【陸上自衛隊のはたらくくるま】16式機動戦闘車からAAV7水陸両用車まで、現役特殊車両を解説|富士総合火力演習レポート part2

  • 筆者: 加藤 久美子
  • カメラマン:加藤 久美子・加藤 博人 画像提供:防衛省
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2017年9月22日に掲載した前回の【陸上自衛隊のはたらくくるま】特集では、試作機ST-A1から10式などの国産戦車を紹介させていただきました。

第二弾となる今回の【陸上自衛隊のはたらくくるま】特集では、戦車以外でも陸上自衛隊の任務に重要な役割を果たす【はたらくくるま】を紹介していきます!

一見戦車のような見た目を持つ”機動戦闘車”や、”水陸両用車”や” LAV(らぶ)”などの軽装甲機動車まで! 普段知ることのできない陸上自衛隊のクルマの詳細なスペックも合わせて、2017年8月27日、静岡県御殿場市 東富士演習場にて行われた、『富士総合火力演習』の特集をご覧ください!!

第一弾、試作機ST-A1から10式などを紹介した【陸上自衛隊のはたらくくるま】特集はコチラ!

異次元のスピード感!強力な火力と機動力を兼ね備えた最新戦闘車両 16式機動戦闘車

8月末に開催された平成29年度の総火演ではまだ試作モデルでしたが、その後、量産型の配備がついに始まった16式機動戦闘車! 全国で目撃情報が相次ぎTwitterなどにも画像が多く掲載されています。

16式機動戦闘車は10年前に旧防衛省技術研究本部で開発がスタートし、2016年に制式化されました。陸上自衛隊の機動師団・旅団の根幹となる車両で、純国産最新戦闘車両に位置づけられています。

一見戦車のように見えますが、戦車が駆動部分に「履帯」(無限軌道、キャタピラと同意)を使用しているのに対して、機動戦闘車は「装輪」(一般の車のようにタイヤを装備している)であることが大きな違いです。

つまり、装輪装甲車の上に戦車のような大口径火砲を搭載した仕様となっています。また、重量も戦車が40トン前後であるのに対して、機動戦闘車は約26トンとかなり軽量なので、自走して機敏に行動できる機動力と戦車並みの火力を両立させた戦闘車両となっています。

運よく一般道などで走行シーンに遭遇した場合、戦車と違って普通の車と同様に舗装路をスイスイと走れてしまいます。それだけでも、戦車との機動力の違いが判ると思います。

量産型の特徴、試作型との違いは?

試作型との最も大きな違いは砲塔の形状です。試作型では側面がストレートですが、量産型はくさび型の側面になっています。

【16式機動戦闘車 量産型はこうなっている!】

・前照灯が上下二連の角形

・操縦手ハッチは横へのスライド式

・砲塔側面はくさび型(ここが最も大きな変更点)

・砲塔後部に鉄格子状のバスケット? がある

・車体後部の形状は試作型とほぼ同じと見られるがシャベル等を装着

・車体前後下部にアンダーガードを装備

>>陸自現役特殊車両の画像を見る!【全16枚】

16式機動戦闘車の主要スペック(データ数値は試作車)

16式機動戦闘車の主要スペック(データ数値は試作車)

全長

8,450mm

全幅

2,980mm

全高

2,870mm

全備車重

26,000kg

乗員

4名(操縦手、車長、砲手、総てん手)

エンジン

水冷4サイクル4気筒ディーゼル

最大出力

570hp/2,100rpm

最高速度

100km/h

駆動方式

8輪駆動

サスペンション形式

8輪独立懸架

武装1

105mm施線砲×1

武装2

12.7mm重機関銃×1

武装3

74式車載7.62mm機関銃×1

73式小型トラック(ジープ&パジェロ)

1973年に採用された自衛隊の汎用小型軍用車両(トラック)です。現在は三菱ジープ(1996年~)、同パジェロベースの2車種があり、いずれも三菱自動車工業(パジェロ製造)が製造しています。

「73式」という名称は現在では通称のようなもので、製造コストの削減・部品の共通化・民生品の活用の一環から2003年度以降「制式化」対象から除外されたため現在の正式名称は「1/2tトラック」です。

とはいえ、少々呼びにくいので、一般的に旧型は「ジープ」新型は「パジェロ」と呼ばれています。73式はほとんどがパジェロに置き換わっていますが、現在も小規模駐屯地ではジープが使われています。

市販車両がベースのため、アクセサリーソケットや左右ドアの灰皿、災害情報収集のためAM・FMラジオも標準装備されています。ジープには搭載がなかったエアコンも装備されており、4速ATの採用で快適性も大幅アップしています。

ちなみに電装系は民間向けパジェロが12Vなのに対して、73式小型トラックは24Vとなっています。操作パネルなどの見た目は同じですが中身は市販のパジェロとは別物になっています。

また、最新モデル(2014年~)では、ボンネットにインタークーラー用のエアインテークが無い状態となります。エアインテークがあるかどうかが、新旧モデルの見分け方法の一つとなっています。

なお73式小型トラックに固有の搭載火器はありませんが、左右ドア内側に小銃取付具が取り付けられており、5.56mm機関銃MINIMI、12.7mm重機関銃M2などの各種機関銃および、対戦車ミサイルなどを搭載することが可能となっています。

73式小型トラックの主要スペック(データ数値はパジェロベースのもの)

73式小型トラックの主要スペック(データ数値はパジェロベースのもの)

全長

4,140mm

全幅

1,765mm

全高

1,970mm

車両車重

1,940kg

乗車定員

6名

ボディタイプ

2ドアソフトトップ

エンジン

4サイクル4気筒ディーゼル

最大出力

120hp

駆動方式

スーパーセレクト4WD

変速機

4速AT

最高速度

135km/h

軽装甲機動車 LAV(らぶ)

陸上自衛隊初の4×4型装輪装甲車です。製造は小松製作所で、総火演会場近くの富士学校周辺では市街地でも頻繁に見かけます。

全長4.4mと意外にコンパクトなサイズで、パーツに民生品を使うことで1台3000万円と装甲車の中ではかなりリーズナブルな価格を実現しています。

上部ハッチから上半身を出して、5.56mm機関銃MINIMIや01式携帯対戦車誘導弾等の射撃機関銃や対戦車ミサイルの発射を可能とします。足元は円卓のようになっていて、全周囲の警戒および、攻撃ができる仕様となっています。

主として普通科部隊や偵察部隊に装備され、戦略機動および戦場機動などに使用されます。通称は「Light Armoured Vehicle」の頭文字を取ってLAV(らぶ)と呼ばれ、陸上自衛隊に2000台、航空自衛隊に120台が配備されています。

軽装甲機動車 LAV(らぶ)の主要スペック

軽装甲機動車 LAV(らぶ)の主要スペック

全長

4,400mm

全幅

2,040mm

全高

1,850mm

全装重量

4,500kg

乗員

4名

最高速度

100km/h

制作

小松製作所

91式戦車橋(愛称:タンクブリッジ)

戦車の下部分(履帯)に上下2段重ねになった状態の橋が積載できる戦車橋(愛称:タンクブリッジ)です。河川や溝に橋を架け、伸ばした橋には戦車も走れる耐久性があります。

戦車橋は重なった上下をスライドさせて1本に連結し、前方に繰り出して河川や溝に橋を架けます。車体部に74式戦車の車体を使用しており、機動・姿勢制御能力の向上が図られています。

67式戦車橋に代わる器材として昭和60年から試作・開発が始まり、平成2年度に制式機材として制定されました。施設科部隊等に装備されています。

91式戦車橋(愛称:タンクブリッジ)の主要スペック

91式戦車橋(愛称:タンクブリッジ)の主要スペック

全長

10,900mm

全幅

4,000mm

全高

3,800mm

全装重量

4,180kg

乗員

4名

最高速度

100km/h

制作

小松製作所

水陸両用車(AAV7Assault Amphibious Vehicle)※総火演初登場

こちらの車両はその名の通り地上だけでなく、河川、湖、海洋などの水上を浮上して航行が可能な、戦闘力を持つ水陸両用装軌車両です。

陸上自衛隊内に新設された水陸機動団に平成25年度より調達が始まり、現在試験用を含めて合計58台が調達されています。

ちなみに、総火演への登場は今年が初めてとのことです。

水陸両用車(AAV7Assault Amphibious Vehicle)の主要スペック

水陸両用車(AAV7Assault Amphibious Vehicle)の主要スペック

全長

8,161mm

全幅

3,269mm

全高

3,315mm

重量

25,652kg

乗員数

3名+兵員25名収容または貨物4.5t

エンジン

V型8気筒2ストローク液冷ターボチャージド・ディーゼル(最高出力400HP)
又はV型8気筒4ストロークターボチャージド・ディーゼル(同525HP)

最高速度

72.42km/h(地上整地時)、13km/h(水上航行時)

武装1

12.7mm重機関銃M85×1

武装2

40mm自動擲弾銃Mk.19×1

武装3

12.7mm重機関銃M2×1 ※A1型改修車

12式地対艦誘導弾

12式地対艦誘導弾とは、陸上自衛隊が装備する地対艦誘導弾(ミサイル)システムのことで、平成24年度から調達が始まりました。

88式地対艦誘導弾の後継車のため当初は88式地対艦誘導弾システム(改)と呼ばれていました。平成13年から開発が始まり、完成するまでの開発所要経費は約138億円だったとか。

艦船における対艦ミサイル迎撃能力の向上に対応するもので、主にミサイルの生存性向上が改良の主眼となっています。

12式地対艦誘導弾の主要スペック

12式地対艦誘導弾の主要スペック

ミサイル直径

約0.35m

ミサイル全長

約5m

ミサイル重量

約700kg

射程

百数十km

推進方式

固体燃料ロケットモーター(ブースター)+ターボジェットエンジン(巡航用)

誘導方式

中途航程:INS・GPS

終末航程

ARH

飛翔速度

N/A

自衛隊車両はどこで見ることができる?

自衛隊車両を生で見たい! という人に最もオススメなのは、実弾が飛び交う大迫力の富士総合火力演習ですが、こちらはチケットが必要(しかも30倍近い高倍率!)なので誰でも簡単に見れるというわけではありません。

そこで、全国各地で実物の戦車が見れる場所をご紹介します。多くは平日のみで、事前の予約が必要な場合も多いので以下のリンクからご確認ください。

●陸上自衛隊広報センター りっくんランド

●東千歳駐屯地 北海道千歳市

●前川原駐屯地(もしくは陸上自衛隊 幹部候補生学校)福岡県久留米市

●仙台駐屯地 防衛館

※こちらは資料館がメインで、防衛館前に61式戦車と74式戦車が展示されています。

●土浦武器学校

陸上自衛隊武器学校は後方支援部隊などの指揮官、幕僚を養成する兵站・運用教育、陸上自衛隊の各種装備品の整備員を養成する整備教育や不発弾処理などの教育を毎年約800名の隊員に実施している教育機関です。

ここでは、予科練の貴重な資料などを展示している予科練記念館や火砲館、屋外展示の戦車など大変充実した展示物を見ることができます。

とくに戦車や特殊車両に関しては、自衛隊4世代の戦車や日本で1台しかない三式中戦車チヌ(ガルパンでおなじみ!)をはじめ、シャーマン、チャーフィーなどの米国製戦車も豊富に展示されています。

このほか全国の駐屯地の多くは、年に1‐2回、駐屯地まつりや創立記念行事などで一般開放を行っています。戦車に乗れるイベントなども開催されているので、全国約160か所にある駐屯地のうちの、お住まいの地域の駐屯地を尋ねてみてはいかがでしょうか?

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加藤 久美子
筆者加藤 久美子

山口県下関市生まれ 自動車生活ジャーナリスト 大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。出版局にて自動車年鑑、輸入車ガイドブック、整備戦略などの編集に携わる。95年よりフリー。2000年に第一子出産後、チャイルドシート指導員資格を取得し、チャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 得意なテーマはオリジナリティのある自動車生活系全般で海外(とくにアメリカと中国)ネタも取材経験豊富。愛車は22年間&26万km超の916アルファスパイダー。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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