故郷へのクルマ旅で想う生き方のこと｜ボルボ XC90 D5ロングドライブレポート(2/2)

見渡す限り日本海。潮の香りに癒やされる

走り出して間もなく、水平線がちらりと見えてきた。近くにある高台にのぼってみると、目の前にはいっぱいに日本海が広がっている。春のにおいと潮の香りが混ざる風に触れていると、とても心地いい。朝早く東京を出たのだが、すっかり日がのぼって、もうお昼時だ。

長岡市の寺泊付近の海岸線へ降りて行くと、寺泊の魚の市場を発見。そこここから漂ってくる、味噌で海鮮をたっぷり煮込んだ「番屋汁」のいいにおい！ぐつぐつ煮込まれている鍋からはカニの足がにょきにょき見えていて、さらに食欲をそそる。お腹も鳴りはじめたので、そこでお昼ご飯をいただくことに。「番屋汁」のほかにも、カニがたっぷり入ったご飯やお刺身もあって大満足。このまま高速道路でサッと山形に行ってしまうのももったいなくなって、海岸線をつたって海を見ながらのんびり酒田市を目指すことにした。

水田の水鏡に映る庄内平野の春

新潟から山形へ入っていくと、広大な庄内平野が見えて来る。山形の内陸と海側はまったく文化も訛りも違うので、内陸出身の私は庄内へ来ても「帰ってきた！」とは思わないのだが、ぽつりぽつりと田んぼに水が入りはじめているのを見て、「そろそろ田植えがはじまるんだ」と懐かしい気持ちになった。

酒田へ来たら一度行ってみたいと思っていたところがあった。それは写真家の土門拳記念館。子どもの頃は写真のことはよく分からないし、土門拳は教科書などで郷土の偉人として紹介されているのをなんとなく知っていただけだった。今回も「行ってみたい」とは言いつつも、「大人になって見てみたらどんなものか」とただの好奇心の方が勝っていた。

館内に入り、川端康成の肖像写真と目があった瞬間、ぶわっと全身が粟立った。私は彼の代表作しか拝読したことはないし、どんな人生を送っていたかも知らない。でも、たった一枚の写真にその人のすべてが写されている。直感的にそう感じた。どの写真もそう、土門拳は自分の作品づくりをしていたわけじゃない、その瞬間をありのままに、いや、それ以上にありありと写し出そうとしている……。何枚も見ているうちに、目の端に涙が滲んできた。どういう感情なのが自分でも分からなかった。

心にふわりと余裕が生まれたXC90でのロングドライブ

すこしずつ水が入りはじめた田んぼの横を、またXC90に乗ってふわりふわりと行く。これから自分がどんな大人になって、どんな道を歩いていくのか。XC90に乗って故郷へとロングドライブをする間に、それがすこし見つかったような気がする。もちろん目の前のことを懸命に頑張ることは大切だけれど、ときにはすこし視線をあげて、遠くの景色を見ることもこれからの自分には必要だ。心にちょっとした余裕をくれた相棒に感謝しながら、また何かに行き詰まるときには同じように旅に出かけようと思った。

［筆者：伊藤 梓／撮影：小林 岳夫／撮影協力：土門拳記念館］

ボルボ 新型XC90 D5 スペックと価格

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新車価格：

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