自動車産業界に激震!グーグルが完全自動運転の開発を諦めたワケ(2/2)

自動車産業界に激震!グーグルが完全自動運転の開発を諦めたワケ
街なかをテスト走行するグーグルの完全自動運転カー「Google Car」 マウンテンビュー市内にあるグーグル本部 グーグルの自動運転車の開発本部 AUVSI「オートメイテッド・ヴィークル・シンポジウム2016」での資料画像 街なかをテスト走行するグーグルの完全自動運転カー「Google Car」 AUVSI「オートメイテッド・ヴィークル・シンポジウム2016」での資料画像 レクサス車両でテストしていた頃のグーグル自動運転テスト車 人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)を、米国カリフォルニア州の通称“シリコンバレー”に設立 人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)のメンバー TRIメンバーによるメディアラウンドテーブルの様子 フォードが目指す完全自動運転テストカー 画像ギャラリーはこちら

ネズミがドンドン逃げ出した

人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)を、米国カリフォルニア州の通称“シリコンバレー”に設立人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)のメンバー

筆者が2015年夏に立てた予測のなかで現実となったのは、自動運転の最高技術責任者のクリス・アームソン氏の辞任だ。アルファベット設立の約1年後の出来事だった。元々はカーネギーメロン大学でロボット工学の研究者。米国防総省の高等研究計画局(DARPA)が2000年代に開催した無人カーレースで、同大学を優勝に導き、その功績をグーグル創業者のひとりであるラリー・ペイジにかわれて、グーグルカーの開発を引き受けた。

そうしたバリバリの研究者が、バリバリの経営者であるクラフチック氏と肌が合うはずはなく、早くから二人の不仲説がシリコンバレー界隈に流れていた。

そんな社内の妙な空気を察して、2015年後半頃からグーグルカーの開発初期から携わってきた主要なメンバーが続々とグーグルを去っていった。

そのひとりが、ジェームス・カフナー氏だ。MIT(マサチューセッツ工科大学)でロボット工学の研究者だったが、2009年にグーグルが自動運転の基礎研究を開始したことを受けてグーグルへ転職。制御のデータ解析の責任者として約6年半に渡り、グーグルカーの開発を支えてきた重要人物だ。

そのカフナー氏は現在、トヨタがAI(人工知能)などの基礎研究を行うために設立したTRI(トヨタ・リサーチ・インスティチュート)のクラウドコンピューティング部門を総括している。今年1月、ラスベガスで開催された世界最大級のIT系展示会『CES 2016』で、筆者はカフナー氏と直接話しているが、彼の言葉からはグーグルへの未練はなく、新しい舞台でもっと新しい研究ができることが嬉しいという雰囲気が伝わってきた。

これで自動運転バブルは崩壊するのか!?

DeNAが進めるロボットタクシー

正直なところ、日本の自動車メーカーとしては、今回の『グーグル・完全自動運転の開発から事実上の撤退』というニュースを、驚きと同時に、安堵の気持ちを持って聞いたのだと思う。

日本の自動車メーカーは90年代から、先進安全自動車(ASV)の開発を進め、高度交通システム(ITS)という枠組みのなかで、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報など、安全運転を目的とした運転支援技術の開発を進めてきた。その延長線上として、段階的に運転の自動化を進めて「将来的に完全自動運転もあり得る」というスタンスで研究開発の実用化を進めていた。

ところが昨今、「いわゆる自動ブレーキ」など、なんでも自動運転に結びつけるような報道が多く、一般的に自動運転に対する勘違いや思い込みが横行。さらに、グーグルカーの登場によって「いきなり完全自動運転」の量産化が議論されるようになり、日本でも完全自動運転の早期実用化を目指すベンチャー企業が誕生し始めた。

そうしたなか、今回の『グーグル・事実上の撤退』という話が出た。

日本の自動車メーカーとしては、「これで完全自動運転について、世の中全体が冷静な目で見つめ直す機会になれば良い」と思っているに違いない。

[Text:桃田健史]

>>これまでの自動運転テスト車等写真でチェック(画像14枚)

前へ 1 2

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

検索ワード

桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

トヨタの最新自動車ニュース/記事

トヨタのカタログ情報 トヨタの中古車検索 トヨタの記事一覧 トヨタのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる