれているUX。分類上はクロスオーバーに属してはいるが、ユーザーの使い方やライフスタイルに合わせて様々な顔を見せる“マルチパフォーマンス”な一台と言えるだろう。更にレクサスはLCから「第3チャプター」へシフト、すでにLS/ESが登場しているが、価格(390万円~535万円)やキャラクターを踏まえると、新世代レクサスを“身近”に体感できる初のモデルかも!?

[筆者:山本 シンヤ 撮影:島村 栄二]

レクサス 新型UX 主要スペック
UX 250hUX 200

メーカー希望小売価格(消費税込)

425万円~535万円

390万円~474万円

JC08モード燃費

2WD(FF):27.0km/L
AWD:25.2km/L

17.2km/L

WLTCモード燃費

2WD(FF):22.8km/L
AWD:21.6km/L

16.4km/L

WLTC市街地モード燃費

2WD(FF):22.0km/L
AWD:21.1km/L

12.8km/L

WLTC郊外モード燃費

2WD(FF):23.4km/L
AWD:21.7km/L

16.4km/L

WLTC高速モード燃費

2WD(FF):22.7km/L
AWD:21.7km/L

18.7km/L

全長

4495mm

全幅

1840mm

全高

1540mm

ホイールベース

2640mm

乗車定員

5名

車両重量(車重)

2WD(FF):1550~1580kg
AWD:1610~1640kg

1470~1500kg

エンジン種類

直列4気筒 直噴ガソリンエンジン

駆動方式

2WD(FF)/AWD

2WD(FF)

排気量

1986cc

エンジン最高出力

107kW(146PS)/6000rpm

128kW(174PS)/6600rpm

エンジン最大トルク

188N・m(19.2kgf・m)/4400rpm

209N・m(21.3kgf・m)/4000~5200rpm

モーター最高出力

フロント:80kW(109PS)
リア(AWD):5kw(7PS)

ーー

モーター最大トルク

202N・m(20.6kgf・m)
リア(AWD):55N・m(5.6kgf・m)

ーー

トランスミッション

電気式無段変速機

Direct Shift-CVT(ギヤ機構付自動無段変速機)

燃料

無鉛レギュラーガソリン

無鉛プレミアムガソリン

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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