THE NEXTALK ~次の世界へ~ トヨタ福祉車両 製品企画主査 中川茂インタビュー(2/5)

THE NEXTALK ~次の世界へ~ トヨタ福祉車両 製品企画主査 中川茂インタビュー
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コストはかなり縮まった

THE NEXTALK トヨタ 中川茂インタビュー

トヨタの福祉車両「ウェルキャブ(Welcab)」の名の由来は、Welfare(福祉)とCabin(客室)からの造語である。さらに、Well(健康)とかWelcome(温かく迎える)の意味も含まれる。

トヨタには現在(2011年8月)、30車種に、57タイプのウェルキャブがラインアップされている。ウェルキャブにどのような仕様があるかと言えば、回転スライドシートなどに代表される助手席に座るタイプ、リフトアップシートによって2列目のシートに座るタイプ、車椅子のまま車内へ乗り込むタイプ、後席を回転シートとして乗り降りをしやすくしたタクシーなどで使われるタイプ、そして、自分で運転するタイプだ。

なかでも近年販売台数を伸ばしているのが、車椅子のまま乗り込むタイプである。そして、この車両開発を、中川茂は実際に担当してきた。

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【中川茂】福祉車両は、一旦完成した標準車を、別の車体工場で改造するのが普通で、そのため割高になっていたのです。一度出来上がったクルマの車体後部の床を切り取り、車椅子が乗れるフレームに作り直し、スロープやゲートを取り付けたりする改造を、一台一台手作りで行うのですから、当然コストは嵩みます。

例えば専用フレームを溶接するといっても、一度出来上がったクルマのフレームは塗装されていて、それを剥がさなければ、新たに取り付けるフレームを溶接できません。その状況を打開するため、先代のラクティスでは、生産ラインの中でウェルキャブの製造もできるようにしました。そのために、まず、標準車の開発段階から福祉車両を作れる設計にしてもらったのです。当初は後ろへ向かって低く絞り込まれていた屋根のデザインを、車体後部のゲートから、車椅子のまま車内へ乗り込めるよう高く変更し、車椅子での乗り降りで頭が閊えないようにしてもらいました。

このように、当初の車体設計を、福祉車両のために変更してもらったというのは、トヨタでも初めてのことではないでしょうか?。

次に、福祉車両を生産ラインに一緒に流して製造できるようにしてもらうため、一年かけて社内を説得して回りました。生産現場では手間が増えます。トヨタ全体の生産台数からすれば、ウェルキャブの台数は僅かですから、そのために手間やコストが増えるようなことはできないと思うのが、当然の考えです。しかしそこを、「世のため人のために」ということで少しずつ理解してもらい、最終的には担当者や関係者に納得してもらったうえで、インライン(生産ラインに福祉車両の製造を組み入れること:筆者注)での生産にこぎつけました。これには、当時のラクティスの標準車の担当だった役員が強い後ろ盾になってくれました。

ある養護学校で、お母さんが障害のあるお子さんをクルマに乗り降りさせる場面を私が写真に撮ったのですが、その「現場の写真が重要だ」と役員は言うのです。「平均値でお客様像を議論するのではなく、現実に必要性を求めているお客様がいらっしゃるという“証”が大切なのだ」と。

こうした中川の努力や粘りが実り、ラクティスのウェルキャブは、標準車との差額が30万円ほどに縮まった。

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【中川茂】国内外を含め、また当社の他の福祉車両でも、標準車が完成した後に改造する場合は100万円前後の差額が生じます。ラクティスの場合でも、なお約30万円の差額があるわけですが、障害者の方への減税措置や高速道路利用での恩典などがありますので、それらを考慮すれば、全体的な経費は、標準車をお求めいただく場合とほぼ差はなくなると言えるのではないかと思っています。

つまり、インライン生産を実現することで、福祉車両の価格差はほぼ無くなったに等しい水準に近づいていると、中川は言うのである。しかし福祉車両のあるべき姿は、単に生産効率を高め、安くできればいいというほど単純な話ではない。

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御堀 直嗣
筆者御堀 直嗣

1955年東京出身。自動車ジャーナリスト。玉川大学工学部機械工学科卒業。1978年から1981年にかけてFL500、FJ1600へのレース参戦経験を持つ。現在ではウェブサイトや雑誌を中心に自動車関連の記事を寄稿中。特に技術面のわかりやすい解説には定評がある。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。また現在では電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副会長を務める。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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