ホンダ 新型ステップワゴンスパーダ ハイブリッド 試乗|マイナーチェンジでハイブリッドと”派手”顔を手に入れてライバルに猛追

売れ行きが伸び悩むステップワゴンに起死回生のハイブリッド追加

最近、ホンダ ステップワゴンの売れ行きが伸び悩んでいた。

2017年上半期(4~9月)の登録台数を見ると、ライバル車のトヨタ ヴォクシーは3万9988台、日産 セレナが3万7503台なのに対して、ステップワゴンは1万8994台にとどまる。ライバル2車の約半分だ。

背景には同じホンダのN-BOXやフリードが好調に売れて、いわゆるダウンサイジングにより需要を奪われた事情もあるが、ステップワゴンの訴求力も弱い。特に昨今のミニバンでは、広い室内や多彩なシートアレンジなどに加えて、外観が立派に見えることも求められる。

それなのにステップワゴンは、エアロパーツを装着したスパーダの顔立ちも地味だった。

2015年5月12日に掲載した「ホンダ新型ステップワゴン試乗レポート」でも述べたが、この顔立ちを「いつまで続けられるのか」と思った。従来のステップワゴンも「地味に登場してマイナーチェンジで派手に変える」という繰り返しだったからだ。

>>ステップワゴンのマイナーチェンジで内外装のどこが変わった!?(画像92枚)

マイナーチェンジでフロントマスクの迫力を増した

あれから2年以上が経過して、2017年9月にステップワゴンがマイナーチェンジを受けた。今までのパターンに沿って、フロントマスクを大幅に変えている。メッキグリルのデザインが変わり、LEDヘッドランプの形状と相まって、睨みの利いた表情になった。

ただし変更を受けたのはスパーダだけで、標準ボディのステップワゴンは従来と同じだ。今はスパーダの販売比率が80%に達したから、標準ボディは変更しなかったという。

そしてステップワゴンのマイナーチェンジのもうひとつの注目点が、ハイブリッドの設定だ。直列4気筒2リッターエンジンをベースにしたSport Hybrid i-MMD(Intelligent Multi-Mode Drive)をスパーダのみに搭載した。販売比率の低い標準ボディにはハイブリッドの設定がない。

i-MMDはオデッセイやアコードに搭載されるハイブリッドと基本的には同じで、EVドライブモード、ハイブリッドドライブモード、エンジンドライブモードと3つのドライブモードを持つハイブリッドシステムだ。ホンダの中では上級のLサイズモデルに使われるハイブリッドを、ミドルサイズのステップワゴンに搭載したことも注目される。

そこで早速、新型ステップワゴンスパーダ ハイブリッドに試乗した。

>>ステップワゴンのカタログ・スペックを見てみる

走り出しから力強いステップワゴンスパーダ ハイブリッド

新しいステップワゴンスパーダ ハイブリッドは、まず発進する時から力強い。Sport Hybrid i-MMDでは2リッターエンジンは主に発電機の作動に使われ、駆動は最高出力が184馬力、最大トルクが32.1kg-mのモーターが担当する。モーターは駆動力を素早く立ち上げるから、動力性能を効率良く活用できる。

駆動用リチウムイオン電池が十分に充電されていれば、通常の加速なら時速60キロくらいまではエンジンを始動させずにモーターだけで加速する。開発者によると時速100キロ前後までの加速も可能だという。当然ながら加速感はスムーズだ。

そして発電をするためにエンジンが始動しても、ノイズが一気に高まる印象はない。速度が上昇すると、タイヤが転がる時に発生する音や風切り音も聞こえるから、エンジンの始動はほとんど分からない。オデッセイと同レベルの遮音性能も利いている。

モーター駆動が主体だから、加減速の感覚は電気自動車と同じだ。滑らかに速度を変えられる。モーターの出力に余裕があるから、多人数で乗車している状態でも反応の鈍さを感じにくい。

山道や高速走行時でも静粛性は高く加速も滑らか

登坂路などでアクセルペダルを踏み込むと、エンジン回転が上昇する。この時も駆動しているのはモーターだが、電力の消費量が増えるから、発電を積極的に行う必要がある。そこでエンジン回転も高まるわけだ。

現行アコードの初期モデルは、この時の制御に少し違和感が伴った。アクセルペダルの操作とエンジン回転の上下動にズレが生じたが、ステップワゴンスパーダ ハイブリッドはかなり自然な印象だ。また燃費効率を追求すると、エンジン回転と走行速度は一致しにくくなるが、低回転域におけるこのような動きは遮音性能の向上で気にならない。

高速道路の合流部などでフル加速した時の動力性能は、従来のノーマルガソリンエンジンに当てはめると2.5リッタークラスと感じたが、高速道路の追い越しなどで緩やかにアクセルペダルを踏み増した時は、反応の良さで3リッター並みの余裕と受け取られた。

高速道路の巡航ではエンジンの回転数も下がり、ミドルサイズのミニバンとしては静粛性が優れている。快適な運転感覚を味わえた。1.5リッターターボに比べると、モーター駆動のハイブリッドは幅広い走行領域で動力性能が高く、加速時の滑らかさ、静かさでも上まわる。

ステップワゴン ハイブリッドはクラス随一の乗り心地にも注目

乗り心地にも注目したい。少し路面の荒れた場所を時速40キロ程度で走っても、路上の細かなデコボコが伝わりにくい。大きめの段差も上手に吸収する。ハイブリッドの運転感覚と同様、ミドルサイズのミニバンとしては乗り心地も優れている。1.5リッターターボのステップワゴン スパーダと乗り比べると、印象がかなり違う。

新型ステップワゴンのハイブリッドは、ボディ底面の基本骨格から見直され、サスペンションにも1.5リッターターボとは違うチューニングを施した。タイヤは16インチ(205/60R16)で、試乗車にはブリヂストン トランザER3が装着されていた。指定空気圧は前後輪ともに240kPaだ。

試乗車のグレードは最上級のスパーダ ハイブリッド G・EX ホンダセンシングで、このモデルにはボディ骨格の前後にパフォーマンスダンパーを装着している。足まわりに使われるダンパー(ショックアブソーバー)に似たメカニズムを備え、乗り心地を損なわずにボディ剛性を高める。

加速も良く静かなステップワゴン ハイブリッドだが、気になる欠点も

逆にステップワゴンハイブリッドの欠点は、峠道などでの運転感覚だ。ステップワゴンは床の位置と重心を低めに抑えて基本的に走行安定性は良いが、ハイブリッドの車両重量は、1.5リッターターボに比べて100kg以上重い。タイヤサイズと指定空気圧は同じだから、曲がりくねった峠道のカーブでは、外側に位置する前輪を中心にタイヤの歪み方が大きい。そのために曲がりにくく感じる。

しかし走行安定性に不満はない。後輪の接地性が優れ、ドライバーや乗員を不安な気分にさせにくい。エアロパーツを装着したミニバンといっても、峠道を攻めるような使い方をするクルマではないから、ユーザーにとってはメリットのある設定だろう。

居住性にも配慮した。1列目シートの下側に駆動用リチウムイオン電池と制御機能を搭載するが、床の盛り上がりを抑えて、2列目に座った乗員の足が1列目の下側に収まりやすい。ここに不満が生じると、2列目のスライド位置が後退して3列目の足元空間を狭めることになるが、1.5リッターターボに近い空間効率を備えている。

また発売当初に比べると、3列目シートの骨格が腰骨に当たりにくくなった。シート生地の影響もあるが、細かな改善を受けている。

新型ステップワゴンスパーダ ハイブリッドは買いか、そしてオススメグレードは!?

ステップワゴンスパーダ ハイブリッドの価格は、主力のスパーダ ハイブリッド G ホンダセンシングが335万160円、試乗した最上級のスパーダ ハイブリッド G・EX ホンダセンシングは355万9680円に達する。ミドルサイズのミニバンとしては高価格だ。

それでもJC08モード燃費が25km/Lと優れ、1.5リッターターボのスパーダ(15.4~16km/L)に対して燃料代も60~70%に抑えられる。

1.5リッターターボと装備の違いを補正してハイブリッドの価格差を割り出すと約47万円だ。オデッセイの2.4リッター車との比較に比べると約10万円は安い。減税額まで含めればノーマルエンジンとの差は約34万円に縮まる。レギュラーガソリン価格が1リッター当たり130円、実用燃費をJC08モードの85%とすれば、10万km前後を走ると34万円の価格差を燃料代の差額で取り戻せる。1年間に1.5万kmを走るユーザーならば6年半だ。さらに新型ステップワゴンスパーダ ハイブリッドは、前述のように運転感覚と乗り心地が上質になるというプラスアルファの魅力も加わる。予算が許せば選ぶ価値が高いだろう。

ミニバンを日常的な買い物などに使う場合、オデッセイやトヨタ ヴェルファイア&アルファードではボディが大きすぎる。ミドルサイズで上質なミニバンを探しているユーザーにも適すると思う。

ステップワゴンの標準ボディにハイブリッドモデルが追加されなかった理由とは

そうなると大人しい標準ボディにも設定して欲しいが、販売比率が約20%と低いから、今回のマイナーチェンジでは標準モデルのステップワゴンにハイブリッド追加が見送られた。

ただしこの話には裏がある。ホンダではメーカーがグレードや仕様を決めて生産計画を立て、それに沿ってディーラーが売るようにしているからだ。生産計画に沿わない個性的な仕様を求めると、通常は1か月の納期が3か月に伸びたり、ディーラーが実施するオプションのサービス装着を利用できなかったりする。

従ってディーラーで標準ボディを希望した顧客が「納期が伸びる、値引きが減る、ディーラーオプションのサービス装着ができない、数年後の下取査定額が低い」といった理由でスパーダを買っているケースも多いだろう。そうなれば、せっかく個性的なボディカラーを設定しても売れずに終わる。こういったホンダの課題を象徴するのが、標準ボディを冷遇するステップワゴンともいえるだろう。

[レポート:渡辺陽一郎/Photo:和田清志]

ホンダ ステップワゴンスパーダの主要スペック

ホンダ ステップワゴンスパーダの主要スペック
グレードスパーダ ハイブリッド G・EX
HondaSENSING(FF)
スパーダ
HondaSENSING(FF)

パワートレイン

ハイブリッド

ガソリン

JC08モード燃費

25.0km/L

16.0km/L

全長

4,760mm

4,760mm

全幅(車幅)

1,695mm

1,695mm

全高(車高)

1,840mm

1,840mm

車両重量

1,820kg

1,680kg

乗車定員

7人

7人/8人(メーカーオプション)

ホイールベース

2,890mm

2,890mm

エンジン種類

水冷直列4気筒DOHC

水冷直列4気筒DOHC

排気量

1,993cc

1496cc

エンジン最高出力

107kW(145PS)/6,200rpm

110kW(150PS)/5,500rpm

エンジン最大トルク

175N・m(17.8kg・m)/4,000rpm

203N・m(20.7kg・m)/1,600-5,000rpm

モーター最高出力

135kW(184PS)/5,000-6,000rpm

ーー

モーター最大トルク

315N・m(32.1kg・m)/0-2,000rpm

ーー

燃料

無鉛レギュラーガソリン

無鉛レギュラーガソリン

価格(消費税込)

355万9680円

285万2280円

ホンダ/ステップワゴン
ホンダ ステップワゴンカタログを見る
新車価格:
305.4万円391.3万円
中古価格:
20万円1,006.8万円

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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