トヨタ 新型ヤリス発表記念! 原点となったパブリカ~スターレット~ヴィッツはこうして生まれた(前編)

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2019年10月、トヨタは新型ヴィッツのフルモデルチェンジに際し、「ヤリス」の名を与えて新たに発表しました。コンパクトカーの世界基準になるべく渾身の力を込めて開発が行われた新型ヤリスですが、日本人には聞き慣れない車名ですよね。実はヴィッツの海外版は、初代から「ヤリス」の名前で販売されており、むしろヴィッツのほうがローカルネームだったのです。

そこで今回は新型ヤリスの発売を記念して、ヤリスの先祖であるパブリカ~スターレット~ヴィッツの歴史を2回に分けてお送りしたいと思います。

目次[開く][閉じる]
  1. パブリカは「パブリックカー」の略!
  2. パブリカからスターレットが分岐
  3. 「KP61」と呼ばれ親しまれた2代目スターレット
  4. シンプルで実用的、そして速かった3代目「かっとびスターレット」
  5. ヴィッツへの橋渡しを務めた4代目~5代目
  6. 次回は、初代ヴィッツからヤリスへ

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パブリカは「パブリックカー」の略!

ザ・大衆車! シンプルで低価格の初代

トヨタ パブリカは、1955(昭和30)年に通産省(現:経済産業省)がまとめた国民車構想を受けて、1961(昭和36)年から発売された大衆車です。

初代パブリカ(UP10/UP20型)が登場した同年6月時点でトヨタが作っていた乗用車は、初代クラウン(RS20/30型)と2代目コロナ(T20型)でした。パブリカはコロナよりもさらに下のカテゴリーを担うべく、空冷2気筒700ccという簡潔なエンジンを選択。大人4人が乗れるボディと低価格でヒット作となりました。1966(昭和41)年には排気量が800ccに拡大されています。

フルモデルチェンジと見紛う2代目

続いて1969(昭和44)年、2代目パブリカ(UP30/KP30/50型)がデビューしました。エンジンは新たにカローラ系の1000/1100cc水冷OHV 4気筒エンジンを主力とし、一部に既存の空冷800ccが残されました。どことなく質素な雰囲気があった初代と異なり、デザインの質もアップしました。1972(昭和47)年にはボディを大きく変更するほどの大規模なマイナーチェンジを実施しています。

余談ながら、子供のころ筆者はこのマイチェンをフルモデルチェンジだと思っていました。何しろボディパネルがほとんど違うのですから!

トヨタ/ヴィッツ
トヨタ ヴィッツカタログを見る
新車価格:
120.3万円236.2万円
中古価格:
23万円322.1万円

パブリカからスターレットが分岐

時代は右肩上がり

高度成長期、クルマは次々と排気量の拡大、装備の充実、車種自体や派生車種の増加が図られていきました。

パブリカもその例に漏れず、1973(昭和48)年に上級版派生モデル「パブリカ・スターレット(KP45/47)」を分岐しました。デビュー当時は2ドアクーペのみで、直線が多用されたスポーティなスタイル、セリカのようなフルチョイスシステムが採用されるなど、大衆車というよりは若者向けのパーソナルカーというキャラクターが与えられていました。

同年中には4ドアセダンを追加していますが、このとき「パブリカ」の文字が取れて単なる「スターレット(初代)」になりました。なお、2代目パブリカは並行して生産がまだ続いていました。

「KP61」と呼ばれ親しまれた2代目スターレット

3/5ドアハッチバックを採用

2代目スターレット(KP60型)は1978(昭和53)年の登場です。40代以上の人なら「2代目」より、「KP61」の愛称の方がわかりやすいかもしれません。

パブリカとスターレットを統合した車種になると同時に、当時世界の潮流となりつつあった3/5ドアハッチバックを採用したことがトピックでした。エンジンは3K-U型1300ccOHV直4で、KPのKはこのエンジン形式から取られています。

発売2年後の1980年にはマイナーチェンジを受けて丸いヘッドライトが四角い形状に、上級モデルには大型バンパーが奢られたほか、女性仕様の「リセ」も追加されました。1982年にはもう一度小改良を行い、ヘッドライトの脇に車幅灯が移植して表情がまた変わっています。

2代目スターレットは初代に次いで、モータースポーツのベース車としても好まれました。大衆モデルゆえに入手がカンタンで、凝った設計を採っていないため改造も容易でコストもかかりにくく、現在でも小型FR車としコアな人気を博しているほどです。

FF化の波の中、あえてFRを採用

なお、2世代スターレットが発売されていた当時、すでに世界中の小型車はFF化が進んでいたのですが、トヨタは2代目スターレットもFRで開発しています。その理由としては、慎重なトヨタは未完成で熟成が必要なFF技術を量販車種への採用に踏み切らなかったこと、また保守的なオーナー層に配慮したのではないか? と推測されます。

それは、同じ年にデビューした初代ターセル/コルサ(AL10型)にはFFを採用していたことからも感じられます。実はイタリアの巨人・フィアットも、FFを採用する際のリスクを恐れ、いったん傍系会社アウトビアンキの車種でFF技術の市販を試してから本家フィアット各車に本格導入を行なっています。

シンプルで実用的、そして速かった3代目「かっとびスターレット」

横置きFFレイアウトでデザイン一新

3代目(EP70型)へのスイッチは1984(昭和59)年。ようやく一般的な横置きFFレイアウトが採用されるとともに、デザインも一気にクリーン&軽快に。正統派1.5BOXのスタイルを手に入れています。

ベーシックカーとしてのシンプルさも好まれました。エンジンは排気量1.3Lのままながら、新開発の2E型に変更。旧態然としたOHVユニットからこちらもようやく脱却しました。愛称はKP61同様、形式そのままの「EP71」。

ファミリー向けからモータースポーツまで

3代目スターレットでは実用的なお買い得グレード「ソレイユ」が売れた一方で、スターレット伝統のスポーティグレードも設定。「かっとびスターレット」というキャッチフレーズをCMで打ち出していました。

1986年にはインタークーラー付きターボを積んだ「ターボS」を追加。過給圧を変更して91/105PSの2モードが選択できるという新機軸のハイパワーエンジンを搭載し、スターレット=ボーイズレーサーというイメージが定着しました。モータースポーツ向けベースグレードが用意されていたことも思い出されます。ノンターボが「Ri」、ターボは「ターボR」でした。

ヴィッツへの橋渡しを務めた4代目~5代目

走りと経済性を両立

1989(平成元)年暮れに登場した4代目スターレット(EP80型)は、3代目の路線を継承しつつ全体的な質感を向上させたほか、ガソリンエンジンもすべてDOHC化するなど動的性能・燃費性能のアップも図られました。スポーティな性格をさらに全面に押し出した「GT」も誕生。最高出力は135PSに達しました。

最後のスターレットとなった5代目(EP90型)は1996(平成8年)から発売を開始しました。走行性能に優れたシリーズと経済性に優れたシリーズ両方を持つのは、FF化以降のスターレットの伝統ともいえるもの。5代目ではターボモデルを「グランツァ」と称し、ノーマル仕様は「ルフレ」と呼びました。

さらにレトロな雰囲気の「カラット」やSUV風の「リミックス」といった派生バージョンも数多く追加されています。

1999年生産終了

スターレット後継車の初代ヴィッツは1999(平成11)年1月から発売されましたが、まったく新しい小型車で微妙にボディサイズが小さくなったヴィッツの販売不振を警戒し、5代目スターレットも8月まで併売。ヴィッツの販売が好調なのを確認するかのように、生産を終了しました。あらためて見ると、5代目スターレットの生産期間って短かったんですね。

次回は、初代ヴィッツからヤリスへ

懐かしい! これ乗ってた! という人、最初に買ったクルマがパブリカやスターレットだったという人も多いと思います。エントリーカーの役目もありましたので、多くの人に関わりがあったのではないでしょうか。筆者も、友人知人のクルマやレンタカーで、スターレットには随分と乗りましたっけ。

さて次回は、ヴィッツ(ヤリス)の歴史を初代から紐解きます。どうぞお楽しみに!

[筆者:遠藤 イヅル]

2020年発売予定のヤリスに早くも試乗!

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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