米最大の自動車メーカーGMが業界タブー、いわゆる「白タク」の大手と組む理由(2/2)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:米ゼネラルモーターズ
米最大の自動車メーカーGMが業界タブー、いわゆる「白タク」の大手と組む理由
リフトと手を組んだゼネラル・モーターズ リフトと手を組んだゼネラル・モーターズ リフトと手を組んだゼネラル・モーターズ リフトと手を組んだゼネラル・モーターズ 画像ギャラリーはこちら

これじゃ、レンタカーで「白タク」ってこと?

世界が驚いたGMによるリフトへの巨額投資。話は投資だけに止まらず、「エクスプレス・ドライブ・エクスプレス」という具体的なビジネスモデルへと発展したのだ。

これは、GMが所有するクルマを、リフトのドライバーに貸し出すというもの。運営はリフト側で行なう。リフトに登録しているドライバー数は約6万人。この他に、ドライバー登録したくても、自家用車の年式や累積走行距離、さらにコンディションがリフトの規定に達しないため、ドライバー登録を諦めるケースが多々あるという。そうした人、または自家用以外のクルマでリフトのドライバーになりたい人を対象に、GMがクルマを貸すのだ。

つまり、これはレンタカーで「白タク」を容認するという見方もできる。なんだかもう、ハチャメチャな話だ。

もう後戻りできない危機的な状況

リフトと手を組んだゼネラル・モーターズ

では、なぜGMはこんな「とんでもない話」に足を踏み入れたのか?

その理由は、「新車の売り切り型ビジネス」の「終焉」を、GM自らが実感しているからだ。

1800年代後半にドイツで始まった自動車ビジネス。1900年代に入るとアメリカでは、フォードT型による大量生産型ビジネスを機にモータリゼーションが始まった。そうした「豊かなアメリカンライフ」に日本を含めた世界各国が憧れ、アメリカの自動車ビジネスに追従してきた。

そうした流れが、100十余年も続いてきた。

ところが、2000年代後半になり、スマホが生まれ、さらにクラウドが発達したことで、生活のなかでの情報ビジネスが激変した。その技術革新が、クルマのシェアリングを一気に容易にした。クルマを効率的に安く使うには、所有するより共有する方が良い。そう思う人たちが、ITサービスが発達し、しかも「クルマ社会」であるアメリカで大ブレイク。その波が世界各地に伝播しているのだ。

結論を言ってしまえば、現金であれ、ローンであれ、リースであれ「新車を購入する」というやり方が近年中に急減する可能性がある。つまり、自動車メーカーの売上が急減する。そうした危機感を、GMは強く持っているのだ。日本メーカーでも当然、こうした危機感があり、今後の事業戦略をどうするべきかという議論はある。

だが、GMの「レンタカーによる白タク」といったタブーの領域まで一気に踏み込む「勇気」はない。自動車メーカーが、巨大な時代変化を恐れ、多くのメーカーが「石橋を叩いて渡ろう」としている今、今回のGMの大英断は自動車産業界全体にとって大きな衝撃になっているのだ。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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