「マイナス金利政策」でクルマのローン金利も0%になるのか?影響は?(2/2)

「マイナス金利政策」でクルマのローン金利も0%になるのか?影響は?
日本銀行 画像はDSの0%金利プラン ボルボ V40 Cross Country メルセデス・ベンツの残価設定 画像ギャラリーはこちら

残価設定ローン“だけ”が低金利な理由

問題はこの「金利格差」にある。

残価設定ローンは、契約時に3~5年後の残価(残存価値/下取査定額と考えても良い)を決めて、残価を除いた価値が減る金額を分割返済する方法だ。返済期間を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安い。そこに低金利を適用すれば、月々の返済額がさらに下がって顧客を募りやすい。

では、なぜ残価設定ローン“だけ”が低金利なのか。それはメーカーや販売会社にとって大きなメリットがあるからだ。

残価設定ローンを利用すると、返済期間の満了時には、車両の返却/改めてローンを組んで返済を続行/残価の完済による買い取りという、3つの選択肢のいづれかを選ぶ必要がある。

メーカーや販売会社が望むのは、ユーザーが「車両を返却」し、改めて“新車で”残価設定ローンを組むことだ。そうなれば新車の売れ行きが伸びて、高年式の中古車も手に入る。オイシイ話だろう。

そこでワナを仕掛ける。最初に契約した残価設定ローンの返済期間に限って、低金利を適用するのだ。そうすれば、返済期間を終えた後に改めてローンを組んで完済しようとすれば、金利が年率4.9~7.9%の通常レートになってしまう。そうなると月々の返済額が、以前より高くなる場合が生じる。

同じクルマに乗り続けて返済額が増えるなら、その車両は返却して、改めて残価設定ローンを組んで安い返済額で新車に乗った方がトクだと考えるだろう。

いずれにしろ、契約満了時に代替えを誘致できて新車と中古車の売買を活性化させるのが、残価設定ローンに低金利が適用される理由だ。

残価設定ローンには注意すべき点も多い

ボルボ V40 Cross Country

ただし、注意点も多い。まずは走行距離の規定がある。3年間なら3万6000km、5年間では6万kmといった枠があり、これを超えると車両の返却時に1km当たり5円とか10円の精算が発生する。車両に大きなキズが付いた時なども同様だ。

また車両保険の加入は必須条件になる。それでも契約して2年後くらいに全損事故を起こすと面倒。車両保険の保険価額(車両の価値)は新車時に比べて下がるが、残価設定ローンは月々の返済額が少ないから、多額の債務が残ってしまう。その結果、車両保険金の全額をローンの返済に充てても、残債が生じる心配がある。

だから残価設定ローンを組んだ時は、カーリースのようにクルマを借りている感覚で大切に使わねばならない。

ちなみに昨今はアベノミクスなどといわれながら、国民の所得は依然として増えない。国税庁のデータによると、2014年のサラリーマンの平均給与は415万円であった。リーマンショックの影響を受けた2009年の406万円に比べると少し持ち直したが、1997年の467万円と比較すれば、今でも低水準から脱していない。

となれば自動車ローンの金利も、フルローンを含めて低く抑えるべきだ。注意点の多い残価設定型に限定するのは、販売戦略とはいえツジツマが合わないだろう。

また最近の新型車の開発者は、「飽きずに長く使えるクルマを開発した」と述べることが多い。ならば常にローンの返済に追われながら短期間で代替えする残価設定型ではなく、所有権を手に入れて長く使えるフルローンにも低金利を適用したい。

販売促進の方法が低金利ローンに限定されるのも気になる。販売会社の粗利が多いディーラーオプションのサービス装着などもあるが、販売促進のアイデアが全般的に乏しい。

あるメーカーの商品企画担当者は、「低金利ローンも車種によっては1台当たり15~20万円の費用がかかる。投資対効果という点で最良とはいえないが、ほかに有効な方法が見当たらない」と言う。

販売ディーラーのセールスマンからは「ローンを使うお客様に対して、月々の返済額を抑えられる低金利の残価設定ローンは効果が高い。返済期間を満了した段階で、新車への代替えを提案できるのも大きなメリット」と言う。

その一方で「低金利ローンに頼った商売になりやすい。車両保険の加入、走行距離が一定以上に伸びないことなど条件も多く、誰にでも推奨できるローンではない」との意見も聞かれる。

日本銀行がマイナス金利を導入したことで、ローンのイメージが変わりつつある。預金金利とのバランスも考えれば、自動車ローンも低金利化をすすめるべきだが、将来の返済能力に依存した借金だから危険負担も大きい。

頭金をなるべく多く充当するなど、安全策を取った上でローンを有効に活用していただきたい。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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