日本のクルマの税金は高いと言われていますが、海外ではどうなの?【教えて!MJブロンディ】
- 筆者: 清水 草一
日本の車に対する税制って高い?
若者の車離れが止まらないようです。
都会では、公共交通機関を利用するだけで、大抵の所に行けますし、時間も正確です。時間の読めない車で移動するのが、ばかばかしくなるのも分かります。スポーツカーを買っても、常に渋滞では、高出力であることは、燃費の悪さでしか実感できません。
しかし、そもそも、日本の車に対する税制がおかしいのではないかと思います。
日本では、車は金食い虫です。取得税、消費税、重量税、自動車税、ガソリンの燃料税と消費税、駐車場代と・・・・。これだけ税金を取られ、渋滞を我慢し、自動車の保険代まで払ってまで車に乗りたいと思う人がどれだけいるのか、はなはだ疑問です。
高級車に乗るのが、ステータスであり、ボロアパートに住んでも、ローンで高級車に・・という時代は、はるか昔です。
海外の車に対する税制は、どうなのでしょうか?日本程税金が高い国は無いような気がします。(Volklさん)
其の疑問、MJブロンディがお答え致します!
Volklさんのおっしゃるように、日本の税制は、保有税(クルマを持っているだけでかかる税金)が世界一レベルで高いです。
たとえばJAFのHPには、このようなグラフが載っています。
日本の自動車にかかる税金は、ドイツの4.2倍、アメリカの約50倍。
「なんだこりゃ!ひどすぎる!」と思って当然ですね。
ところが、このグラフには、重要なものが抜けています。ガソリン税や消費税などです。実は日本は、そちらに関しては、少なくともヨーロッパよりもはるかに安いのです。
ヨーロッパでは、消費税が20%前後です。クルマを買う時は、有無を言わさずこれが徴収されます。日本でも、2年後に消費税が10%に上がる予定ですが、同時に取得税を廃止する方向なので、約半額のままです。
最大の差はガソリン税です。
日本でも、ガソリン価格のうち50円/L以上が税金なので、「税金取りすぎだ!」と感じてしまいますが、ヨーロッパでは、なんとそれが100円/Lくらい!
つまり、走れば走るほど、税金がバシバシかかります。
JAFのHPにあるグラフに、1800cc車に11年間乗ると仮定して、ガソリン税など、計上されていない他の税額を加えてみました。
すると、日本の自動車ユーザーの税負担は、ヨーロッパより低くなってしまいました。アメリカは依然バカ安ですが、実はこの上に、州によって異なる消費税や動産税が上乗せされるので、日本の半分くらいのところまでは上昇します。 (参照http://www.shimizusouichi.com/blog/archives/003344.html)
しかも比較対象が軽自動車なら、ヨーロッパに比べて税負担は大幅に安くなり、アメリカに近づきます。日本のメディアは、こういったことを正しく報道していません。
JAFがこういったグラフをHPに載せて、「日本の自動車関連税は高すぎる!」とPRするのは、ユーザーの利益を代表する機関だからで、つまり一種の利益誘導です。農協が「もっと農家に補助金を出せ!」と要求するのと、似たようなものですね。
アメリカは完全なクルマ社会で、ニューヨークを除けば、クルマがなければどこへも行けません。
クルマはものすごく魅力的な交通機関なので、税負担を日本の半分に減らすと、公共交通機関が壊滅へ向かい、アメリカみたいな社会になってしまう、と考えていいかと思います。 実際、軽自動車の普及率が高い地方では、アメリカ的になっていますよね。
では、日本より税負担の重いヨーロッパでは、なぜあんなにみんなクルマが好きなのか? その背景には、まず歴史があります。
ヨーロッパは自動車発祥の地であり、馬車時代も長かったことから、昔から道路建設に力を入れていました。2000年以上前のローマ街道ですら、時速100キロでクルマが走れるほど平滑な石畳舗装が施されていました。 クルマが発明されれば、クルマ社会化が早く進むのは当然でした。
第二に、ヨーロッパでは、日本のようなデフレ不況がなかったことがあります。 日本のデフレ不況は、すでに15年以上。バブル崩壊後の不況から数えると、25年にもなります。
不況こそ、クルマ離れの最大の原因なのです。日本でも、景気が回復して数年経てば、クルマ熱が盛り返し、それが若者にも波及していくと考えています。
なぜなら、「豊かになる競争」において、クルマは最もわかりやすい対象だからです!
自動車評論家MJブロンディこと清水草一氏に聞きたいことを受付中!
自動車評論家、清水草一(MJブロンディ)が、みんなの疑問に面白く答えてくれる「教えて!MJブロンディ」。クルマに関するご質問や素朴な疑問などを随時募集しておりますので、皆さまドシドシお寄せ下さい!
この記事にコメントする