ボルボ新型V60試乗|予想を超える出来栄えの大本命ステーションワゴン現る!(2/2)

  • 筆者: 嶋田 智之
  • カメラマン:島村 栄二/ボルボ・カー・ジャパン
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必要にして十分なパワー感と取り回しやすいボディ

新型V60には、乗り味にも、おおむねしっかりと癒してもらえる。走行モードを“コンフォート”にしてゆったり走っていると、サスペンションは適度な引き締まり感を伝えてきながらもしっかり伸び縮みして、かなり洗練された快適な乗り心地を提供してくれる。

現時点で国内導入されているのは254ps/350Nmの2リッター直4ターボを積む“T5”系のみだが、このエンジンは1500rpmを越えると4800rpmまで延々と350Nmの最大トルクを発揮し、あらゆる場面で力強く疲れにくく快適だ。

横幅が1850mmと、この時代にして太るどころか姉より40mm、先代より15mmスレンダーな肢体であることも、混んだ街中で気疲れが少なく、快適さを感じさせてくれる要因のひとつだった。このクルマで今から大阪まで行って帰ってこいと命じられても、何の苦もなくこなせてしまえそうである。

それだけに少し残念に感じられたのは、おそらくタイヤの性格なのだろう、路面の荒れた場所を踏むと微かにコツコツとした当たりを伝えてくることがあった。それは気にならない人には全く気にならないレベルだと思うけど、一度気になりだすとやっぱり気になってしまうのが人間というもの。そのコツコツ感さえなければ何も言うことがないのにもったいないなー、と感じてしまったのだ。

癒しの乗り心地を求めるならFOUR-C付きがオススメ

けれど、だ。そのときの試乗車はV60「T5 Inscription」(インスクリプション)で、18インチ・ホイールのスタンダード・サスペンション仕様だったのだが、後日、あらためて19インチ・ホイールに電子制御式ダンパー“FOUR-C”付きの仕様をお借りして走ってみたら、あれ? だった。そのコツコツ感は綺麗さっぱり払拭されていて、快適至極だったのだ。

なるほど、電子制御式らしい特有の“細かく制御してます”感こそ覚えるものの、もちろんそれは不愉快な類のものではないし、路面が今どういう状況にあるのかという情報を微かであっても不快な衝撃へと変換したりせずに伝えてくるのが素晴らしい。

先述のとおりここは本当に“重箱の隅”みたいなお話だから、気にならない人は気にならないだろうけど、とことん癒されるような乗り心地にこだわりたい人は、FOUR-C付きを選ぶのが正解だ。

気後れ感のないすっきりとしたハンドリング

癒してくれるばかりがV60の持ち味じゃない、ということも伝えておくべきだろう。妹は姉と較べて活発な性格も持ち合わせているのだ。ハンドリングがかなり軽快だし、素晴らしく素直に曲がってくれるのである。

ステアリングを操作し始めると、遅れることなく伸びやかなノーズがスッとインに向かっていく。FOUR-C付きで走行モードを“ダイナミック”にすると引き締まり感が一段階上がって、コーナリング・スピードも高くなるけれど、基本的な性格はどちらも一緒。

ツイスティな道でそれなりの走らせ方をしても、もっさり感だとかつじつまが合ってないような気掛かりなところが何ひとつないばかりか、その軽やかな身のこなしに「楽しいじゃん!」とすら感じさせられちゃうほどなのだ。

姉の方はもう少ししっとりした慎ましやかな性格だけど、妹の方は気後れの全くないすっきりした性格、と言っていいかも知れない。

──僕の好み? ことが女性となるなら話は違ってくるが、この場合は、もちろんスポーティな妹の方だ。これくらい気持ちよくワインディングロードも楽しめるのならステアリングの裏に変速パドルが欲しい、と余計なことまで考えちゃったぐらい。

見た目はなかなか麗しいし、触れれば気持ちを柔らかにしてくれるし、その気になれば人も荷物もたくさん載せられる働き者にもちょっとしたスポーツ選手にもなれる。

そのうえ、試したことはないけど──そんな場面には遭遇したくないけど──ボルボならではの執拗なくらいの──だからこそ安心感のある──セーフティ・システムも満載。ドライビングのアシスト・システムも、不満や疑問を覚えないくらいに優秀。XCと同じく、この“60”にも死角らしい死角は見当たらない。これ以上、何を望むべきことはあるだろうか? そんなふうに感じたV60の試乗だった。

背が低いステーションワゴンだからこその良さを再認識

現時点ではFWDの“T5”のみの導入で、価格は“モメンタム(Momentum)”が499万円、“インスクリプション(Inscription)”が599万円。そして来春には253ps+87ps/350Nm+240Nmの2リッター直4ターボ+スーパーチャージャー+電気モーターの“T6ツインエンジン”と、その内燃機関の出力とトルクを引き上げた318ps+87ps/400Nm+240Nmの“T8ツインエンジン”の2タイプのプラグインハイブリッド(PHEV)が導入される予定だ。個人的には今回の“T5”でも充分だと思うし、最もV60のキャラクターにマッチしてるのも“T5”なんじゃないか? と予想している。

今やSUV全盛の時代。乗用車のスタンダードがセダンやステーションワゴンからSUVへと代わりつつある感じもする。僕もSUVは嫌いじゃないし、それこそ同じ“60”のXC60などパーフェクトに近いとすら感じているところはある。

けれど……。XC60に乗ったときには気づかなかったけど、やはり背の低いステーションワゴンの方が、運転感覚もクルマの動きもより自然で心地好いと感じたのも確かだった。好みの問題はあるだろうけど、今も決して少なくないステーションワゴン派にとって、この新型V60が素晴らしい選択肢となることは間違いない。

[レポート:嶋田 智之/Photo:島村 栄二/ボルボ・カー・ジャパン]

ボルボ 新型V60 主要スペック

ボルボ 新型V60 主要スペック
グレードT5 InscriptionT6 Twin Engine AWD InscriptionT8 Twin Engine AWD Inscription

価格(消費税込)

599万円

749万円

819万円

全長

4760mm

全幅

1850mm

全高

1435mm

ホイールベース

2870mm

車両重量

1700kg

乗車定員

5名

エンジン

水冷直列4気筒 DOHC ターボ

水冷直列4気筒 DOHC ターボ+スーパーチャージャー

排気量

1968cc

エンジン最高出力

187kW(254PS)/5500rpm

186kW(253PS)/5500rpm

233kW(318PS)/6000rpm

エンジン最大トルク

350N・m(35.7kgf・m)/1500-4800rpm

350N・m(35.7kgf・m)/1700-5000rpm

400N・m(40.8kgf・m)/2200-5400rpm

モーター最高出力

34kW/2500rpm(前)65kW/7000rpm(後)

モーター最大トルク

160N・m/0-2500rpm(前)240N・m/0-3000rpm(後)

燃費(JC08モード)

12.9km/L

駆動方式

2WD(FF)

電子制御AWD(エンジン+モーター)

トランスミッション

8速AT(ギヤトロニック)

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

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