TRDが手掛けた衝撃のハイエースに試乗|働くクルマの代表が高級ミニバンに大変身!?

ファンが多いハイエースだが、箱バン特有の乗り心地の悪さは否めない

日本のワンボックス型の商用バンの中で最も人気の高いモデルといえば、言わずと知れたトヨタ ハイエース(H200系)。隔月刊だったり季刊だったり年1だったりと様々ではあるけれど、複数の専門誌があるくらいといえば、事情を知らない人にもハイエースファンの多さが伝わるだろうか?

実際のところ、僕の友人達の中にも数人のハイエースユーザーがいる。建具屋さんだったり左官屋さんだったり、映像のカメラマンだったり、あるいはバイク雑誌の編集に関わっていたり。いずれにしても友人達のハイエースは、基本、“働くクルマ”として大活躍をしてるわけだ。そして当然ながら彼らの“アシ”として機能する場合もあるから、僕もときどきサイドシートやリアシートに乗せてもらうことがある。

そうした移動の時間の最初から最後まで僕の頭の中にあるのは、彼らにしてみればどうしようもないことなので申し訳ないなぁとは思うし、乗せてもらっておいて我ながら性格悪いと思うのだけど、やっぱり“これ、乗り心地、悪いなぁ……”なのである。

いや、ハイエースに限らずこうした“箱バン”全般にいえることなのだけど、重い荷物を積むのを前提にサスペンションの設定を決めてるわけだからどうしてもハードになるし、車体はいわば四角い筒のようなもので剛性を確保しやすい構造にはなっていないから、どうしてもサスペンションの働きを活かしにくい。

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TRDが手を加えたハイエースは今日イチの衝撃!

そこへ来てハイエースにはいかにも“らしい”カッコよさがあるから、クルマ好きだったりするとカスタマイズしたい気持ちが刺激されて、太めのホイール&タイヤを履かせたり、場合によっては車高を落としたりすることもある。そうなると、ますます乗り心地は悪化しがちだ。

僕の親友のハイエースはまさしくそれで、見た目はグッと引き締まってさらにカッコいいし、路面のいいところでは安定感も増した感じだが、路面が荒れた場所ではだいぶ辛い。リアシートに乗っていて、ときどき腰が座面から浮くことすらあるくらいだ。

だから、トヨタのモータースポーツ活動や市販車のカスタムパーツの開発を行うTRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)が手を加えたハイエースに試乗して、僕は結構なインパクトを受けた。この日ステアリングを握った8台のワークス系チューニングカー/コンプリートカーは、いずれも“さすが!”と膝を叩くほどの出来映えだったのだけど、“だってハイエースでしょ?”なんてナメたような気持ちがどこか頭の片隅にあったのか、衝撃は最も大きかった。

快適さとスポーティさを手に入れた驚きの激変っぷり!

何せTRDは御存知のとおり、トヨタ系のレース屋さんなわけだから、ハイエースもそっち方面に締め上げてるのだろうと思っていた。ところが乗ってみたら真逆。箱バンの商用車だというのに、まるでちょっと高級な乗用ミニバンのような快適な乗り心地を作り上げつつ、スポーティなハンドリングも手に入れてるのだ。

このTRDハイエースは、フロントスポイラー、サイドスカート、リアバンパースポイラーからなるエアロパーツセット、フロントフードエクステンション、マッドフラップなど、エクステリアにも手が入っていたが、その乗り味の激変っぷりこそが最も大きなトピックだ。

それは、内部に大径ピストンを使ったモノチューブ式のショックアブソーバーセット(12万円/消費税抜・以下同)と、リアの床下の剛性を高めるメンバーブレースセット(3万円)の効果の賜物。

15インチの“TF7A”アルミホイールとグッドイヤー イーグル“♯1 NASCAR”タイヤセット(16万4000円)の路面状況に負けない強さも、少なからず貢献してるかも知れない。

箱バンなのに極めて自然で楽しい走り

とにかく、サスペンションは豊かに、適切なスピードでストロークする。伸びるときも縮むときも、きつかったり緩かったりする印象がない。極めて自然。だから、乗り心地はとても快適に感じられる。

もしかしたらノーマルよりも、ロールの量そのものは増えてるかも知れない。けれど、ロールしていくときの傾く動き方がノーマルと較べたらかなりゆっくりで、これまた自然にしてスムーズ。

コーナー内側のサスペンションが伸びきって浮き上がるような感触がなく、むしろ内側はそのままでコーナー外側のサスペンションが綺麗に縮んでいくような具合だから、左右両方のタイヤがしっかり路面に接地してグリップを活かすことができる。だからステアリング操作に対してクルマの反応が正確さを増していて、それがものすごくスポーティな印象を感じさせてくれる。

今回試乗したの、群馬にあるサイクルスポーツセンターのクローズドコース。狭くて荒れた路面が多く、ハイエースにとってはなかなかハードなコースだ。

普通こういうクルマでここまでは攻めないでしょ……というような走り方も試してみたけれど、高速コーナーはもちろんのこと、タイトターンでも怖さを感じることもなければ粗さを感じさせることもなく、クルマはドライバーの意志にしっかり綺麗についてきてくれる。箱バンをタイトなワインディングロードで走らせて、こんなにも楽しいと思ったのは初めてだと思う。

トヨタ系のレース屋さんだからできる”締め上げすぎないバランス”

ついでに申し上げておくなら、リアシートの乗り心地も試してみたのだけど、元気良く走ってもらっても腰が座面から離れたことは一度もなかった。

このままロングドライブに連れていかれたとしても、何の苦もないだろうと感じたものだった。マジメな話、全てのハイエースユーザーがこの脚を手に入れたら、今よりもっと幸せになれるのに──。

徹底的に締め上げていくやり方を誰よりも知っているのがレース屋さん。それだけに緩め方やバランスの取り方というのも、誰よりも深く理解してるのだな、と思った。モータースポーツで培った技術力というのは、奥が深いのである。

[TEXT:嶋田智之/PHOTO:和田清志]

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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