オールシーズンタイヤ、ベクター フォーシーズンズ ハイブリッドの実力を1000kmテストで検証

日本でも注目されだしたオールシーズンタイヤとは

昨今、さまざまなキャラクターのタイヤが発売されている。なかでもユーザーの関心を集めているのは、オールシーズンタイヤだ。その名のとおり、春夏秋冬=4つのシーズンを走破することができるマルチパフォーマンスタイヤである。

その本場は北米だ。“M+S”、いわゆるマッド(泥やぬかるみ)&スノー(雪)と呼ばれる銘柄として、ご存知の方も多いだろう。特に冬であっても、豪雪地帯(山岳地帯を除く)が少なく、狭い道でのアップダウンがほとんどないため、自宅のガレージからメインストリートに出られるスノー性能があれば十分という道路環境下で、ユーザーに浸透したバックグラウンドがある。

>>オールシーズンタイヤ1000kmテスト

いっぽう国土の70%が山岳地帯である日本は、世界的にみても豪雪地帯が多いエリアだ。さらに日本の場合、零度あたりの水分を含んだ氷がもっとも滑るため、冬用タイヤに求められるアイスバーン性能は世界でもっとも厳しいと言われている。

そこで登場したのが“スタッドレスタイヤ”だ。金属のスパイクピンによる粉塵公害をなくすために考案されたわけだが、約30年の歳月をかけて、日本のタイヤメーカーはスタッドレスの研究開発に取り組んできた歴史がある。

対して、欧州の中でもタイヤに厳格さを求めるドイツでは、法律で11月から“ウインタータイヤ(スタッドレスほどの氷上性能はないものの、ほぼ同等の雪上性能と、サマータイヤに近いドライ&ウェット性能を持つ)”の装着が義務づけられている。

というのも速度無制限のアウトバーンがあるからだ。冬はスピードレンジが下がるものの、気温が7度以下になるとサマータイヤでは性能が活かされないため、そこで逆に7度以下でも高速領域でグリップするウインタータイヤの登場となる。雪や氷基準ではなく、温度で管理するのがドイツの考えだ。

気候や道路環境をふまえた特性のタイヤが各国で誕生してきたわけだが、オールシーズンタイヤは最近の技術進化によって、ウインタータイヤに近い性能を持つようになった。加えて、タイヤ交換不要という利便性の高さも魅力のひとつとなっている。実際、そのニーズは高まっているようで、ユーザーのライフスタイルが多様化してきたことも深く関係しているようだ。

アウトドア趣向が強まり、多種多様なアクティビリティを楽しむ人が増え、実は私もそのひとりなのだが、季節を問わず山や川、海などに出かける機会が多くなっている。そこで求められているのが、オールシーズンタイヤということなのだが、今回新しい世界観を提案して注目されているグッドイヤーの“Vector 4Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド)”を、トヨタ・プリウスのPHV(プラグインハイブリッド)に装着して1000kmテストを行ってきたのでレポートしたいと思う。

砂浜を走れる千里浜なぎさドライブウェイを目指す

向かった先は能登半島にある千里浜なぎさドライブウェイ。日本でも数少ない砂浜を走れる素晴らしいロケーションで知られており、雪上走行に近い路面想定でテストすることが可能ということもあって目的地に設定した。

装着したタイヤサイズは、プリウスPHV(レザーパッケージ仕様)のオリジナルと同じ195/65R15。ベクターはV字を基調とした精悍なトレッドデザインを採用し、スタッドレスタイヤほどゴツゴツしていないし、サマータイヤよりも溝が深く、プリウスPHVが頼もしく見えてくる。やはりタイヤはルックスも重要だ。

一路、北陸に向けて高速道路を走る。

サマータイヤとの差異をほとんど感じさせない走りが好印象だ。圧雪やアイスバーンまで想定しているためにブロック剛性が低いスタッドレスタイヤでは、高速走行時のスタビリティ不足は否めず、やや性能に物足りなさを感じるが、ステアリングの手応えと、安心感がある。ドライ路面の高速安定性は合格点、十分に満足できるレベルだ。

関越道から北陸道に入ると雨に見舞われた。早速ウェット性能を試すことができたが、排水性もよく、深い轍でもプリウスPHVは難なく走り抜けていく。道中、ワイパーをフル稼働するほどの激しい雨に遭遇し、ブロックの目が細かく排水性能の弱いスタッドレスタイヤではハイドロプレーン現象を起こしやすいシーンでも、グリップ感がしっかりとステアリングから伝わってきた。

乗り心地はプリウスPHVの標準タイヤよりはやや硬いが、逆に路面からのインフォメーションを得やすく、ドラマティックに、劇的に変化したわけではないが、逆に安定性を担保しながらもその存在感を主張してこない、スマートな走りが安心感となって伝わってきた。

千里浜なぎさドライブウェイまでの約500kmを、快適に移動できたことも報告しておこう。

全長8kmの千里浜なぎさドライブウェイは、すぐ横が海という、絶景スポットだが、タイヤには厳しいコンディションだ。さらに雨上がりということで、砂浜はいつもりより柔らかく、想定したどおり圧雪路に近い状況で、走行路(といっても砂浜だが)の脇ではスタックしているクルマが何台もいた。

いつもより慎重な運転を心がけたが、ここでもベクターのトラクション能力はしっかりと発揮された。もちろん砂にステアリングをとられることはあるが、その度に修正操舵すると、元のラインにすぐに復帰できる。そのため、波打ち際を走ることができる異次元経験を楽しむ余裕(よそ見は厳禁)がある。あくまで想定の範囲ではあるが、これならば圧雪路でも心強いだろう。

千里浜ドライブウェイはロングドライブしたなりの歓びを与えてくれるが、砂にスタックしてしまう可能性があるため、タイヤ選びが必要なことも付け加えておきたい。

ウィンディングではスポーティな一面も

道中、白川郷に立ち寄り、一般道で諏訪を経由してビーナスラインを走ってきたが、ワンディングではスポーティな一面も見せた。

ビーナスラインは高速コーナーも多いが、制限速度内で少しハードに攻めて、コーナリングGや横Gを出しても、ブロック剛性があるため、ステアリング操作に対する追従性が高い。少しだけスポーティに進化したプリウスPHVの走りを、より引き立てる秘めたるポテンシャルを確認することができた。

最後になってしまったが、一般道ではステアリングの操舵が軽くなった印象で、車庫入れであったり、Uターンであったり、低速領域のステアリングを深く切り込む状況では操作がラクになった。ドライバーにも優しいタイヤでもある。プリウスPHVは標準型のプリウスよりもボディウェイトは重いが、タイヤが重さに負けていることはなく、今回の1000kmテストでは、雨の高速道路から砂浜、ワインディングに至るまで、オールシーズンタイヤらしいオールラウンドな走りを満喫することができた。

雪道は走れなかったが、ベクターはたとえ降雪で高速道路がチェーン規制になっても走行可能な冬用タイヤとして認証(タイヤサイドウォールにスノーマークが刻印されている)されており、いざという時にも頼りになる。機会があればウインターテストも行ってみたところだ。

[Text:清水和夫 Photo:市健治]

取材協力:日本グッドイヤー https://www.goodyear.co.jp

     トヨタ自動車   https://toyota.jp

協力車両

■TOYOTA Prius PHV S“ナビパッケージ”

 タイヤサイズ:195/65R15 91H

路面状況

■高速道路 関越道 路面状況:ドライ

■高速道路 北陸道 路面状況:ウェット

■砂浜 千里浜なぎさドライブウェイ 路面状況:ハーフウェット

■白川郷 ワインディング ビーナスライン 路面状況;ドライ

トヨタ/プリウスPHV
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新車価格:
338.3万円401万円
中古価格:
67.5万円373.6万円

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清水 和夫
筆者清水 和夫

1954年生まれ。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして、自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。近年注目の集まる次世代自動車には独自の視点を展開し自動車国際産業論に精通する。一方、スポーツカーや安全運転のインストラクター業もこなす異色な活動を行っている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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