google検索などコネクティビティを強化したVW 新型ティグアン発表、2017年は新型車導入で「積極的に攻勢を」
- 筆者: 内田 俊一
フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、コンパクトSUVのティグアンをフルモデルチェンジし、1月17日から販売を開始。同日都内にて発表会を開催した。
その際、ティグアンの概要説明とともに同社の2016年の振り返りと2017年以降の中長期戦略について語られたので、あわせてレポートしよう。
初代ティグアンが日本に上陸したのは、いまから8年前。全世界で累計280万台以上が販売され、日本での累計販売台数は約1万5,000台。ティグアンが日本に初上陸した当時、輸入コンパクトSUVセグメントでは唯一のモデルだった。
しかし現在、その状況は一変し、このセグメントでの競争は激化しているが「ティグアンは今日まで堅調に売れてきた」と、フォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役のティルシェア氏は評価する。
ドイツにおいて販売初期から常にセグメントリーダーであり続け、日本の輸入車マーケットについても同じく強いポジションを維持するティグアンは、「今や世界170カ国以上で販売されるゴルフ、パサートやポロに続くフォルクスワーゲン第4番目の主要プロダクトとなっている」という。
VW SUV初のMQBを採用
「新型ティグアンの導入は、SUVの新時代を開くことだ」とティルシェア氏は意気込む。なぜならフォルクスワーゲンの生産モジュール“MQB”をSUVモデルとして初採用したからだ。その結果、「デザイン、快適性や機能性の分野で新たなスタンダードを樹立し、未来を先取りするオールラウンダーとなった」と自信を見せる。
ボディサイズは全長4500mm(先代+70mm)、全長1840mm~1860mm(同+30~+50mm)、全高1675mm(同-35mm)と、より長く、より幅広く、より低くするとともに、ホイールベースを70mm延長することで、スタイリッシュでスポーティなプロポーションとともに、広く快適な室内空間を実現しているという。また、サイズ拡大の理由としては、ヨーロッパ市場におけるこのSUVセグメントの潜在ユーザーから、初代ティグアンよりも100mm大きいSUVが望まれているという調査結果が出たからだそう。そこから、現在のサイズが導き出されたのだ。
“ニューエモーショナルデザイン”と呼ばれるそのスタイリングは、フォルクスワーゲン伝統の水平基調のデザインに則り、彫刻のような鋭いエッジのボディラインと、前後のLEDライトとの相乗効果によって、スポーティでダイナミックなフォルムを演出。
つながるSUV
新型ティグアンの最大の特徴はコネクティビティだろう。ティルシェア氏は、「フォルクスワーゲンで開発が行われる際の原則は、常にヒューマンタッチ。つまりITのためのITではなく、あくまでお客様のベネフィットや快適性が最優先される」と述べる。今回この目線で実現したコネクティビティは、フォルクスワーゲンカーネットを用いた、モバイルオンラインサービスだ。
ナビゲーション付の純正インフォテイメントシステム、Discover Pro(ハイライン以上に標準装備)では12の情報が得られるテレマティックス機能、Guide&Informが利用できる。
ここでは、行ったことのない場所を事前に確認するときに便利なgoogleストリートビューや、google earthも自在に表示できる他、目的地検索にgoogleのデータベースを用いたオンライン検索を行うことで、最新かつ豊富な施設検索が可能となった。
さらにボイス検索を使えば、運転中でも安全かつ簡単に最新情報を入手できる。またガソリンスタンドを距離別、価格別の検索や、駐車場の空き情報もリアルタイムで検索できるほか最新のニュースや天気といった充実した情報もオンラインで入手が可能だ。
コンフォートラインの純正オーディオ、Composition Mediaでも3つの通信方式に対応するApp-Connectを使用することで、Apple CarPlay、Android Auto、Mirror Linkなどを利用することが出来るのだ。
安全装備も充実
昨年6月のEuro N capで最高評価の5つ星を獲得したティグアンは、フォルクスワーゲンの総合安全コンセプトのフォルクスワーゲンオールインセーフティに基づいた安全装備を採用している。
その一部を紹介すると、前方の車や歩行者を検知して、衝突被害を軽減するプリクラッシュブレーキシステムフロントアシストや、全車速域で先行車との車間距離を一定に保つ、アダプティブクルーズコントロールACC。さらにこのACCの拡張機能である渋滞時追従支援システム、トラフィックアシストも搭載されている。
最後になったがドライブトレインは、気筒休止システムがついた1.4リッターTSIエンジンと、6速DSGを採用。アイドリングストップなどのブルーモーションテクノロジーにより燃料消費率を先代より約10%向上させている。
VWグループの2016年と2017年以降
さて今回は新春会見も含まれており、フォルクスワーゲングループと同日本の2016年の振り返りと、2017年とそれ以降の中・長期計画も合わせて語られた。
まず2016年、排ガス事件の影響が続く中、グループ全体で1,031万台を記録。地域別ではヨーロッパおよびアジアパシフィックがプラスであったことから、「最も重要な市場となった」とティルシェア氏。
そして、2016年、フォルクスワーゲングループは“TOGETHER STRATEGY 2025”を打ち立てた。ティルシェア氏は「従来型自動車メーカーから世界をリードする持続可能なモビリティのプロバイダーへの転身を意味するもの」という。
これをベースに、フォルクスワーゲン乗用車ブランドは、体質を変えることへの想いを込め“TRANSFORM 2025+”という戦略を3つのフェーズに分けて提起した。フェーズワンは2020年までで、長期にわたり持続的に成長するための基礎を築く時期とし、従来からある車両やパワートレインは先進技術の導入により一層改良される。新型ティグアンはこの第1弾と位置付けられ、SUVはより積極的に市場展開される。
同時に、フォルクスワーゲンは段階的に2025年までのフェーズ2に向けての準備も始めており、このフェーズの目標はeモビリティ社会における主要な量産メーカーになることだ。次いで、2025年から30年に設定されているフェーズ3では、モビリティの新たなビジネスモデルとして、世界のトップリーグにいることを目指すという。
ティルシェア氏は、「フォルクスワーゲンのミッションとは未来を量産すること。つまり夢を語るのではなく計画を語ることだ。出来るだけ多くの人々に未来の技術を提供し、高品質な商品とサービスを気軽に楽しんでもらうことが大切だ。なぜなら我々はピープルズカーブランドであるからだ」とコメントした。
2017年、日本へは改良型up!とゴルフを新パワートレインとともに導入
一方日本におけるフォルクスワーゲンに目を向けると、「2016年はビジネスを考え直し中期的経営の方向性を示す“Road to 2020”を策定する貴重な一年だった」と振り返る。昨年から始まったステージ1では基盤強化を図った。
具体的には“Think People”という傘のもと、ユーザーとの新たなタッチポイントを作る様々な活動を行うことで、「ファンの皆との繋がりを強化することができた。どんな小さなきっかけでもブランドへの親近感を高めるために生かしてきた」と述べる。
そして2017年は「やや静粛を保っていた期間を終えて、より積極的な次のステップ、ステージ2に入り攻勢をかける。そしてステージ3(2019年~2020年)においては再びリーディングインポーターになることを目指す」と説明。
このリーディングとは、「販売実績ばかりではなく、輸入車市場においてトップの顧客満足度を目指すということだ」と決意を表明。そうすることで、「販売台数も自ずとついてくるだろう」とし、「我々は顧客満足度で輸入車市場をリードするブランドになろうとしているのだ」と語った。
攻勢をかけるからには新型車の導入も積極的だ。ティルシェア社長は、「新型ティグアンを皮切りに、改良されたup!や、ゴルフの改良版も、パワートレインのバリエーションを増やして登場する」と明かす。
2016年に多く開催したユーザーやファンとのイベント活動も継続強化し、合計10回を予定しているというから今から情報を楽しみに待ちたい。
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