欧米ユニークカー 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
内容はオーソドックスで質実剛健
低価格でオーソドックスなコンパクトセダンであるネオンがベース。1930~40年代のクラシックカーをイメージさせるスタイルは、ボンネット、フロントグリル、盛り上がったフェンダーなど、一見、そうとは思えないエクステリアに仕立てられている。
アメリカ車の中ではかなり小柄であるが、日本においてはそれなりのサイズのクルマとなる。
2006年モデルにおいてビッグマイナーチェンジが実施され、ランプ類やフロントグリルのデザインが変更されて、クライスラーブランドをアピールするいでたちとなった。
そして、このほど最新の2007年モデルが発売されたばかり。機構的には、ATの進化がポイントである。
グレード構成は、ベーシックな「クラシック」と、上級装備の与えられた「リミテッド」の2タイプとなり、かつてあった中間的位置付けの「ツーリング」は廃止となっているし、ターボエンジンを積むGTも今のところない。
2006年モデルにおいて、ボディ剛性向上など走りも大幅に洗練されたことをすでに確認済み。エンジンについては、それまでの2Lエンジンに換えて、2005年モデルより最高出力143ps/最大トルク21.8kgmの2.4LのDOHCエンジンが搭載されている。そして今回、4速ATにシフトチェンジ時のショックを軽減するバリアブルラインプレッシャー機能が追加された。
エンジンはフラットなトルク特性で扱いやすく、新開発ATはオートスティックを駆使してレスポンスに優れるシフトチェンジを楽しめる上、確かに変速ショックが軽減されている。日本車に比べても遜色ない仕上がりとなっており、動力性能面では今回の3台の中でもっとも優れる。これで5-6速であれば文句ナシといったところだ。ただし、音・振動に関しては、もう少し上げてもいいのではと思われた。
足まわりの設定も着実に進化している。小突起の通過や段差乗り越しなどで、タウンスピードレベルでは少し固さを感じるが、速度域が高まるにつれてフラット感を増し、高速巡航でちょうどよくなる設定。
2006年のマイナーチェンジでシャシー剛性がかなり向上しているようで、スローレシオのステアリングと合わせて、自然なロール感をもたらし、姿勢をコントロールしやすい足まわりに仕上げられている。全体として非常に好ましいセッティングである。
ピニンファリーナとのコラボレーション
ピニンファリーナが手がけたエクステリアデザインは、緻密にデザインされ、どこにも隙間のない。表情のカタマリのようなデザインを見せる。吊り上がったヘッドライト、大きな開口部というプジョーのアイデンティティはもちろん、スライドドドアのレールひとつにしてもガーニッシュ調に処理してデザインの中に溶け込ませるなど、プジョーらしいセンスが光る。
Cピラーをこのようにデザインし、リアまわりのデザインをフロントと調和させ、プジョーらしさを演出している。
前後バンパーにはボディ同色ではなく黒い部分が残されているが、これが見た目のアクセントにもなっている。下部はアンダープロテクター風にデザインされている。
プラットフォームは最新のプジョー207やシトロエンC2、C3と同じPSAプジョー・シトロエンの「PF1」による。日本でいう軽トールワゴンのようなパッケージングである。
見た目だけでなく、乗ってみてもユニークであるのだが、走りにおけるハードウェア面では、もう一歩という点も見受けられた。
2ペダルMTの「2トロニック」は、いまどきの同システムとしてはギクシャク感を伴う。パドルシフトのレスポンスもあまりよろしくない。シフトダウンについては、自動でブリッピングを行ない比較的スムーズにダウンシフトするのだが、シフトアップはスムーズに運転しようと思ってもできないのだ。走り出してしまえばまだ大丈夫なのだが、ゼロスタートとハーフアクセルでのシフトアップが苦手で、引っかかり感がある。
1.6エンジンは、108ps/15kgmのスペックで、実用トルクは十分。コンパクトながら1,240kgというけっこう重たいボディにしては意外と軽快に走る。
ボディ外寸は、明らかに高さ方向が高いが、ロールに対して意外と強く、あまり過大にロールしないような味付けとなっている。
コーナリングを含めた走行性能もまとまりがよい。足まわりはソフトながら引き締まったフィーリングで、乗り心地がよい上に腰砕け感もない。重心の高さによるデメリットをあまり感じさせないのだ。2、3列目にも座ってみても、乗り心地は悪くない。
ハンドリングは、すべてをフロントに任せてリアがついてくるような印象。リアを流すようにはなっていない。ゆえに姿勢が乱れにくく、高速巡航時の安定性も高い。乗り心地は、当たりの柔らかい味付けで、一般道を主体に走るには好ましいと思える。
カブリオレの方がビートルらしい!?
2003年にデビューしたニュービートルのオープンモデル。エクステリアデザインについて、もはや多くを述べる必要もないだろう。
ソフトトップを閉めた状態では、ニュービートルらしい丸みを帯びたフォルムとなり、開けたときは初代ビートルのカブリオレがそうであった、Z型にソフトトップを背負う形状となるのも特徴的。
このトップは約13秒という短時間で電動開閉が可能となっている。
ニュービートル自体がユニークであることはいうまでもないが、カブリオレとなると、より一層ユニークさをアピールしている印象がある。
走りに関して、デビュー直後に試乗した際は、ボディの剛性感が低く、少々微振動しているように感じた。
しかし、今回試乗した車両については、前述に感じた印象が非常に小さくなっていた。正式にアナウンスされていない中で、足まわりやボディにも改良が加えられているようだ。いかなる状況下でも優れたスタビリティ性能を感じさせるのはフォルクスワーゲンならでは。それはビートルの、しかもカブリオレのようなモデルにおいても変わることはない。
パワートレインについては、カブリオレは2Lの自然吸気エンジンのみ設定されており、これにクローズドモデルでは4速ATが組み合わされるところだが、カブリオレのみティプトロニック付き6速ATとなるところもポイント。これにより、動力性能面での質感が高くなっている。
デザイン・スペックの総評
登場からそれなりに時間が経過したものの、やはりニュービートルの確立されたキャラクター性が光る。PTクルーザーは、もう少し日本でも台数が増えたほうが、かえってユニークなクルマとしての認識が深まるのではないかと思える。
1007はプジョーらしさとパイクカー的な楽しみが合わさった印象。走行性能については、一長一短はあるものの、たとえビートルのクローズモデルと持ち込んだとしても、現時点ではPTクルーザーが総合的にもっとも優れるという印象。
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